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CODE6:エスコート

 時間は午前7時を指していた。かなり眠い……何故こんな朝早い時間に歩かされているんだ?全く面倒すぎる。 

「その寝ぼけきった顔、いい加減に取り除いてくれるかしら?こっちまで眠たくなんだけど」    

 なんで俺が眠たい顔をしたら怒られるんだ?全く良い迷惑だ。

「本当に葉月はこんな朝早い時間に出るのか?確証はあるのか?」

              

「警護対象の身元はある程度調べているわ……月曜から金曜は確実に7時10分に玄関を出る。確実よ」

 随分と早起きなんだな。俺なら後20分は余裕で寝ている。欠伸をしながら歩ていくと、ようやくお目当てである葉月の自宅に着いた。とりあえず葉月が玄関から出るまで待つことにするか……  

「あと五分か。くそっ、昨日のこともあって凄い眠い。ちょっと寝させてくれ」         


「寝たら、あなたのその大事な髪を……燃やすわよ?」  

 おぞましいオーラを感じ取り、俺は急いで両手を頬にたたき目を強制的に覚まさせた。危ない危ない、もう少しで俺の大事な髪の毛が燃やされる所だった。その時玄関から騒がしい音が聞こえたため、俺はピクリと反応し玄関口に立った。         

「あれ、如月さん?なんでこんな所に居るんですか?もしかして待ち伏せ?」          


「待ち伏せじゃないな。まぁ、そのなんだ……今日からそこに突っ立っているだけの東條と俺で葉月をエスコートすることになった」

           

「東條愛華です。今日から宜しくお願いします!」   

 ぐはっ、右足が強烈に痛い!よくも踏みつけてくれたな!俺は仕返しに東條の左足を踏みつけようとしたが咄嗟に回避され、仕返しするかとが叶わなかった……いつかは仕返しさせてもらう。俺と東條は互いに睨み合い葉月をエスコートしながら学校まで目指すこととなった。そして歩いている内に朝日はすっかりと登りきり容赦ない太陽が俺の身体に直撃してきた。俺はそんな暑さに耐えられず上着を脱ぎ捨て、手で仰ぎ始めた。    

「まだ5月だと言うのに最悪だな」           

「今日の水曜日から日曜日まではかなり天気が良いみたいだわ。暑さにバテないように注意しなさい」       くっ、日曜日まで快晴か。猛暑は好きでは無いのだが……さっさと雨に降って貰わないと困るな。俺が坂道で暑さにバテていると、葉月は俺に対し下敷きを仰ぎ始めた。   

「如月さん、大丈夫ですか?とりあえずこれで仰いでおきますね」

 あ~、涼しい……って何やっているんだ俺は。後輩にこんなことさせていたら先輩としてのメンツが丸つぶれだ。それにボディーガードである俺が警護対象の葉月に仰がれるのはいくら何でも間抜け過ぎだろ。     

「葉月、気持ちだけ受け取っておく。だからその下敷きを早く鞄の中に仕舞ってくれ」         


「え?でも如月さん、凄く暑そうですよ?」

                

「大丈夫だ。これくらいの暑さ、凌いでみせる」

              

「はぁ、そんな調子で大丈夫かしら?これから心配だわ」 東條の余計な一言をガン無視し、葉月を守りながらひたすら学校に向かうことにした。すると葉月は俺の顔を伺いながら唐突に話を切り出してきた。    

「如月さん、今週の土曜日空いていませんか?」     

 土曜日か、確かその日は特に予定が無かった筈だ。それにしても何で俺を誘うんだ?……あっ、そっか。親睦を深めるためか

「その日は大丈夫だ。それにしても、葉月何かあったのか?」

                 

「えっと、ちょっと一緒にその……」  

 何か言いづらいのか?       

「まぁ、いいや。土曜日、どこに集合するんだ?」

             

「その前にメアド交換しましょう!そうした方が今後の為にも良いと思うので!」         

 葉月の迫真の表情に俺は少々戸惑いつつも、メアドを交換することにした。女の子のメアドなんてお姉さんだけだったから凄く新鮮な気分だ。互いのメアドが交換出来た時、何故か葉月は舞い上がっていた……そんなに嬉しいのか?そしてその光景を横目で見ていた東條も俺にメアドの交換を要求してきた。俺はコイツてあまり関わりたくも無いしメアドもすでに変更していので断固拒否しようとしたが東條が強引に俺のスマホを取ったため、それは願わなかった。

「全く、メアドを変更したのなら事前にメールで書いて下さい。まぁ、あなたが関わりたくないという精神でメアドを変えたと言うことは気づいてはいましたが」  

 俺の思想が破られたな……東條は用を済ませると、すぐに俺にスマホを渡して歩き始めた。そんな感じでぐだぐだと歩いていいて、ふとスマホの時計を見たら、登校時間が差し迫っていることが判明した。

「しくった。皆、急ぐぞ!」              

「わかっているわ」         


「はい!」    

 俺達は喋るのを止めて急ぎ足で学校に向かい正門をくぐり抜けた。道中やたらと俺を睨み付ける男性の視線がしたような気がしたが……気のせいだと願おう。そして葉月と別れて東條と一緒に教室に入った。     

「間に合ったな」          


「随分と歩かされたわ」       

 俺は東條と別れて自分の席に着席し、準備を始める。さて……これから授業か。ため息をついた瞬間、チャイムが鳴り植木が着たので黙って聞くことにした。それから植木の朝礼が終わり、三時限を難なくこなす。そして四時限の時に数学の先生が東條に当てた。その時俺は出来るのか?と少々舐めていたが東條は黒板にスラスラと難問を解いていった。清々しい程に優秀だな……皆が感嘆している時に不覚にもそう思ってしまった。来月にテストがあるから東條から教わった方が良いかもな……そう深々と考えていた時、待望のチャイムが鳴った。

 その音を聞いた先生は、予習復習をしっかりやれとお決まりの言葉を残し、教室を後にした……先生が出て行った瞬間、クラスメートは各自別々に昼食を取り始めた。俺はパンを買うため席を立ち食堂に向かうことにした。そんな時に東條から強い視線を感じた……俺は早足で向かおうとしたが、東條に捕まってしまった。全く何の用なんだ?  「どうした?食べる相手が居ないのか?あぁ……そういやお前、結構昼食の時孤立していたよな。俺が言うべきことじゃないが」

              

「確かにあなたが言うべきことではありませんが……ある意味、的を得ていますね。今日からは如月と食事をすることにします。色々と気兼ねなく、楽な体勢でお話出来るので……それと監視しないといけないので」  

 俺はやれやれと呆れそうになったが東條が真顔で迫ってきたので、仕方なく連れて行くことにした。東條は俺からつかず離れずの距離で俺について行っている。食堂は一階の端っこに建っている……そのため、まずは俺が学んでいる三階の教室から一階にテクテクと降りて、一階の扉を開きそこから食堂まで歩いていくしかない。その間歩いても5分……走っても2分掛かってしまう。だから毎回、食堂は混雑してしまう。今日は運良くあの焼きそばパンが買えると良いのだが……と淡い希望を持ち食堂に入ったが、やはり食堂は焼きそばパンの取り合いで大変混雑していた。

「やっぱり今日も無理だったか。仕方ない焼きそばパンは諦めて別のパンにするか」       

 焼きそばパンの数は40個あまり……対してそこに集まる生徒数は50程度。どう足掻いても無理だ。俺はすぐに頭を切り替え、別のパンにしようとしたのだが隣に居る東條は諦めてはいない様子だ。

「ここの焼きそばパン、絶品なのよね?」

                 

「……?まぁ、絶品だな。二年通いつめているが20回程度しか買えなかったし」        

 俺がそう言うと東條は、俺に対し財布を貸して欲しいとお願いしてきた。あんまり渡したくはなかったが凄く真剣な眼差しで見つめてきたので、渡すことにした。やれやれ何をするつもりなんだ? 

「あなたは勿論、あのパンで良いのよね?」

               

「あぁ、それで良いけど……!?まさか、お前!」    

 東條は後ろに下がりった後、全速力で走り目の前に居るたくさんの生徒を華麗に飛び越えて通り抜き、レジの前居るお婆さんに所に着地した。東條が事前にレジの前に居る生徒に注意していたから良かったものの……コイツやばすぎだろう。       

「お婆さま、焼きそばパンを二つ下さい」

                 

「…………あぁ、はい!ただいま持ってきます!」 

 現場の以上な凍りつきに俺は耐えられなくなりこっそりと抜けることにした。こんな所に居たら、俺は皆に異様な目で見つめられてしまう。全くとんでもないことをしてくれたな、東條。俺はとりあえず焼きそばパンを買ってくれた東條を外で待つことにした。そして数分の内に東條は外に出てきた。        

「はい、これ。食べたかったんでしょう?」

               

「あぁ、凄く食べたかったが……ああいうことはあまりするなよ。お前の素性がバレる可能性がある」 

 しまった!みたいな顔をしているが、コイツ……案外天然なのか?何やっているんだか。俺は東條から焼きそばパンを受け取り歩いて近くの自動販売機で自分の飲みたいジュースを購入し、再度小銭を入れて東條に選ばせることにした。 

「お前の好みが分からんから、さっさと自分の好きな物を選んでくれ」             


「あなた……気前が良いわね。本当に良いの?」

              

「別に大したことじゃないだろ。今回の件は焼きそばパンを買ってくれたお礼として受け取ってくれ」    

 そう言うと東條は自動販売機の方に振り返り、自分の好きなジュースを選んでボタンを押した。出てきたのは女の子らしいペットボトル型の紅茶だった。  

「随分と女の子らしい物を取るんだな」        


「私、基本ジュースは紅茶しか飲まないから……」    

 その後、適当なベンチに座り待望の焼きそばパンを食べた。味はやはり生徒から大人気なだけあり、かなり旨かった。

「放課後は葉月に会いに行くか」            

「私も行きましょう。今日から守りを固めないといけませんので……」   

 守りを固めるか。ん?だとしてもこれは良いのか……俺達が守るよりも車とかで送ってもらった方が良いのでは? 

「なぁ、今思ったんだが葉月と一緒に下校するよりも他の人に車で家まで送ってもらう方が良いんじゃないか?そっちの方が安全だし」

           

「それは前々からあったのだけど、警護対象の葉月氏は断ったのよ。どれだけ説明してもね……だからしょうがなく徒歩にさせているのよ。勿論、葉月氏を守る為に辺りに警護係を配置するという名目があるのだけれど」 

 葉月が断る理由は後々聞いておくとするか……さて、もうそろそろお昼が終わりそうだから早く教室に戻るとするか……

「東條戻るぞ、そろそろ次の時間が始まる」

               

「そうね。急ぎましょう」      

 俺と東條はベンチから立ち上がり、教室を行くことにした。次は理科だったな……最悪だ。

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