大きすぎる存在
あれから結衣は自分の部屋でベッドに横たわって毎日のように泣いていた。
結真がNYに行ってしまうかもしれない。
幼い頃から自分が敬愛し、また姉からも溺愛されてきたからこそ初めての離別に結衣は胸を痛めていた。
そして自分が信頼するもう一人の姉のような存在…優花に相談した。
すると優花は「結真が決める道や。応援したりや。ウチは結衣のことをホンマの妹やと思うてるで。だから寂しくないやろ。」と抱きしめてくれた。だからこそ自分を保っていられた。
でも翔まで東京に行くかもしれない。この事実には結衣も耐えることが到底できなかった。
しかも、優花には自分が言おうが、他の誰かからこの事実を知ったとしようとも自分と同じかそれ以上のショックを受けるに違いない。
相談相手もいない中、うさぎや動物を大切にする優しい結衣の心はさらに大きな痛みで今にも張り裂けそうだった。
それは雪も同じだった。親父さんから翔のことを打ち明けられた日はギターを弾くことが出来なかった。きっと神社に行ってもまた前のように悲しい音しか出すことが出来ない。雪はまた昔の自分に戻ってしまったような気がしていた。
結衣が塞ぎ込んでいることでその理由として翔のことを知った結真は親友である優花にそのことを告げた。当然、優花は何もかも投げうって東京行きを決意したが、実際はこちらに両親を残したまま、姉だけでなく自分まで東京に出ることは難しく、結衣同様に悲しみに捕らわれてしまった。いつもは気の強い優花が見る影もない。
みんなとの別離を決意していた結真だけが平常心でいられたが優花を慰めてあげることだけで精一杯だった。
今日も翔は一生懸命にオニオンスープを作る。
「よし!」彼の心はもう決まっていた。