第48話
明るく照られされた大広間の中、音楽が鳴り響き、私を含めた貴族達は音楽に合わせ踊り出す。
多くの貴族が一斉に踊るこの大広間はさぞ、見応えがあることだろう。
直ぐに私達に対する注目など消えるに違いない。
そうしたら、何故私と踊ろうとしたのかライフォード様に聞こう。
そんなことを考えながら、私はライフォード様と共に踊る。
……だが、私の予想と反し、踊り始めてもなお私達への注目は薄まることはなかった。
それも、踊りながら私達の動向を伺うという、器用なことをしている貴族さえいる始末。
それが仕方ないことだと理解しつつも、私は煩わしさを感じずにはいられず、思わず頬が引き攣りそうになる。
とにかく、こんな状態でライフォード様と話すわけにはいかない。
そう判断した私は、周囲への意識を断ち、踊りに集中することにする。
「……あれ?」
次の瞬間私は、正面に見えるライフォード様の顔に既視感を感じることになった。
確かに私は、遠くからライフォード様を見たことがあるが、それはあくまで数回程度だ。
にもかかわらず、現在私がライフォード様に抱いた既視感は、親しい知人に出会った時のようなものだった。
その既視感の正体を確かめようと、私は思考に没頭し始めて──突然ライフォード様が口を開いたのは、その時だった。
「サラリア嬢、強引なやり方をしてしまって申し訳ない」
「えっ!?」
思考に没頭していた私は、話しかける可能性をまるで考慮しておらず、動揺で思わず声を上げてしまう。
「っ!」
次の瞬間、これでは周囲の貴族達の注意をさらに集めてしまうかもしれないと気づいた私の胸に、焦燥が浮かぶ。
けれど、その私の予想に反して私達にそれ以上の視線が集まることはなかった。
いや、それどころか先ほどよりも明らかに、私達に対する視線が少なくなっている。
その時になって、私はようやく流れる音楽が佳境となり、今まで私達へと目を向けていた貴族達も、踊りに集中していることに気づく。
どうやら、ライフォード様はそれに気づいて、私に声をかけてきたのだろう。
「だが、それだけしても貴方に伝えなければならない話がある」
そう理解した私は、今度こそ感情を表に出さないように口を強く結ぶ。
「貴方に冤罪を掛けて、アーステルト家令息マーリスと、辺境伯令嬢、マルシェの処遇についてだ」
「………え?」
……その私の決意は、次のライフォード様の言葉地あっさりと破られることになった。
更新遅れてしまい、申し訳ありません……




