胸を焦がす
「よかったぁ…本当に良かったぁ…」
有りふれた、でも美味しい料理に出会えた時に
「美味い!」としか表現出来ない自分には正直
このリフレインが胸に押し寄せてくるのは当たり前
というかごく自然である。
自分…宮田 翔は18歳の平凡な学生である。
この四月に 京都の大学に入って何もかも目まぐるしく時間が過ぎて行く中でやっと自分にも幸運が舞い込んできたようだ。
彼女に出会ったのは入学して間もない頃、山側に桜が見える駅のホームで手紙を渡された。
そこには「好きです。付き合ってください。」というメッセージと連絡先のアドレスが添えられていた。
高校時代は特にやりたいことも見つからず、三年生になって周囲の焦りに合わせて受験勉強を始めて、何となくの大学生活。もちろん彼女などは縁遠く誰とも付き合ったことは無かった。 だからこんな手紙を貰ったら普通の大学生なら〝ふうん〟といったような感じかもしれないけど、僕にとっては書き留めで札束が送られてくる位の衝撃というか嬉しいことである。
正直言って彼女を駅でも電車の中でも見かけた記憶が無い自分には最初はイタズラかと疑った。