第16話
ライフォード目線です
「っ!」
どう償うのか、そう告げた瞬間マーリスの顔は最早倒れてもおかしくないほど青くなった。
いや、青を通り越して白になっているかもしれない。
だが、それも当然の反応だった。
王族に対する殺害予告、それは反逆の意思があると判断されても仕方無いものであるのだから。
そうなれば死刑は絶対で、そんな状況で気絶しなかっただけでも誉められるかもしれない。
そんな状態でありながら、それでもマーリスは口を開いた。
「……と、当家の全てで償わせて頂きます。婚約者の辺境伯令嬢、マルシェと共に」
「……ほう」
その自分と想定外のマーリスの反応に、私は思わずそう言葉を漏らしていた。
先程言ったように、王族に対する殺害予告は問答無用の死刑だ。
つまり、償うも何もない。
なのにマーリスは、敢えて償うと告げた。
その本当の意味は、自分の利用価値を私に売ろうとしているのだ。
自身の婚約者について言及したのもそれが理由。
自分は辺境伯と繋がりがある。
自分を生かして利用したほうがいい。
そう言外に、マーリスは私に訴えているのだ。
この状況で、そんな手を使うと思っていなかったからこそ、私は思わず目を見開く。
正直私は、マーリスのことを自尊心が膨れ上がっただけの馬鹿貴族だと思っていた。
だからこそ、想定外のマーリスの優秀さに驚きを覚える。
しかし直ぐに私は、サラリアの婚約者であったならば驚くようなことではないと考えを変えた。
あのサラリアのことだ。
婚約者を愚かなままで置いておくわけがない。
何せサラリアは、本気で婚約者の夢を叶えようとしていたのだから。
……そう考えれば、この程度の能力であることが信じられなくなり、私は嘆息を漏らしそうになる。
今までと違う反応をとったせいか、マーリスの顔には先程とは違う希望の光が浮かんでいる。
それは、私が自分の提案を受けると疑ってもいない表情で、それにあきれを覚えながら私は口を開いた。
「端的に言わせてもらう。──貴様の償いなど求めていない」
「………え?」
次の瞬間、言外にお前に利用価値はないと告げられたマーリスは、惚けた声を上げることになった……
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