料理コンクール
そして僕はコンクールの日を迎えた。
有名レストランや誰もが知ってる名前のホテルから新人調理師が集まっていた。正に錚々(そうそう)たるメンバーである。でも、僕は堂々と〝洋食のミヤサキ〟の看板を背負ってここへ来た。
恥ずかしい料理は出せない。
自分が今まで勉強したことを全て出しきるまでである。
調理の時間が始まる。僕はポークソテー とソースを作る。その様子を見回っている評価員の人達が
僕の調理台の所に来た。
その内の一人が僕のネームプレートを見て、
「ミヤサキ…親父さんのところの…なるほど…」
その人は僕に「一度、付け合わせに炒めた舞茸やサツマイモを使ってごらん。ポークソテー が引き立つよ。」とアドバイスをくれた。
なるほど…的を得たそのアドバイスだけでも今日、ここに来た意味がある。僕はそう思って今この料理に全力を尽くした…
結果は後日、郵送で知らせてくれるらしい。
それよりも僕は早くもらったアドバイスを
試してみたくてウキウキしていた。
店に帰ると雪さんが「おかえり。どうだった?」と迎えてくれた。「どうでしょう?まあいつも通りには。」
僕は着替えて厨房に入って早速親父さんを手伝いながら帰りに買ってきた食材で付け合わせの研究をした。親父さんが「ほう、なるほどな!ポークソテー に合うな。」「コンクールの評価員の方にアドバイスを頂いたんです。それで試してみたくて…」「評価員?そいつなんて名前だった?」僕はその人のネームプレートを思い出して「確か、長門さんだったと思います。」
「そうか…なるほど。」親父さんはニヤリと笑った。「親父さん、ご存知なんですか?」
「今は東京の調理師学校の校長さ…元は俺の一番弟子だった男だよ…」