第8話:悪役令嬢は貴賓室へと通される
選択肢がこなくて寂しい・・・
あたしは衛兵に連れられて王宮の廊下を進む。
「なんということかしら・・・!!殿下はいったい何をお考えなの?」
感情の赴くままに涙を浮かべてみせると、若い衛兵がおずおずと賛同を示した。
「お察しします、淑女<レディ>。殿下にもお立場はありましょうが、あのなさりようはあんまりです。王に仕える騎士の一人として謝罪いたします」
ちょろい。
ちがった。優しい男は好きよ。
「そう・・・そうね!あたくしは確かに殿下にとって完璧な婚約者でなかったかもしれない・・・でも・・・それにしても、もう少し淑女の名誉を保つなさりようはあったはず・・・あたくしとて殿下が理由を示して身を引け、と直接仰ってくだされば涙をのんで黙って身を引きますものを・・・」
先ほどの広間で王子に向かって面罵したことを遠くの棚に放り投げ、涙を浮かべ俯きながら殊勝に振る舞ってみせると、正義感を刺激されたのか若い衛兵は、ますます同情的な態度で大きく頷いた。
おまけに涙を拭くためだろうか、折り畳んだハンカチまで差し出してくる。
絹に銀糸の刺繍。いいところの出っぽいわね。
「ありがとう。若き騎士の親切をあたくしは決して忘れませんわ」
「淑女<レディ>・・・」
ほんとちょろい。
しばしためらってから、若い衛兵は心をきめたように顔を上げると衝撃的な告白をした。
「実は、殿下からは貴女を地下の牢へ連れて行くよう、命じられております」
「おい!!」
もう1人の衛兵が制止しようとするのを無視して、若い衛兵は続けた。
「・・・ですが、地下牢は大逆罪やそれに準ずる重罪の者のみが死刑の前に幽閉される場所です。光は射さず、床は湿り、ネズミやムカデが我が物顔で走り回り、糞尿は部屋の隅の溝に垂れ流し・・・。とても若い淑女を連れて行って良い場所ではありません」
「まあ・・・怖ろしい」
あのアホ王子!!
ちょっと公衆の面前で煽られたぐらいで、あたしをそんな目に遭わせるつもりだったの!?
なんて器量の小さい!!
あのアホ王子の頭には意地の悪いカラスの羽でもつまってるのかしら!
わなわなと怒りに震える体を押さえつけ、歯を食いしばった様子を見せないよう扇に顔を伏せていると、若い衛兵は決然とした口調で続けた。
「おお・・・私の淑女・・・決して貴女をそのような怖ろしい場所に連れてなど行かせません。幸い、城の知り合いに伝手がございます。尊い方々にご不自由をかけぬための貴賓室に密かにご案内いたします。もちろん警備は私があたります。殿下のお怒りもきっと一時のこと。長くは続きませんでしょう。そちらで少しばかりお待ちいただけるのがよろしいかと存じます」
いつからあたしがお前のものになった。
が、それはそれとして提案は悪くない。
若い衛兵の言うとおり、貴賓室に行くのもいいだろう。
あるいは、このちょろい衛兵を言いくるめれば、そのまま城を脱出できるかもしれない。
あたしは・・・
おとなしく客室へ案内される → 17話
若い衛兵を言いくるめて城からの脱出を謀る → 18話
その他、読者投稿の選択肢 → 19話
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