第5話
お父様に休めと言われ後、私は自室に戻りベッドに横たわったが、眠ることはできなかった。
今の時間帯は昼頃にも関わらず、身体はひどくだるくて休息を求めている。
だが、目を閉じる度にマーリスのことが頭に浮かび、どうしても私は眠ることが出来なかった。
もし、私とマーリスの仲が良ければここまで私が気づくことはなかったかもしれないが、私とマーリスの仲は決して悪くはなかった。
喧嘩をしたことはない、そうまでは言わない。
それでも、私は常にマーリスを支えてきたし、その事はマーリス自身も気づいていると思っていた。
「何で……」
だからこそ、私はマーリスの裏切りに衝撃を隠せない。
もし、マーリスがマルシェのことが本当に好きで身を引いてほしいのならば、私はきちんと話し合いに応じるつもりだった。
最終的に、それを本気でマーリスが望んでいるなら、本気で身を引いていいとも思っていた。
「何で、こうなったの……」
酷く胸が痛い。
その痛みに耐えきれず、私は身体を起こす。
最早、眠ることはできそうにない、そう判断した私は外へと歩き出した。
◇◆◇
気づけば私は、いつも散歩している王宮近くの広場にいた。
何時もならば人に溢れているその広場は、何故か今日に限って人気が無く、それを疑問に思いながら私は腰を下ろす。
「サリア様?」
「っ!」
突然、私の背後から声がしたのはそのときだった。
声に反応した私は、跳ねるように振り返る。
そこに立っていたのは、私の浮気相手だと言われている男性だった。
その姿に私は一瞬、驚愕を覚えるが、すぐにここで彼にあってもおかしくは無かったことに気づく。
何せ、この場所は今まで彼とあったことのある場所なのだから。
そこまで考え、私は情けなくともこの場所に来るのではなかった何て思いを抱いてしまう。
そうすれば、あの事を自分の口から告げずにいられたかもしれないのに、と。
「やっぱりサリア様でしたか。何時も言わせていただいておりますが、いい加減お付きの者を連れて外出してくれませんか?」
そんな私の内心を知るよしもなく、男性は何時も取りに私の偽名を口にし、そう話し出す。
その彼の態度に、一瞬私の胸にこのまま何時も通りに話して、全てをうやむやにしてしまおうか何て思いが浮かぶ。
しかし私は顔を振り、直ぐにそんな弱きを振り払った。
……今回の件に、この無関係な男性を巻き込んでしまったのは私のせいなのだ。
だとしたら、責任を取らなければならない。
「……実は、少しお話があります」
そう覚悟を決めた私は、重い口を開いた……
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