第28話
私が応接間の扉を開けると、そこには険しい顔をしたお父様が立っていた。
何故、そんな表情をしているのか、そのことに疑問を覚えながらも、私はお父様から手渡された手紙を手に取る。
「……っ!」
………次の瞬間、その手紙の宛名に書かれた、マルシェ・サースマリアの名に、私はお父様の険しい表情の訳を理解することになった。
破くように手紙を取り出した私は、読み進めるにつれてその顔を険しいものとしていく。
数日間手を出さなかったことで、マーリス達が何か勘違いしているかもしれないとは思っていたが、ここまでとは思っていなかった。
そう怒りを覚えながら、私はお父様へと口を開いた。
「どうやら、私を結婚式に招待したいそうですわ」
「なっ!?」
簡潔に手紙の内容を告げた私に、お父様の顔が一瞬言葉を失い、すぐにその顔に激怒を浮かべる。
おそらくお父様は今、アーステルト家と全面的に戦うことさえ、選択肢の中に入れているだろう。
「お父様、大丈夫ですわ」
だが、お父様が口を開く前に私はそう告げた。
「私自身の手で、報いを受けさせて頂きますから」
何故なら、マーリスとマルシェの結婚式、それは私にとって最大の好機だったのだから。
マルシェが、私を最大まで貶めようと考えているならば、それは好都合だ。
──それを利用して、私は自分の目的を達成してやろう。
そう笑みを浮かべ、私はある決定を口にした。
「結婚式の日、私はあの事実を明かすことにします」
「なっ!」
その私の言葉に、一瞬お父様は驚きを露わにする。
しかし次の瞬間、その表情を笑みに変え、口を開いた。
「……そうか。それなら私が手を出すことも無かろう。お前を敵に回したマーリスが憐れに感じるよ」
そのお父様の褒め言葉に、私は笑顔で返答し、ルーノに決行日を知らせるために歩き出す。
けれどその途中、私は手紙に目を落として顔を不審げなものに変えた。
「ライフォード様に目をつけられたからといって、調子にのるな?私は、王子様と話したこともないのだけど………」
マルシェからの手紙の中、書かれていその一文。
その一文の意味を、私が理解するのはもう少し後のことだった……
更新遅れてしまい申し訳ありません……
もう少しで気づかないところでした……




