第12話:知略系悪役令嬢は断固として地下牢行きを拒む
あたしは、絶対に地下牢には行かない。
あたしの中で、それは決定事項だ。
城の地下牢なんて臭くてじめじめして不潔で鼠とゴキブリとムカデが徒競走をしているような場所で、あたしのような貴族令嬢が行くべき場所じゃない。
そもそも、あのアホ王子は考えなしに単なる嫌がらせで思いついただけだろうし。
というか、あのアホは地下牢なんて足を運んだこともないに違いない。
嫌がらせにしては手段が過激すぎる。
たぶん、取り巻きの中に今回の黒幕か、その手先がいる。
と、今やあたしは確信している。
きっと地下牢で幽閉されるだけでは済まない。
ここまでのことをやらかした奴らは、きっと「その先」にも罠を張っている。
たぶん、地下牢で嫌な思いをするだけでは済まないような何か、だ。
「一度戦争をはじめたなら相手の命を絶つか反抗する気力がなくなるまで戦い続けなさい。それが貴族というものです」と平和主義のお母様は常々仰っていた。
「貴族の面子は命より重い」お母様の教えはあたしの中にしっかりと生きている。
つまりは、戦争なのよね。
あたしは髪をかき揚げる振りをしつつ編み込みに仕込まれた暗器を手の中に素早く滑り込ませた。
今、あたしとあたしの一族に戦争をしかけてきた連中がいる。
あたしはあたしと一族の面子のためにも、したたかに逆撃し、迂闊にも戦争をしかけてきた連中を叩き潰し、後顧の憂いのないよう連中の一族を親戚末子に至るまで擦り潰してやらなければならない。
そう思い定めれば、自然と覚悟は決まる。
宮廷のダンス会に来た貴族令嬢のあたしの役割は終わりーーー今からあたしは面子を傷つけた連中を叩き潰す一族の将軍となる!
「あなた達」
我ながらドスの効いた声で衛兵達に呼びかけると、衛兵達は目に見えて動揺した。
覚悟が決まると、自然と目力も姿勢も違ってくるのかしらね。
まあ、いいわ。ビビってくれた方が、これからの「交渉」もやりやすいのだから。
「ーーーー今すぐ決めなさい。あたしの一族とあたしを敵に回して一族の女子供に至るまで擦り潰されるか、この場は逃げられたことにして、あたしと一族に大きな恩を売るか」
「な・・・なにを言って・・・」
「言った通りよ。決めなさい!」
ゆっくりと半歩踏み出すと、衛兵達は互いを見やりつつ数歩後退した。
(ほんと、根性ないんだから・・・)
城の衛兵達が貴族のお坊ちゃん揃いでお飾りの兵隊ごっこ呼ばわりされているのは故のないことではないらしい。
「決められないならいいわ。そこで目を閉じて大人しくしていなさい。500数えたら今日は家に帰ってお酒でも飲んで寝てしまいなさい」
あたしは指輪の一つを放り投げると、立ちすくむ衛兵達を残してその場を去った。
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