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第32話

マーリス目線です。

「新郎新婦のご入場です」


控室を後にした私は、ドレスを身に纏ったマルシェと共に結婚式の会場に足を踏み入れた。

その瞬間、私達を歓迎するように歓声が上がる。

その本来ならば喜ばしいはずのその光景に私は、顔を歪めることになった。


マルシェを説得し、この結婚式は最小人数で行うことを了承させた。

それにもかかわらず、かなりの数の貴族がこの会場に集まっている。


……このままでは私は、この人数の貴族の前で自分の罪を暴露しなくてはならないのだ。


その事実に私は思わず顔を痙攣らせる。

付き合いが長い貴族達だけしかこの会場にいなければ、噂をこの場だけで留めておいてくれたかもしれない。

だが、今の状況では、そんなこと望めるわけがないことを私は理解していた。

この場で自分の冤罪を告げれば、数日中には貴族社会に広まることになるだろう。


「では、新郎から皆様にお伝えするべきことがあるそうです」


……その瞬間がやって来たのは、そう理解したその時だった。


司会が告げた言葉に、私は強く唇を噛みしめる。

その言葉は、私が冤罪を告げる合図として、司会に告げるよう命じていたもの。


「……皆様、今日こうして当家にお越し頂いたこと心から感謝いたします。存分にお楽しみ下さい」


にも関わらず、気づけば私は当たり障りのない挨拶を口にしていた。

自分が何を口にしたか理解し、一瞬私の胸に後悔が浮かぶ。


それでも一度逃げてしまった私に、もう一度覚悟を決める勇気など残ってはいなかった。


「……まだ時間はある。大丈夫だ」


挨拶に対する拍手の中、私は小さく自分に言い聞かせる。

別に今すぐ言わなくても大丈夫だと。

次の機会に言えば、それでどうになると。



……しかしその躊躇こそが、私をさらに最悪な状況へと引きずりこむこととなる。

この時に迷わなければ、そう後に私が後悔するような状況に。



「貴様!どんな顔をしてこの場にいる!」


そのきっかけは、祝いの空気に満たされていたはずの会場に不釣り合いな怒声だった。


「………っ!」


それに吊られてその場所に目を向けた私は、その場所にいた人物に絶句した。


「さ、サラリア、なんでここに……」


その場所にいたのは、地味なローブに身を包んだ元婚約者、サラリアだった。

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