第23話
今回から、マルシェ目線です
「なんで……」
ようやく私が言葉を告げられたのは、ライフォード様が去ってからかなりの時間が経った後だった。
未だ身体の震えは止まら無い。
それだけ、ライフォード様をサラリアを貶めるのに使ったことの愚かさを私は理解していて。
「なんで、ライフォード様がサラリアを！」
……だが、今私の頭を支配しているのはそのことに対する恐怖ではなかった。
先程ライフォード様に告げられた言葉、それはあることを雄弁に示していた。
即ち、ライフォード様はサラリアのことを親密に思っていることを。
それが理解できたからこそ、私は衝撃を隠せない。
あの女から私は最愛の婚約者を奪ったはずだ。
……なのに何故、今度は王子が出てくるのか。
「なんでなんでなんで！」
マーリス様が私に愛を囁いてくれたあの日、私は確かにサラリアに勝ったはずだった。
伯爵令嬢の身でありながら、辺境伯令嬢である私以上の評判を有するサラリア。
そんなことが許されるわけがない。
そう考えた私はその気持ちに背を押されるままマーセルラフト家を訪れ──運命の出会いをした。
サラリアの婚約者を名乗るアーステルト家の令息マーリス様。
彼を見たとき私は運命を悟った。
私と彼は結ばれるのに違いないと。
なのに始めも頃、サラリアとの婚約破棄を迫る私にマーリス様はいい返事を返すことはなかった。
その事に私は最初、憤慨したりしていたが数日前状況は大きく変わった。
そう、マーリス様が実は私に思いを寄せており、その思いを知ったサラリアに今まで邪魔されていたことを教えてくれたのだ。
それだけではなくサラリアは、マーリス様の手柄を奪って名を上げていたのだ。
そしてマーリス様は、サラリアの支配から逃れるための協力を私に頼んできて、それを私は快く了承した。
全てはマーリス様を得て、あの憎々しい悪女を引きずり落とすために。
