真心を結ぶ
旅館のバスに送ってもらって、近鉄奈良駅の前で降りた。
夕方の街に赤いブレーキランプが長く連なっている。車の列を横目に僕と結真はアーケードの中を歩く。
「せっかく結衣にライバルと認めてもらったんだから旅行の時くらいデートに誘ってもいいかなと思ってさ。」
結真は歩きながら腕を組んできた。
「あっ、アクセサリー屋さんだ。見てもいいかな?」「もちろん。」
結真はたくさんあるアクセサリーを楽しそうに見ている。僕はふと思った。「結真、何かプレゼントさせてよ。」
結真はビックリした様子で、「い、いいよ。大体、温泉旅行はあんたをゆっくりさせてあげたくて提案したんだ。私を喜ばせてどうするんだよ。」と手を横に振る。
「でも時計も貰ったし、風邪の看病してもらって…本当に嬉しかったんだよ。お願い!」
「ん…じゃあ、翔が決めてよ。その方が嬉しいから。」恥ずかしそうに結真が言った。
僕は名前のアルファベットをペンダントにしてくれるサービスがあることに気づいて、YUMAというペンダントを作ってもらった。
10分程で出来ると言われたので結真とタピオカミルクティーを一緒に飲んだり、ガラス細工のお店を一緒に見たりした。結真とこうやってデートらしいデートをしたのは初めてで結真がいつもとはまた違って見える。
僕らはさっきのアクセサリー屋さんに戻った。
出来上がったペンダントを結真につけてあげる。
「嬉しい…なんでこれを選んだの?」
「結真っていい名前だよね。真心を結ぶ。初めて結真のギターを聴いた時、真っ直ぐに響いてきて、それって結真の真心なんじゃないかなって思う。素敵な名前だからどんな綺麗なアクセサリーより輝いて見えるかなと思ってさ。」
翔が微笑みながらそう言った次の瞬間、結真が後ろから翔の身体を抱きしめる。
「バカ…また好きになっちゃうだろ!もう。」
僕は結衣と優花さんにもお土産を買った。
明日、ウェディングイベントの後にサプライズで渡そうと思っている。
「そろそろ帰ろうか。」と言うと結真は僕の腕に自分の腕を回して「り、旅館に着くまでだからいいだろ?」と言った。タクシーを拾って帰る間も結真はぴったりくっついて、「このままがいいなぁ」と言う結真が愛おしく思えた。