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第38話

マルシェ目線です。

「………え?」


自分の配下の貴族がそう告げた時、私は何が起きたのか理解することができなかった。

今日連れてきた貴族達は、辺境伯と付き合いのある貴族の中でも長い付き合いのあるものだった。

だから、私にはその貴族達が裏切る可能性なんてまるで頭に無かった。


いやそもそも、何故急に若い貴族達が裏切ったのか、私は理解できていなかった。


私は、辺境伯令嬢。

その権力がどれだけ大きいものなのか、それをあの貴族達が理解出来ないわけが無いだろう。

なのに何故、いきなりサラリアに媚を売りだしたのか。

その答えを求め、私は呆然とあたりを見回す。


「さ、サラリアが《仮面の淑女》………?」


……そして真っ青な顔で、そう呟くマーリスに私が気づいたのは、その時だった。


「ひっ、」

初めて見るその婚約者の表情に、私は小さな悲鳴を漏らした。

私にとって、マーリスとはほかの貴族とは一線を画した存在のはずだった。

何時も笑顔で、ほかの令嬢からの人気も高い。

その上、他の貴族なんて比にならない程有能。


そんなイメージがあったからこそ、鬼気迫る表情を浮かべるマーリスが、一瞬私は別人に感じる。

何故、彼がこんな追い詰められた表情になっているのか、私は呆然とそんな疑問を抱く。


「……は、はは。私は辺境伯如きの伝手を得るために《仮面の淑女》を捨てたのか」


その疑問は、次の瞬間全てを諦めたような表情でマーリスが告げた言葉に、氷解する。


「………っ!」


そしてまた、私の混乱していた頭もその疑問が氷解すると共に動き出し、私は自分の最大の間違いに気づくことになった。


「あ、ああ……」


──そう、何故辺境伯如きを《仮面の淑女》よりも上の存在だと思い込んでいた、自分の勘違いに。


貴族社会に根付き、王族さえ愛用する魔道具を売り出している《仮面の淑女》。

その資金がどれだけか私は知らない。


だが、確実に辺境伯程度を力押しで潰せる程度の財力はあるだろう。


この結婚式の中サラリアが、敢えて新婦よりも派手な服を着てきたのも、女性の身でありながら男性を婚約破棄したと告げたのも全て、その力関係を表すため。

それを理解したからこそ、若い貴族達は辺境伯令嬢である自分の機嫌をとることを辞め、サラリアに謝罪をし始めたのだ。

それを理解して、私はようやく気づく。



………自分にはもう、破滅しか待っていないことを。



いくら私に甘いお父様でも、勝手に貴族たちを使い《仮面の淑女》と敵対したことを許しはしないだろう。

何せこの件で、辺境伯は味方となる貴族を大きく失うことになるのだから。


「さ、サラリアの言っていることは、全て嘘よ!」


……それが手遅れであるとわかりながら、私はその事実を受け入れることが出来なかった。

無意味どころか、逆効果になっていることを理解しながらも私はサラリアをおとしめるため叫ぶ。

もう引くに引くことが出来ずに。


その私の言葉を聞くものなど、最早誰一人としていなかった……

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