お祝いのパーティー
僕は結衣を呼び出した。いつものような笑顔でいつもの鴨川の河原に腰掛けていつものように結衣が腕に抱きつく。しかし、僕は結衣にいつもとは違う話を告げなければならなかった。
彼女の表情が、みるみるうちに曇っていく。
「翔くん、東京行っちゃうの?私達離れ離れになっちゃうの?」彼女は人目をはばからず泣き崩れた。僕は結衣の肩を抱いて「まだ決めていない。僕はまだ学生だし、東京に行ってどうしたいというビジョンもない。僕だって結衣と離れるのは嫌だよ。」
「お姉ちゃんもNYに行くかもしれないし、翔くんまでいなくなったら私、ここで何をしたらいいか分からなくなるよ。お願い、私を一人にしないで。ずっと側にいて欲しい。そうだ、私も東京に行く。何もかも捨てて。翔くんと一緒なら大丈夫。連れて行って。」
僕は興奮している結衣を抱きしめて「一人にしないよ。本当にまだ何も決まってないから…結衣には最初に相談したかったんだ。 今日はね、親父さんと雪さんがみんなを呼んでコンクールの特別賞のお祝いをしたいって言ってくださったんだ。
結衣も一緒に行こう。」僕は結衣の肩を抱いて、
お店へと向かった。
お店には結真、優花さん、僕と結衣を親父さんと雪さんが迎えてくれた。僕らが席に着くと、店のドアが開いて意外な人がお店に入ってきた。
「マスター!」アンクのマスターが来てくださった。「よう。兄ちゃんの祝いだっていうから来たぜ。どれ、兄ちゃんの料理を食べさせてくれないか?」親父さんが作ってくれた前菜を雪さんが
出してくれた。僕は着替えて料理を作りに厨房に入る。みんなに美味しい料理を食べて貰いたい。
一皿一皿に想いを込めて作った。
優花さんは「翔ちゃん、いつの間にこんなん作れるようになったんや!スゴイわ!うちの実家のコック、クビにして翔ちゃんに毎日作ってもらうわ。」
親父さんが「姉ちゃん、コックって…金持ちの嬢ちゃんかい?」するとマスターが「ミヤちゃん、この子、千花ちゃんの娘だぜ!」「えっ!千花ちゃんの…ということは慶の子か!」
僕は驚いて、「親父さん、マスターをご存知なんですか?それに千花ちゃんって…」
親父さんは「ああ、みんな高校の同級生さ。古い友達で腐れ縁だよ。俺もマスターも慶…おっと、神社長も目指してる将来は違ったが、好きな女性は一人だったなあ…」
なるほど、千花さん昔から美人だったんだなぁ…
結衣も結真も、何故この料理がGPじゃないの?と首を傾げていた。
アンクのマスターも褒めてくれた。
「兄ちゃんは何やってもスゴイな!美味いわ。」
みんなが楽しく談笑していると結真が席を立って、先にドリンクを取りにいった雪の所に向かった。
「アンタに話があるんだ。」