舞台の上の女優
高瀬川に映るネオンを僕は眺めながら歩いた。
顔を上げて歩く元気もない。
まさかこんな展開になるとは。
先輩は慣れているのか、無料案内所に入っていき、三人キャバクラに行きたいんだけどと黒スーツのお兄さんに言うと、ボソボソと値段交渉をしている。
次に家電を買う時にはこの先輩に同行してもらおうと心に誓った。
どうやらお店が決まったらしく、僕らは黒服のお兄さんについて行くことになった。
とあるビルに着き、エレベーターで4Fへ。
降りたフロアはアジアンテイストの内装でダークブラウンの壁にオレンジのアクセント。
観葉植物が所々に置かれていてエスニックな音楽が
リゾートっぽい雰囲気な店内。
間接照明だけなので少し暗めな感じのお店である。
他のお店に行ったことも無いので、これが普通かどうかも分からないがとりあえずトモヤの横に座った。
すぐにボーイさんが来て飲み物を聞かれたので、
先輩が気を利かして自分とトモヤにウーロン茶を頼んでくれた。
「コイツら、今日はもう飲み過ぎなんだ。」
俺らは未成年だっつーの!
すると先輩とトモヤ、そして僕の横に女の子が一人づつ座った。
「こんばんは。お店に来られるのは初めてですか?私、春奈って言います。よろしく…」
僕の横に座った女の子から名刺を受け取ったがやりように困った僕は無意識にポケットにしまった。
春奈というこの女性、髪をアップにしてドレスを着ているからだけではなく、とても美人である。
目が大きく、印象深い眼差しをしている。
スタイルもすらっと背が高く、モデル体型で
芸能人のようである。
彼女達のことをお店はキャストと呼ぶと聞いたことがあるがこのお店を舞台だと考えるとまさしく彼女は女優と呼ぶに相応しいと僕は思った。
彼女の魅力にしばらく見とれていた僕の顔を見て
彼女が何かを思い出したように、
「あっ!あなたは…」