変化
優花は陽子に詰め寄る。「ちょ、ちょっと待ってよ。私もまだ詳しくは知らないんだけどアメリカのプロデューサーだか何だかが、桜のライブ映像を見て結真に興味を持ったらしいの。で、一度会いたいんだって。それってつまり引き抜きでしょ。だから可能性があるってことよ。本人もまだ知らないから言わないでね。分かった?」
「でもウチは親友やで、それに恋のライバル…それはちょっと置いといて、steedはどうするんや、
ギタリストがおらへんバンドなんて聞いたこと無いわ。」「だからまだ何にも決まってないから。
私だって急に結真が抜けたら大変だよ。」
「そやな。すんまへん。」「さあ、これからスタジオで次のライブの音合わせだよ。もうチケット売れてるからね。」
宮崎家では雪が親父さんのご飯をよそっている。
「はい。父さん。」「ありがとよ。」
「最近元気そうで嬉しいわ。翔くんのおかげね。」「また翔の話かい。お前よっぽど惚れてるな?」雪はちょっと赤くなって「な、何言ってるのよ。あの子は年下よ。それに彼、すごくモテるわよ。こないだ三人も女の子が店に来て翔くんのこと訊いてきたわよ。」「そりゃアイツは優しいからな。女はコロッといっちまうだろう。それくらいの甲斐性があるほうがいいぜ。」雪は一瞬、結真のことを思いだすがすぐに翔のことを思い出して「でも、翔くんって本当にすごいわ。真面目で思いやりがあって、頑張り屋で。」と言うと、
「じゃあ、休みにどこか一緒に行ってやれよ。」
「そうね。じゃあ今度彼に行きたい所を聞いてみるわ。」
雪はまた神社でギターを弾く。「あれ?」
いつもと音がちがう事に気付く。
悲しい音が少しだけ優しい音に変わっている。
これって…雪は一瞬考えて「まさかね…」