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第49話

まさか、ライフォード様からその話が出てくると思っていなかった私は、驚きを隠すことができなかった。

だが、すぐに私は思い直す。

たしかに、まさか王子様に自分が調べられているとは思っておらず、驚いてしまったが今や私は《仮面の淑女》の代表だ。

王族に興味を持たれておかしな存在はない。


……私はそう思いながらも、どこか違和感を拭い去ることができなかった。


「娘を溺愛する辺境伯だが、流石に今回の件は許し難かったらしい。辺境伯令嬢は勘当され、修道院に入れられたそうだ。これ以上彼女には、貴方を目の敵にしている余裕など無いだろう」


「き、貴重なお話ありがとうございます」


それは最初、あくまで小さなものでしかなかった。

にもかかわらず、ライフォード様との会話を続けるほどにその違和感は膨れ上がっていく。


「アーステルト家マーリス、彼に関してはもう何の問題もいらないだろう。まるで人が変わったように、アーステルト家当主の下、領地経営を学んでいるらしいからな。お灸を据えた甲斐があったというものだ」


「…………え?」



そして、次にライフォード様が発した言葉に、私は違和感の原因を理解した。


ライフォード様、私は彼をあくまで今回の件の第三者と思って話を聞いていた。

だからこそ、私は気づいてしまった。

ライフォード様は、明らかに第三者の視点で話をしていないことに。


──そう、ライフォード様は当事者であるように、今回の件の顛末を語っていた。


それに気づいた私は、呆然とライフォード様の顔を見上げる。

何故、ライフォード様がそんな話し方をするのか分からずに。


「おっと、失礼。この姿での自己紹介を忘れていた」


今までの毅然とした王子様の仮面を脱ぎ捨て、悪戯っぽくライフォードが笑ったのは、その瞬間だった。


その時、私に向けられることになった青い目。

それにどこか見覚えを覚えた私は、ダンス中であることも忘れ、思わず足を止めてしまう。



「お久しぶり、そういうべきでしょうか?──サリア様」



今までとガラリと雰囲気を変え、そう私に笑いかけてきたライフォード様。

その口から出てきた名前、それはたった一人にしか使ったことのない、酷く聞き覚えある偽名。



「────っ!?」


次の瞬間、全てを理解した私は声にならない悲鳴をあげた。

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