疑問
「お付き合いはしていませんし、今まで付き合った方もいないです。」
僕がちょっと恥ずかしさと諦めの混じり合ったような声で言うと彼女は「そうなんだ…」と一つ息を吐いてそして嬉しそうな表情をしたように僕には思えた。
もちろん僕もこういう話には今まで縁遠かったが、知らないながらも彼女が場慣れしているようにはちょっと見えない。
僕はずっと気になっていたことを彼女に問いかけてみることにした。
「失礼ですが…僕と何処でお会いしましたか?お手紙を戴いてからずっと思い出していたのですが、駅や電車の車内、もちろん学校ではないですよね。」
そうだ。僕がこんな可愛い女の子から手紙をもらって嬉しさよりも不安というかずっと気になっているのはこの子といつ出会ったのだろうか?
どこで自分のことを知ったのだろうか?
知らない人に付き合って欲しいなんていう筈も無いだろうし…
彼女は僕の質問に目を伏せて、少し考えるような素振りを見せる。そしてゆっくりと口を開いた。
「あ…ちょっと駅で見かけて…私が好きなタイプだと思って…おかしいですか?」
そりゃおかしい!と頭の中で呟いた。どう考えてもおかしい。だってこんな可愛い女の子がナンパのように
ちょっと好みな男に告るだろうか?
しかも手紙をわざわざ書いて…
ただ好意を持ってくれている事は伝わってきているような気がする…勘違いで無ければ良いのだけど…
余計なことを考えないでこの娘と話していくうちに色々分かるだろう…
そんな所に自分の思考の落とし所を見つけた僕はとりあえずこのチャンスを大事にしようと思った。
「いえいえ、その…ありがとうございます。」
「お手紙のお返事を…聞かせて頂けますか?」
僕はずっと考えて自分で導き出した答えを彼女に伝えることにした。