図書館へ
結局のところ寝不足で信号の向こう側のビルに反射する日光に目を細めてしまう。
この間のカフェで待ち合わせた僕らは図書館へ向かった。
映画でもと切り出したのだが結衣ちゃんは「本が読みたい」と。
でも静か過ぎて「ゆっくり話すこと」は難しそうかな。まぁ映画も集中すると話せないけど…
地下鉄への階段を降りて2人分の切符を買う。
彼女はまだ緊張したような表情で「ありがとう」
と言った。
僕にもう少し経験と余裕があればその表情ははにかんでいてとても可愛く感じたに違いない。
やがてホームに電車が着き、彼女は反対側のドアにもたれるように佇んだ。
「ねぇ、結衣ちゃんてさ?あっ馴れ馴れしいかな?」
「大丈夫ですよ」
そう言ってクスッと笑った彼女の今日初めて笑顔が見れたかもしれない。
「きょうだいはいるの?自分は一人っ子でね。
友達とか羨ましいんだよね。」
「えっと、お姉ちゃんが…」
よしよし、ここから話を広げていって…
「へぇ、社会人のお姉ちゃんかぁ!」
「いえ、まだ学生ですよ。」
「歳が近いのかな?同じ学校?」
「いえ…」
そう答えると彼女は少し元気が無くなったように見えた。
何か地雷を踏んだのは明らかだ。
自分の何かを犠牲にしても時を巻き戻したい!
心からそう思った。
目的の駅に着いて階段を一緒に上がる。
図書館へ向かって歩きかけた時に彼女が口を開いた。
「あの…」