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CODE7:思い出作り

「こっちは準備完了よ。本当に良く見えるわ……ところで葉月さんはいつ来るのかしら?」    

 東條からの無線通信を聞いて、俺は知るかと心の中で返事をして再び辺りを見渡す。カップルがやたらと目立つな……まぁ、休みだから仕方ないか。俺の服装は下は青ジーパン、上はシンプルな白シャツに薄い黒上着を羽織っている。時間は11時からで5月17日、場所は交通機関が豊かな大宮駅……間違ってはいない筈だ。そんな感じでしばらく待っていると奥の方から葉月が手を振って来たので、こちらも手を振って答えた。 

「すいません、ちょっと遅れました!」

 葉月の服装は凄くオシャレ感があり、肌色のシャツにピンクのカーディガンで羽織っていて首元に小さな星のアクセサリーを吊している。他人の視線で見てもとにかく目立つな。この子は……   

「いや、俺が少し早く来すぎただけだ。気にするな……それより今からどうするんだ?どこに行くのか聞いていないが」 

 葉月はその言葉を聞いて、自前の手提げカバンからチケットらしき物を取り出した。     

「何だ、それは?」         


「大宮パークランドのチケットです。今日はその……色々と迷惑をかけたのでお礼をしたかったのですが……嫌でしたか?」

 嫌な訳ない。葉月みたいな内面外面に問わず可愛い子に誘われたら嬉しくないはずが無いだろう。実際、俺だって結構嬉しい。だがこの子は警護対象だ……何か特別な異能を持っているはず。俺はその部分において要らない警戒をしてしまう。       

「いや、むしろ歓迎だ。早く行こう」         


「はい!行きましょう!」      

 ということで俺達二人は大宮パークランドに向かうことにした。大宮パークランドは大宮駅からバスで20分離れた家族やカップルに大人気の遊び場だ。そこでは恐怖のジェットコースターやきらびやかなメリーゴーランドなどのアトラクションがある。  

「如月さん、着きましたよ」             


「着いたな。今日は中々混んでいるな」         

「土曜日ですからね。では如月さん行きましょう!」 

 葉月はゲートの前で受付員にチケット二枚を手渡しで渡した。そしてそのチケットを目で確認した受付員は俺達を快く通してくれた。俺がゲートを通ろうとした時、耳にはめた通信機器から東條の声が聞こえた。   

「今日は凄い混みようだわ。葉月さんが迷子になったらマズいからしっかりと守ってちょうだい。私も確認はするけど」 

 俺は葉月に聞こえないように了解と口にして通信を切る。今日は事件が無いように祈りたいな。こういう日は純粋に楽しみたい……

「如月さん、最初どこ行きますか?私的には迫力満点のジェットコースターで楽しみたいのですが」 

 ジェットコースターって、あの高さ何mもあって急なSカーブがある奴か。駄目だ……寒気がする。最初に乗ったら失神してしまいそうだ。

「葉月、別のにしよう。最初はそうだな……定番のお化け屋敷に行くか」    

 葉月の表情が固まっている気がするのだが、もしかしてまずかったか?そんな時、東條から通信の通信が入ってきた。

「如月、最初にそこはどうかと思うわよ。しかも葉月さん苦手みたいだし……こういうのは最初、メリーゴーランドとかコーヒーカップとかそういうのに行かないと駄目よ」 

 東條の言い分はもっともだな……よし、こうなったら。俺は予め受付員から貰っておいたパンフレットを開き、そのアトラクションを葉月に見せた。葉月は喜んで承諾してくれた。        

「如月さん、中々面白そうなアトラクションを見つけましたね!」

              

「こういう車系の乗り物は遊びがいがあるからな」   

 ゴーゴーカー!とかいう車系のアトラクションは子供でも大人でも楽しく遊べる。コースはサーキット状になっており制限時間が来るまで何周しても遊べる、やりがいのあるアトラクションだ。待つのにそれほどかからず俺達二人は制限時間が来るまで全力で遊んだ。その後、各アトラクションを体験して楽しんだがやっぱり葉月はジェットコースターを諦めらめなかったらしく、しつこく俺に誘ってきた。最初の内はごまかしていたが、次第に無理だと悟り泣く泣く乗ることになった。順番が回り乗った瞬間、謎の緊張感が俺に襲いかかってきた。   

「無事に帰れるだろうか?」              

「大丈夫ですよ!頂上に着いた途端に楽しくなりますから!」

 楽しくなるのか?俺には到底分からないぞ……モヤモヤした気持ちで待機しているとアナウンスから発車します!という声が聞こえた瞬間、ジェットコースターが動き出した。ガタガタと頂上に向かっていくジェットコースターに俺は少々身震いをする。そして頂上に着いてしまった…… 「来ますよ!」  

 ジェットコースターは突如急降下し、無茶苦茶な速度で様々なコースを通過していく。S字急カーブに一周回転……我慢してこらえないとキツい。俺はジェットコースターに向いていないと自らを悟った時、乗り場に到着した。無事帰って来られたようだ。

「如月さん、辛そうですけど大丈夫ですか?」

               

「大丈夫だ。まだ生きている」     

 自分の生存を無事に確認した俺は、葉月と一緒にショップに行くことにした。もうそろそろ閉園時間だから、思い出記念のような物を買おうと思ったからだ。ショップには大宮パークランドのマスコットキャラ「リント君」が様々な形状で店頭に並んでいる。ちなみにリントの身体は薄い黄緑色を帯びていて、中央に葉っぱらしき物がデザインされており、顔面は丸っぽく真ん丸の目をしている……子供からは大人気らしいが、俺には良く分からない。他にもクッキーなどの食べ物が充実しているが……そんな感じで商品を一つ一つ調べていた時に東條からの通信が聞こえた。

「迷っているならアクセサリー類にしなさい。その方が喜ぶわよ」

 アクセサリーか……確かにこういった小さな物の方が良いかもしれないな。俺は「リント君」のキーホルダーと可愛らしいペンを手に取り、レジでお会計を済ませた。あとは葉月に渡すだけだな……俺は店で商品を見つめている葉月を外に連れ出し、購入したキーホルダーを手で渡すことにした。 

「今日は連れてきてくれてありがとう。これはささやかな物だが受け取ってくれ」                 

「えぇ!?そんなとんでもないです!……でも受け取っておきますね。如月さんのご厚意ですし!」 

 葉月はキーホルダーを受け取った後、見てて嬉しそうな表情を浮かべていた。俺はその表情に安堵としながらも閉園時間の音声が鳴っているため、すぐに帰ることにした。  

「葉月、閉園時間が来たしそろそろ帰るぞ」

               

「如月さん、私も渡したい物があるのでちょっと待って下さい」

 葉月はカバンを開け、何かを取り出した。それは布切れような物と食べ物のような感じだった。

「これ、返すの遅れてしまいましたのでここでお返しします!それとそれだけでは、悪いので私が作ったクッキーです!味は……まあまあだと思います!」   

 ハンカチか……葉月に言われるまで忘れていたな。しかも、クッキーまであるとは。     

「ありがとう。このクッキーは味わって食べることにする」

         

「はい!」     

 最初、大宮パークランドなんて楽しめるのか?とか思っていたがそんなことはなかったな。むしろかなり楽しめた……葉月と一緒に遊んだからだろうか?今でも、それは分からないが。     

「如月……暗くて見えづらいとは思うが如月から見て4時の方向に建物にひっそりと様子を伺っている怪しい奴が居る」 

 俺は葉月を後ろで守りつつ、バレないように視線を4時方向に見つめる。  

「居た……あそこか」                 


「如月さん、まさか」                


「絶対に動くなよ」 

 俺は相手に見えないように腕をこっそりと動かし、狙いを済ませた……あとは

「東條、今から俺が奴に攻撃を当てる。その時に奴が出て来たらお前は奴を痛めつけるようにしろ」         

「痛めつける?そこは逮捕しなければならないでしょ」

          

「逮捕しても良いが、そんなことをやっても本拠地の居場所が掴めない……だから不本意だとは思うんだが今は従ってくれ。それと」

 もしもの時の為に俺はもう一つの案を東條に伝えた。普通なら撮れにくいとは思うが東條の持つ専用のスマホならいける筈だ。東條はその言葉に疑問を持たず、すぐに承諾をしてくれた。どうやら東條もこの手を使う予定だったようだ。     

「タイミングは適当に任せるわ」   

 東條から許可は貰った。俺は狙いをすまし、建物の影に隠れている相手にレーザーを照射した。撃ち放ったレーザーは地面に直撃し相手は横に回避した。距離がありすぎてラグが生じたみたいだな。だが動きはある程度止まった……   

「こっそり潜んで様子を伺っていたのに……しかも、お前はなんでその異能を保有している?それは時崎が持っていた筈だぞ!」

 時崎のことを知っているのか?だとすればコイツはリバースの一員ということで決まりだな…… 

「何のことだかさっぱりだな。それよりもこの場から退いて貰おうか。今の状況だとお前の相手は難しい」

              

「黙りな!今日、ここでTGは確保させて貰う!絶好のチャンスを逃してたまるかよ」      

 相手はその場で何か念じているような動きをし始めた。俺はすかさずレーザーを照射させる動きを構えるが辺りに集まって宙に浮いてる物に驚いてしまった。

「サイコキネシスか。この異能だと力不足だな……」

            

「ハハッ、じゃあな!」        

 宙に舞う大量のゴミ箱がこちらに向かってきた。普通ならここでスクラップにされている所だがそうはならない……何故なら遠くに東條が待機しているから。

「やれ、東條!」  

 合図をした瞬間、遠くの建物の影から炎の明かりが見えたと同時に一気に大量のゴミ箱が排除された。ふぅ、助かった。

「なっ!伏兵か!どこにいる!」          


「ここにいる!」  

 東條は一気に突っ込み、相手に殴り掛かった。相手は受け身の体勢で防御をして攻撃を塞いだが、少々苦しんでみたいだ。東條はその表情を見て、すかさず右手のグローブから炎を放射した。放射した炎は相手の右手に直撃した。かなり悶えているな……  

「くそ!分が悪すぎるな……今日はこれくらいにしてやるよ!じゃあな!」   

 相手は目くらましの為に煙玉を転がし、逃げていった……葉月を守れたみたいだ。      

「東條さん、居たんですね」             


「えぇ、その、申し訳ないとは思っているわ。でも流石にあなたと如月だけで居させるのは危険だと判断したから……」 

 気まずい空間が流れている。俺はこの流れを変えるために東條に言った。  

「東條、画像は撮ったか?」            


「言われなくとも撮っているわ。これよ」

 こんな真っ暗なのに良く鮮明に映っているな。これなら色々と有利そうだ。 

「これなら後日突き止められるな。東條、これを今日中に郷田に渡せ。緊急案件だからすぐに調査される筈だ」 

 東條はその言葉に頷いた後、すぐに帰っていった。それと同時に騒ぎに受付の人が駆けつけて来た。俺は何とかその場しのぎのごまかしをして葉月を連れて急いで撤退した。翌日、現場が酷いことになっているとは思うが……まぁ、大丈夫だろう。大丈夫だと信じたい。

「かなり遅くなってしまったな。すまない」

               

「如月さんは悪くないですよ。気にしないで下さい」

 駄目だ。今の葉月はかなり落ち込んでいる。下手に言葉は入れない方が良さそうだな。俺は葉月を自宅まで送り込み、確認した後自分の家に帰宅することにした。その時、スマホから着信が掛かってきた……姉さんか。

「姉さん、もう少しで帰るよ。だから晩飯はそうだな……サランラップして明日の為に寝といてくれ」

               

「蓮が襲われたら発狂しちゃいそうだから、今すぐ車で迎え行くわ。どこなの?教えなさい?」          

「すぐに帰る。じゃあ」       

 電話を切り、マナーモードにして真っ直ぐ帰ることにした。 

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