第26話
本日までマーリス目線です。
「昨日、何故ライフォード様はこの屋敷に来ていたのでしょうか……」
部屋に入ってきて、 そう訪ねて来たマルシェに、私は思わず舌打ちを漏らしそうになる。
どうやら、マルシェもライフォード様と出会っていたらしい。
それは、昨日のことをマルシェに知られたくない私にとって、厄介きわまりないことで私は苛立ちを覚える。
「それは君には関係ない」
「……え」
その苛立ちのままに、私はマルシェへとそういい放った。
今まで私は、サラリアに言われ令嬢と接するときには外面を保つようにしてきた。
だが、今の私にはそれを保つだけの余裕はなかった。
「私は忙しい。無駄な話は後にしろ」
その言葉だけをマルシェへと私は告げる。
自分の言葉に、マルシェが傷ついた表情をしていることにさえ何ら興味を抱かずに。
私にとって、マルシェとはその程度の存在でしかなかった。
「それともうひとつ。結婚式の参加者はこちらが招待したものに限ることにする」
「っ!そんな!」
だからこそ、私にはさらにマルシェの望みを削ることにも何の躊躇も覚えなかった。
結婚式は、出来るだけ多くの人を呼ぶ、それをマルシェは強く望んでいた。
しかし、ライフォード様に冤罪を告白することを強要されている現状、結婚式に人が来るのは不都合でしかない。
「これは決定事項だ」
故に、私の中にマルシェの要望を聞くという選択肢はない。
そんな私に、怒りの目を向けたあと、マルシェは身を翻し部屋をあとにする。
それを見届けた私は、厄介後とは去ったとばかりに。
……けれど、その時の私は知らない。
この時、マルシェの機嫌を損ねたことをどれだけ後に後悔することになるか。
破滅はもうそこまで見えてきていた……
次回から、ようやく物語がサラリアに戻ります。
お待たせしてしまい、申し訳ありません。




