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物語の収集者  作者: 雛河翠月
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プロローグ

「待ちなさいっ、泥棒!」

 背後から追いかけてくるのは、同世代に見える少女と大量の蛇。

 泥棒と言われてはいるが、俺は何も盗んでいない。

「待ってくれ、話を聞いて欲しい!」

 ラッキーすけべに出会った主人公の台詞のようではあるが、俺はこの世界において主人公でもなんでもない。むしろ、部外者だ。どうしてこうなった。

 さて、この状況をどう切り抜けようか。俺は運動は普通にできるし、同年代の女の子を振り切るくらいなら問題はない。問題があるのは、彼女が抱えている壺から出てくる大量の蛇だ。あれ、毒蛇だよな、多分。

 因みに、俺は水瓶を持っているが、中からは水しか出ない。

「その水瓶を渡しなさいって、言っているでしょうっ!」

 互いに全力疾走で死ぬ気で怒鳴りあうこの状況。シュールだ。

「これは、盗んだものじゃない!」

 バイト先からの支給品である。言い掛かりはやめて欲しい。

 今ここで死んだら、依頼を果たせない。彼女はきっと『壊す者』だろう。そうすると、依頼人はガッカリするだろう。バイト代も出ないかもしれない。こうなったら、このまま依頼を果たすしかない。

 目標人物はここら辺にいるはずだ。一週間の調査結果を信じるなら。

 後ろを警戒しつつ、全力疾走。

 日頃の行いが良かったのか、前方から戦闘音。木々の切れ間から見えたのは。

「見つけたああああああああああああ!」

 一週間の苦労は報われた。モンスターと戦っているのは主人公に違いない!

「させるかっ。蛇さん、合体して!」

 合体という不穏な言葉が気になりはしたが、振り返る余裕は無い。

「口開けろ!」

 こちらに気が付き呆然と立ち尽くしている勇者に水瓶の水をぶっかける。全力疾走そのままの勢いで勇者を押し倒してしまったが気にしない。それよかちゃんと飲んだかどうか不安だった俺は何も考えずに勇者の口をこじ開けて、だぼだぼと水を注ぎ込む。

 これでよし。満足げに振り返った俺の目の前には巨大な口。

 あ、食われる。立ち上がる間も無く、勇者共々蛇の口の中に。痛みを感じる間も無く、意識が遠くなっていった。

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