第30話
マルシェ目線です
「わかった?手はず通りにするのよ」
それは結婚式の前日。
私は、目の前の貴族達に念押しするようにそう告げていた。
無言で頷く彼らの姿を見て、私は改めて明日の計画を思い描く。
明日、サラリアの名誉を地に墜とすために私が立てた計画を。
私は、目の前の貴族達にサラリアを徹底的に侮辱させることで、明日結婚式でサラリアの名誉を陥れようと考えていた。
「ふふ、これなら大丈夫」
その計画を改めて思い返し、私はその顔に笑みを浮かべる。
たしかにサラリアは、伯爵令嬢としては異常な程名を挙げている。
だが、そうだとしてもお父様に頼み込んで集めて貰ったこの貴族の集団に抵抗は出来ないだろう。
「そうよ。伯爵令嬢がこの私、辺境伯令嬢に勝てるわけがないのよ!」
私は自分を落ち着かせるように、そう繰り返す。
しかし、次の瞬間私の胸にある不安がこみ上げ、私はその顔をうつむかせた。
その存在は、第二王子ライフォード様。
彼の方が出てこれば、自分如きの身分ではどうすることもできないと理解しているからこそ。
「サラリアが貶められれば、直ぐに見捨てるに違いないわ」
けれど、その不安を直ぐに私は不必要なものと頭から切り捨てた。
私の作戦がうまく行き、サラリアが貶められることになれば、ライフォード様もサラリアには見向きもしなくなるだろう。
そうなれば、もしかしたら今度はライフォード様が、私のもとに来るかもしれない。
「ふふ」
その考えに、私は思わず笑みを浮かべる。
たしかに私はマーリス様と結婚する予定だが、ライフォード様と比べればどちらを取るか考えるまでもなかった。
「そうなれば、あの人はどれだけ後悔するからしら」
最近の明らかに態度が変化したマーリス様を思い返し、私はそう呟く。
その口に、隠そうともしない優越感を浮かべて。
……その自分の考えを、後に後悔することをこの時の私は、知る由もなかった。




