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変わることのない夢

宮崎家では、以前のように翔の話題で話し合うことも少なくなっていた。

親父さんも雪さんもお互いが気を遣って、あまり話題を出さないようにしていたが、もう二人の中では笑って送り出してあげようと心に決めていた。結衣、結真、優花もその後のことはともかく送別会をサプライズで計画していた。


雪のギターはあれから響かない。

自分がこんなに落ち込んだりすることを雪は初めて知った。そして翔の存在が大き過ぎて自分でも

もうどうしていいかわからなかった。


ある日のランチ営業が終わって、僕は親父さんに買い物を頼まれた。「これくらいの買い物なら明日出勤前に買ってきますよ。」「いいから行ってきてくれ。」と親父さんは僕を追い出すように送り出した。


買い物を済ませて店に帰ると

パーティーの準備が完了していた。

何か祝い事かな?


結衣、結真、優花さんが微妙な笑顔で僕を着席させる。とくに優花さんと結衣は目を腫らしていた。何かあったのだろうか?


優花さんが、目に涙を浮かべて「ううう…翔ちゃん。世の中には単身赴任なんかよくある話やけど

ウチはやっぱり好きすぎてやっぱり離れるのはイヤや〜!箱根の山はウチには高すぎて今はちょっと越すことはでけへんかもしれへん。」


優花さん…僕には難し過ぎて何の話かさっぱり…


結衣はハンカチで目頭を押さえながら「あーん。優花さん泣かないって約束じゃない。でも、もう私は決めました。親戚もあっちにいますし、まだ若いけど二人で力を合わせていけばその日食べるくらいは出来ると思います。」 結衣まで何を?


雪さんも結真も元気がない。どうしたんだろう?


親父さんがこの空気を変えようと「何だよ、湿っぽいなあ。おい、翔。向こうでも頑張ってこいよ。お前なら何処に行っても大丈夫だ。俺が保証する。一人前になって来い。そして…いや、何でもねぇ。」「…親父さん、向こうって何処ですか?」「東京だよ、東京。」




「ああ、親父さんに言わないといけなかったですね。僕、やっぱり東京には行きません。」


その場にいた全ての人が驚きを隠せない。


親父さんは「お、おい。お前さん大丈夫か?東京の店だぞ。有名店に入って、一から修業したら

一流の料理人になれるんだぞ。若い奴なら飛びつく話だ。」


「親父さん、僕は一流の料理人と呼ばれる為に料理を作っていません。僕はこの店に入る時に親父さんに言いました。〝誰かを幸せに出来る料理を作りたい〟それが僕の変わることがない夢で、それはここでも出来ます。いや、僕はここでしか出来ないかもしれません。そしてそれが出来た時、僕は本当の一流の料理人になれるかもしれません。」


「でもな、お前さんこんなチャンス一生に一度しかないかもしれないぞ。俺のように一生、洋食屋の親父で終わるかもしれない。それでもいいのか?」


「はい。僕は一生、洋食屋の親父で終わりたいです。そしてみんなを美味しい料理で笑顔にしたい。親父さんのように…僕の目標であり、夢です。これからも色々なことを教えてください。」


親父さんは目に涙を浮かべて「馬鹿野郎。本当にお前さんは馬鹿だよ。まだまだお前さんには負けねえ。俺がお前さんを一流の料理人にしてやる。

他の奴なんかに任せられるか!なぁ雪!」


雪さんは大粒の涙を流す。結衣も結真も優花もみんな抱き合って涙を流している。


翔は取り残されたようにキョトンとして


「ところでこれ、何のパーティー?」

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