表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

CODE9:0524襲撃作戦

 俺は今、大宮支部の作戦会議室に居る。周りには俺と東條を含めて8名の人数がでかいテーブルの上にこの大宮市を含む県が載っているという状況だ。そんな中、郷間は紙コップを片手に熱々の珈琲を味わっている。 

「郷間、もう時間だから始めてくれないか?」

              

「おぅ、そうだったな!じゃあ始めるか!」

                

「その前に待っていただけませんか?」 

 郷間の言葉を遮る男は俺を強く睨みつけて      

「お前何様かしらないが、ここは組織だ。上の者には敬称を付けろ!良いか!」  

 面倒な奴だな。こういう奴は大体頭が無駄に硬いし、喧嘩を売ったらまたさらに厄介な事になる。ここは穏便に済ませるのが吉か……俺はその場しのぎで謝罪した。相手はまだ不服そうだったが、郷間が止めたためそれ以上のことは起きなかった。それを横で見かねていた東條が俺の左の耳元で囁いてきた。     

「如月、いい加減に慎んでちょうだい。この場で喧嘩なんかしてたら今回の現場で確実にミスを引き起こすわよ」 

 コイツらと合同捜査か、うまくやれる気がしないな。本当に……作戦会議室が緊迫に包まれていた時、一人の男が入室してきた。男は天井を向いて軽くあくびをした後、自分のテリトリーと思われる席に着席した。  

「あれ?どうしたの~なんか緊迫な雰囲気になってんじゃん、ウケる~。ん?そこにいる青髪君は見たことないね~もしかして新入りの如月蓮かな?」     

 橙色を施した雑な髪型をしている男は俺に向かって聞いてきた。俺は正直に答え、男の名前を聞いた。男はニコッとはにかみながら名前と別に聞きたくもない趣味を答えた。男の名前は春日井一樹……趣味はネットのまとめサイトを閲覧and書き込み。典型的な引きこもりであるが、何故コイツはこんな凄い組織に雇われているんだろうか?不思議でならない。       

「春日井は俺達組織の重要な役割を担っているんだ」

           

「重要な役割?」         


「まぁ、幾分性格や前歴があれすぎて引くと思うが笑って許してやってくれ。じゃあ頼むぞ、春日井ナビ」  

 春日井は鞄から自前と思われるパソコンを机に取り出し、マウスをカチカチと押しだした。  

「んじゃあ、始めるよ。色々と言いたいことがあるからまずはそこのモニターさんを確認してくれ」     

 画面上に広がるモニターにはこの前襲ってきた男の写真が載っていた。俺を含め組織の者も釘付けて注視していた。 

「コイツをもっと鮮明にすると……こうなるわけだが。俺と顔付きがよく似てるね~。相手の詳細を色々と調べた結果、わかったのは異能と個人情報だった」          

「男の名は?」 

 さっき、俺に喧嘩を売ってきた男が早く答えろと言わんばかりの表情で春日井に噛みついてきた。春日井はそんな視線を気にすることなくべらべらと喋っていく。   「日向勇、年齢は俺よりまだまだお若い18歳。卒業式の前日に他校と暴力沙汰を起こし停学を喰らった後、中退。住所はここから離れた南篠市にお住まいだな。まぁ、多分ここには住んでないと思うから詳細は省かせてもらうが」 たったの一週間で情報を掴んだのか。早い奴だな……  

「相手の情報は取れたな、良くやった春日井。それで本題の居場所なんだが」  

 居場所……そこさえわかれば一気に複数の人数を叩けるし、かなり好都合なのだがそんなに簡単にわかるのか? 「青髪君、心配はご無用だぜ。なんたって俺は最高のハッカーだからな。この大宮県の全ての情報はあらかた持っていると自負しても良い!」        

 コイツ……犯罪者のような奴だな。だがコイツの腕はかなり凄いし、今は黙って話を聞いた方が良さそうだな。  「では皆さん!お待ちかねの居場所についてだ!一回しか告げないからよく聞いておけよ!」    

 モニターの画面が切り替わり場所の詳細が映し出される。地図上には大宮市から離れたある海岸近くにある倉庫が映し出された。

「ここに標的が居ると俺は断言する。なぜなら俺は東ちゃんからもらった画像を下に他のカメラから一つ一つ丁寧に辿らせてもらったからな!勿論侵入ルートもある程度、確保しているぜ!ということで後は郷間警部の判断にお任せする」  

 侵入ルートがここまで緻密に出来上がっているとは、コイツただ者じゃないな。敵に回したらとんでもなく厄介になりそうだ。

「ご苦労様、後で夕食奢ってやるよ。それじゃあ皆、今から俺が各自に指示を与えるからよく聞けよ」   

 郷間は皆を注目させ、命令を出していった。基本的には二人一組となって囲んで捕らえるという方法になった。俺は当然の如く東條とペアになった。    

「こんな状況じゃ、どう考えてもペアは東條だな。まぁ、悪くはないが」            


「そうね……期待しているわ」            


「じゃあ10分間の休憩が終わった後、駐車場に集合。その後急いで現場から離れた所定の位置に急行してくれ……車の運転はお前に任せるぞ。北神」            

「了解!」            


「これよりは作戦名……0524襲撃作戦と名付ける!では解散!」     

 メンバーが次々と部屋を後にした。俺も東條が出たので部屋を出ようと思ったが春日井に呼び止められたので仕方なく振り返ることにした。        

「青髪君、先輩の言うことはちゃんと聞きなよ。そ・れ・と」

 春日井は席から立ち上がり、俺に向かってあらぬことを口にした。

「恋愛相談なら遠慮なく言ってくれよ。東ちゃんとの仲は持ってやるから」  

 どう見たらそういう判断になるんだ?俺が奴に恋?アホなのかこいつは…… 

「俺にその気はありません。では、失礼します」    

 俺は急いで部屋を出て、エレベーターで地下の階を押して指定の駐車場に向かい、皆が乗っている車に駆け込む。北神は人数を確認した後、エンジンを入れ緩やかに加速した。メンバーは殆ど無口状態なのであまりにも重ぐるしい……俺はたまたま窓側の席に座れたのでぼんやりと外を眺めることにした。やはり土曜日だからか人通りと車の交通量が多い気がした。そんな風にぼやっとしていた時に俺の上着のポケットからスマホのアラームが鳴り響いた。相手は郷間……俺はメンバーに一応の断りを入れ通話のボタンを入力した。   

「何の用だ?今の状況を理解しているのか?」

               

「いや、ごめんね。こんな空気が読めていない状況で。君にはちょっと謝りたかったからさ……だから電話したんだ」

     

「用件を言ってくれ」                


「せっかくの休みだというのに申し訳ない。本来なら君は警護係だからしっかり身体を休んで貰って、俺達組織が率先して危険なことをやるべきなのに」            

「別に構わない。それよりも葉月は本当に大丈夫なのか?急に家に奇襲されたりしないのか?」  

 俺の懸念の言葉に郷間は笑って返した。どうやら話によると葉月の家の周りは異能が出せないようになっているらしくさらに監視カメラが所狭しと監視しているため、侵入するのは至難の技らしい。俺の心配は無用だという訳だ。「大丈夫。今はただ目の前の事に集合してくれ。これが無事に首謀者が辿り着く一手になれば君の任は解かれるはずだ。そうすればある程度、自由な生活が送れる」                

「あぁ……そうなることを俺は祈る。じゃあ切るぞ」 

 通話終了ボタンを押して、再び景色を見る。景色は先ほど多かった人通りは嘘のように無くなり、人通りと車が一切無い道に差し掛かった。どうやら、もうそろそろ現場に到着するみたいだ。車は指定の位置であろう場所に止まった。座席に座っているメンバーは一人ずつ外へと降りていく。俺はその姿を目で確認して外へと降りた。メンバーはサブリーダーである運転手の北神を囲んで作戦の確認等を行っていた。俺はゆっくりと近づき後ろから話を聞くことにした。    

「全員、集まったな。今回の作戦は郷間警部の指示通り、二人一組で目的地を制圧する。なるべく抹殺は無しで逮捕を心掛けるように!特にそこの後ろに居る新人は俺達の命令があれば素早く動くように心掛けろ!良いな!?」 

 北神は後ろに居る俺を冷たい視線で忠告してきた。俺はコイツのことが嫌いになってきたので、黙って頷くことにした。北神はその様子に何か言いたげな表情をしていたが任務が任務な為か、すぐに表情を切り替えた。

「行動を開始する。なお、ここからの通信は必要最低限で留めるように。では、見当を祈る」  

 作戦開始の合図の下、それぞれメンバーが動きだした。俺は自分達のルートを確認したかったので東條に近づいた。  

「東條、このA地点の場所は倉庫の前方か?随分と俺らは突撃係なんだな」   

 普通こういう大事な地点は一応リーダーである北神がやるべきだと思うんだがな……      

「この地点から察するに私達いやあなたは郷間警部からかなりの信用を置かれているのよ。まぁ、あなたは実際のところ、かなり戦闘のセンスがあるから仕方ないわね……ちょっとうらやましいわ」

          

「どうかな?俺はこんな異能、うざくて仕方ないんだが」

          

「どうして?私は凄く羨ましいわ。そんな異能がもし私の手の中にあれば、私は世界の平和の為に全力を尽くすわ」

 大層な野望を持っているな。俺にはそんな野望が無いから、正直羨ましい。 

「そうか……もし、俺が本当にあげれるとしたら、お前にあげたいよ。長話し過ぎたな……そろそろ行くぞ」

              

「えぇ、A地点に行きましょう。所定位置のAはこっちよ。付いてきて」   

 俺は話をやめ、黙ってひたすら東條に付いていくことにした。A地点はこの人通りの少ない路地から右手に回り、突き当たりを左に進む。そして大きな目印である金網のフェンスを軽くジャンプで乗り越え、貨物の影に隠れながら奥へと進んでいく。辺りには本当に誰もいないのでひょっとしたら、敵が隠れて潜んでいるのではと内心緊張していたがそれは杞憂だったようだ。そんな思いをしながら数m歩くと目的地である倉庫が見えてきた。俺達はそれをしっかりと目で確認し、A地点へと配置につく。合図が始まればいよいよ、突入開始だ……俺はひとまずの深呼吸をして体調を軽く整える。東條はどうやらグローブを軽くはめ直しているみたいだ。  

「今日でなるべく終わらせたいな……葉月の為にも」

            

「そうね。私達は今日、終わらせなければいけないわ。葉月さんの為にもそして――」       

 直後、目的地である倉庫の方から大きな爆発音と共に扉が吹っ飛んでいった。人の影が姿を現す。どうやらすでに……何かしらの方法でこちらの行動が読まれていたみたいだ。 

「なんだ、今の爆発音は!?A班、大丈夫か?」  

 北神の声がこちらの耳に大きく届いた。俺は影をはっきりと視認して詳しく答えた。      

「こちらは大丈夫です。ただ、どうやら待ち伏せされていたみたいです。影の詳細は男だと断定しました。男の異能は電撃です……こちらに支援は出来ますか?」           

「わかった今向かう!……駄目だ!こちら側にもA地点と同じように敵に待ち伏せされていた!くそっ仕方ない!悪いが、そこに居る敵を頼む!我々はコイツを制圧した後に首謀者の元に急いで向かう!逃げられる可能性がかなり高いからな!悪いが、もう切るぞ!」

 通信は北神の方から一方的に切られてしまった。俺は向かってくる男に注視して、側に居る東條に簡単な指示を出す。

「東條、俺が単身突撃で囮になる……隙が出来たら必ず指示を出すからその時に狙って相手を突け。勿論出来るよな?」

         

「あなた、正気なの!?そんなことでも万が一作戦が失敗したら死ぬのよ!?わかって言っているの!?」    

 東條が怒鳴り散らしたと同時に相手は俺らに向かって電撃を放ってきた。俺達はその攻撃にすぐさま回避行動に移る。

「くっ、やりやがる……とにかくさっきの指示の件は頼んだぞ」

 東條にそう言って、俺は相手の目の前に近づいた。相手はその行動に一瞬眉を潜めるが、すぐに表情を戻し自己紹介をし始めた。

「俺の名は雷門龍。お前の名前は?」          

「俺は如月蓮。とある事情で今はお前らの首謀者を確保する仕事とお前らで言うTGを守護する任務を行っている」

           

「そうか、わかった。じゃあ早速で悪いんだがマスターの為にも死んでくれやぁぁぁ!」      

 俺は赤い目を発動して、裏ポケットに幾つか入れておいたペンを取り出し、鋭い槍に変えた。俺はそれを右手に持ち替え突撃した。  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ