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第33話

サラリア目線に戻ります。

「貴様!どんな顔をしてこの場にいる!」


そう声が響いた時、私の胸に浮かんだのはやはり来たか、という思いだった。


「貴様が私を誘惑して来たこと、それを私ははっきりと覚えているぞ!お前のような女が、何故当然のような顔をしてこの場所に来れた!」


そんな私の思いに気づくことなく、若い貴族はそう言葉を重ねる。


「もしかして貴方も!私もこの女に誑かされそうになったことが!」


「くっ!この売女が!」


さらに、次々と周囲の若い貴族達がその言葉に同調し、私を責め立て始める。


「もしかしてあの人って……」


その騒ぎはさらにこの会場にいる貴族達へと伝播して行く。


……周囲から孤立した中私は、何故マルシェが自分を結婚式に招待したか、その理由を理解していた。


マルシェの狙いは、自分の手のものであるこの若い貴族達に、ありもしない私の風評被害を広めようとしていたのだろう。

普段ならばともかく、今の浮気者だと思われている私相手であれば、その行動は有効だ。


このままでは、私はさらに貶められて行くことになる。

それも最悪な形で。


だが、それを理解しながらも私には、まるで焦った様子はなかった。


「……安易なやり方」


それどころか、ローブの下に隠れているその口に、私は笑みを浮かべた。

これは利用できる、そう考えて。


まずは、この騒ぎを収めるべく、私は初めに声をかけて来た貴族へと目を向けた。


「っ!」


その瞬間、その貴族ははなにかを感じ取ったのか言葉に詰まる。


しかし、その時すでに手遅れだった。


その勘の良さを初めから発揮して私に声をかけて来なければ良かったのに、とそんな彼に哀れみを覚えながら、私は口を開く。


「これは、ハースター家御令息アスター様。お初にお目にかかります」


周囲から白い目を向けられる中、まるで気にすることなく彼に挨拶した私に、一瞬会場の中戸惑いが広がる。

その一瞬声が薄くなったのを見逃さず、私は声を張り上げた。


「ところで、私を他の御令嬢と勘違いされてませんか?──アスター様が今仲良くされている御令嬢は、マーセスター家のマイレリア様ですわよね」


「………え?」


……次の瞬間、貴族が押し詰める会場の中、自身の浮気相手を私に暴露された貴族の顔は、一瞬にして青く染まった。

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