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そこは以前、前を通り過ぎただけで何となく覚えていたペットショップだった。
店内は明るく奥の方にケージが見える。
仔犬や仔猫が居そうな感じである。
彼女は早速ケージに歩み寄って中の仔犬を観察し始めた。
「可愛い…」
彼女の今日一番の笑顔がまた更新された。
うさぎのケージの前に行くと彼女はうさぎのことを色々話してくれた。
思えば新生活を始めてバタバタしていた数ヶ月、こんなにゆっくりした優しい時間を過ごすのは無かった気がした。
今日踏んだ地雷がチャラになったらいいなぁ
などと、浅ましいことを考えていた僕だったが、
彼女の笑顔を見ていると、人生初のデートは
楽しいデートになったなぁ。彼女と一緒にいたら楽しい毎日になるだろうなぁ。そんなことを考えていた時に彼女が目の前にひょいと顔を出して、
「私だけ楽しんじゃってすみません。あの…宮田さんに御用があったのでは?」
「いや、僕も仔犬や仔猫が見たくなっただけ。
実家の犬に会いたくなっちゃったよ。」
その時彼女のスマホが鳴って、僕のどうぞという仕草に彼女は軽く会釈した。
電話はどうやらお姉さんからのようだった。
しばらくして彼女は電話を切った後、僕の目を直視して、
「宮田さん…この間のお返事聞かせて頂けますか?」




