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雨降る街の少女  作者: 羊羹
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或る雨の日

序章

「なんで?」

 少女は問いかけた。

「どうしてなの?」

 ゴロゴロと雷が鳴っている。が、見ることは出来ない。喋ることも出来ない。

「ねぇ!」

 故に、少女の問いに答えることなど無理なのだ。意識が朦朧としてくる。程なくして私は殺された。



第一幕

「この先一週間は非常に大気が不安定で日本列島にはー。」

 キャスターによれば、この一週間は天気が良くないらしい。眠い目をこすりながら、俺は朝支度を始める。北山桜高校までは、自転車で約30分。いつもならギリギリになって家を出るため雨の日は厄介だが、今日は早めに起きれたため、時間には余裕がある。


「ここで、速報が入ってまいりました。えー、倉山(くらやま)県境のー。」

 俺は傘を片手に家を出た。もう一方の手にはスマホを持って。ながらスマホは良くないのは重々承知しているが、やめられないのだから仕方ない。ピィン、と高音がスマホから流れ、岡本慎二からメッセージが届いた。

「起きてるか?」

 すぐに同意の言葉を返信した。

「ニュース見たか?お前の家の近くだったぞ。」

 慎二が何を言おうとしているのか、全くピンとこなかった。そこで、何があったのか聞いてみると、

「殺人事件」

 と、その4文字だけが先に送られてきた。家族が無事で良かったとか、誰が殺されたんだ?とか考える間も無く、


 俺は意識を失った。



第二幕

 意識を失うってことは、脳が何も感知出来なくなるのであって、故にその間の時間感覚も無くなる。

 次に目覚めた時、そこはとても暗く、若干の光があって、自分が椅子か何かに縛られていること。そして目が慣れてくるにつれて、恐怖を覚える場所であること。自分が居ていい場所でないこと。この3つが分かった。

 脳が目覚めるにつれて嗅覚も敏感になる。健康に生きる人が人生において、まず嗅ぐことは無い匂い、人の死体から出るとても不快で、今にも吐きそうになる、そんな匂いが脳に刻まれていく。

 気持ちが悪い。そして、背中に感じる痛み。ネガティヴな想いだけが募る。冷静になれ、俺。状況判断だ。そんな時だった。

 …音が聞こえる。歌だ。甲高い声、まるで小学生が文化祭で歌うような声…

「あーめあーめ ふーれふーれ かあさんがぁ〜」

 FPS系のゲームで鍛えた方向感覚によれば、自分が今いる位置から上の方から聞こえる。

「上…?」

 自分で考えて、すぐに恐怖が舞い戻る。ここは地下なのだろうか。その時だった、ガタッという木が軋むような音と共に光が差し込む。まぶたが反射的に閉じた。誰かが近づいてくる。そして、ドサッと鈍い音が鳴った。誰なのか見たい。その考えが脳に浮かんだ。何をしているのか。それを見るだけだ。だから大丈夫だ。と、脳が呼びかける。早くここから出たいという願いがさらに後押しする。普通の人間なら、こんな即決は断じて有り得ない。が、俺は目を開けた。


 目に映ったのは、少女のにこやかな顔だった。



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