第50話
マーリスが告げ、マルシェが手紙の中にあった王子という文字。
そして、落ち込む私に男性が告げた、後は任せてください、という言葉。
「な、なっ!」
その全ての要素が私の頭の中で繋がり、私はようやく全てを悟る。
今まで自分が平民だと思っていた男性、彼はライフォード様が身分を偽ったもので、ライフォード様は人知れず、今回の件に関わっていたことを。
そう、私に告げた言葉通りに。
それを理解した私の胸にまず、男性が無事であったことの安堵、突然の自体に対する混乱、ライフォード様になんて口を聞いていたかという不安、などの様々な思いが湧き上がる。
「………っ!」
そして最後に私が覚えたのは、やられた、という感情だった。
マーリスに婚約破棄された時、救いを貰ってから、私は男性を助けるために動いてきたつもりだった。
だが、実際はどうだ。
私は男性を助けることができなかったどころか、逆にライフォード様の手を借りる形となっている。
それは、今まで必死に貴族社会で生きてきた私にとって初めての体験で──酷く、悔しいものだった。
その感情に動かされるまま、私はライフォード様へと恨めしげな目を向ける。
「なっ!?」
私が、ライフォード様に身体を引き寄せられたのはその時だった。
突然のことにまるで反応できない私は、そのままライフォード様へと倒れかかってしまう。
「……本当なら、このパーティーが終わった後に改めて告げさせて貰うつもりだった。──だが、もう我慢が出来そうにない」
「………え?」
そして私の耳元に口を寄せ、そうライフォード様が告げたのは、次の瞬間のことだった。
まるで状況がわからず固まる私。
そんな私に構うことなく、時は動いていく。
「サラリア嬢、貴女のことが好きだ。──貴女に婚約者がいたと分かりながらも、諦められなかったくらいに」
私に向かって告げられたライフォード様の言葉、そう愛の告白。
その、まるで予想していなかった言葉に、私の頭の中は真っ白になることとなった……
後2話、明日で本編完結予定です。




