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第2話

「貴方が何を言おうが、最早無駄ですわ。確たる証拠を私は目にしておりますし、それをマーリス様も信じてくださってますから」


マルシェは、呆然とする私に対し、そう勝ち誇ったような笑みを浮かべた状態で告げた。

その笑みを目にし、私は先程の自分の考えが正しいことを確信する。


……即ち、今回の誤解は、私とマーリスとの関係を妬んだ、マルシェの仕業だったのだと。


「貴方は!」


そのことに気づいた瞬間、思わず私は声を荒げていた。

マルシェは、辺境伯の令嬢で、自身の家よりも格が高いことなど、最早頭の中には無かった。

頭の中を支配するのは、女々しい嫉妬で私の人生を潰そうとすることへの怒りで支配される。


「……逆恨み、か。本当に情けない」


だが、マーリスが漏らした言葉が、怒りに支配された私の頭を急速に冷やすこととなった。

マーリスの言葉は、短いもの。

それでも、その言葉に込めれられた失望は、マーリスがマルシェの方を信頼していることを雄弁に語っていた。

その事実に、私は衝撃を隠しきれない。


「私はお前との婚姻が待ち遠しかった。だが、こうなればもう終わりだ。サラリア・マーセルラフト、貴様との婚約を破棄する」


「────っ!」


……そんな私へと、マーリスは決定的な言葉を告げた。


私は、マーリスのその言葉に、必死に涙を抑える。

幼い頃から、常に身の丈に合わない夢を抱いていたマーリス。

そんなマーリスを言い諌めながらも、そんなマーリスを支えるのが私は嫌いではなかった。


他の令嬢のように、盲目的な愛情をマーリスに私は抱いてはいない。

それでも私はマーリスに対して、手のかかる弟のような愛情を抱いていた。

これから、マーリスが自分の夢を歩んでいくのを手伝っていきたい、そう思えるくらいにはマーリスと共に過ごしてきた。


「もう何も言うことはない。速やかにここから去れ」


……だからこそ、私は突然のマーリスとの関係の変化に、動揺を隠せない。


マーリスがこちらへと向ける冷ややかな目、それに私は、どれだけ自分が無実を訴えても無駄なことを悟り唇を噛み締め、この場を去るために歩き出した。


けれど、私はみすみす婚約破棄を受け入れるつもりはなかった。

こちらに嘲るような目を向けるマルシェを睨みつけ、胸の中にある決意を抱く。


マルシェの嘘の決定的な証拠を掴み、マーリスの眼を覚ますと。


私の婚約破棄、それが正式に決まるまではある程度の時間が必要になるだろう。

だとしたら、それまでに全ての証拠を掴む。



……しかし、そう決意を固めていた私は気づいていなかった。


─── 本来ならば婚約者に裏切られ、悲嘆に暮れているはずのマーリス目に、隠しきれない嘲りが浮かんでいたことに。

拙作「パーティーから追放された治癒師、実は最強につき」書籍化が1月30日にMノベルス様から発売します。

是非、一度Twitterを覗いて頂けると幸いです。


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@want_many_book

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