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第29話

お父様目線です。

「……もう大丈夫なようだな」


ルーノに知らせると、応接間を後にした娘、サラリアの姿を見て私はそう安堵の言葉を漏らした。

本当に良かったと、そう思いながら。


マーリスに婚約破棄された時のサラリアは、それだけみてられなかった。

憔悴し、傷ついた様子のサラリア。

そんな娘の姿は初めてで、マーリスの凶行を予知できなかった自分を、私は酷く恨んだ。


マーリスの裏切りを理解した時、サラリアは真っ先に私に謝罪したが、私はまるでそんなこと気にしてなどいなかった。

何故ならもう既にサラリアには、十分尽くして貰っているのだから。

マーリスとの婚約を結ばせたのも、政略的な理由など関係なく、ただサラリアに幸せになって欲しかったからだった。


親として情けない話だが、サラリアに私は今まで助けて貰ってきた。

だからこそ、親としてサラリアにはきちんと幸せになって欲しかったのだ。


「……そう考えたにもかかわらず、婚約者の本性を見抜けなかった私は、愚かとしか言えないのだろうな」


……その思いが、私の後悔をさらに大きなものにしていた。


本当に私は、親として失格だ。

落ち込むサラリアに何もできなかった自分、それを思い出して私はそう自嘲する。


「あの青年には感謝せねば」


──そう思うからこそ、私はサラリアに活力を与えてくれた平民の青年に、感謝を抱いていた。


婚約破棄の翌日の散歩から戻った後、突然活動的になったサラリアの姿に驚き、ルーノに無理を言って聞かせて貰った話。

その中に出てきた青年の話を思い出し、私は改めて感謝を抱く。

ルーノはあくまで、青年がサラリアを勇気付けたとしか言わなかったが、それで十分だった。


その青年を、私が恩人と認識するには。


今の私は、その青年が望むならばサラリアの婿とすることさえ考慮していた。

もちろん、そうするにはマーリス達の事が全て終わってからではあるが、そうなれば私はもうサラリアに、彼女が望むことをさせてあげるつもりだった。

平民が、貴族に嫁ぐことはかなり問題になるかもしれない。


だがそうなっても、青年が許してさえくれれば私はそのために全力を尽くすつもりだった。

少なくとも、サラリアがその青年を嫌っていない事は、確かなのだから。


「思ったよりも早く孫の姿が見れるかもしれないないな」


明るい未来を想像し、私が呟いた言葉。

それは、数日前からは考えられない程弾んだ声だった。

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