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CODE3:下調べ

 降り止まない雨にふと目覚める。時間は一時間早かったようだ。俺は気怠い身体をなんとか立たせ、高校に通う服装に着替える。そして一階へと降りていつも通り洗面所で顔を洗い、リビングに入ると姉さんが椅子に座って朝食を食べている姿が目に映った。姉さんの髪は綺麗な紫色で腰まで真っ直ぐと届いている。おまけに顔は冗談抜きで綺麗なので、本当に俺の姉なのか?と思うレベルである。そんなことを脳内で思っていると姉さんは俺の目線に気づき

「おはよう、蓮。今日は早起きだね。何かあった?」


「別に……今日はたまたま雨の雑音で目覚めただけだ」   俺はすぐに椅子にのしかかり手を合わせてから朝食を食べていった。姉さんは俺がさっき言った言葉に返事すること無く、黙々とサラダやスクランブルエッグに手を着けていった。しばらくすると、リビングのドアがまた開いた。

「おはよう凛!ってお前も起きていたのか……蓮?」

 紫髪のボサボサ頭で欠伸しながら摩訶不思議そうな目で見つめるのはやめろ。

「今日は雨の雑音で目覚めてしまっただけだ。いつもなら後一時間は寝ている」


「そうかい。まぁ本音を言うと蓮にはいつもこの時間帯に起きて欲しいんだけどな。じゃないと……俺、先生だからタメ口で喋れないし」 

 植木は正確に言うと俺の父親ではない。代わりに俺達を見守っている養父みたいなものだ。本当の母と父は仕事の関係で海外に飛び立っている。別れの際、母が前日植木に頼み込んだことにより、俺達はこの二階建ての家で暮らしていけるのだ。ちなみに植木は俺の母の弟にあたる。俺は植木の照れくさそうに言う言葉に……

「また、その内やる気が出たら早起きする」

 植木はその言葉を聞いた瞬間、「期待して待ってるよ」と言いブラックコーヒーに手を付け始めた。俺は食べ終えた料理を洗い場に出し、黙々と洗剤の付いたスポンジで洗う。その光景を見ていた姉さんが俺に

「蓮、それは私がやっておくから良いわよ」


「いや、でも姉さん。これは俺が……」


「いいから!」

 姉さんの迫真の顔に俺は諦めを悟り、歯磨きをすることにした。その後、二階の自室に行き色々支度を済ませる。

「ちょっと20分位早い気がするが……まぁいいか」

 再度、一階に降りて玄関へと向かう。するとそこには植木が居た。

「ん?今日は早めの登校をするのか?感心したぞ~」


「今日は気分が良いから早めに行こうと思っただけだ」


「そうか……そういえば蓮、この前俺が皆に出した作文で――」


「この世界についてだったか?あれには確か異能が無いと社会不適合者になると書いてたな……」         


「その事についてなんだが、何も異能が無いだけで社会不適合者になるとは思わないな……だって俺みたいな低底でも一応こうして教師でやっていけてるし。だからお前ももっと前向きに世界と対峙しろ!以上だ!」

 植木は俺に肩をポンッと乗せると急いでドアを開き、高校の方へと走り去っていった。俺はゆっくりと靴を履き、家を出た。

「待っていたわよ。如月蓮……」

 また玄関先で待ち伏せか……厄介な奴だ。というかコイツ、植木と鉢合わせしなかったのか?

「東條、まさかとは思うが植木と顔を合わせていないだろうな?見られていたら怪しまれるぞ」

「大丈夫よ、適当な電柱に隠れていたから……それより、あなた植木先生が父親だったの?意外だわ」


「違う、植木はただ俺のことを養ってくれている叔父だ。本当の両親は海外に行っている」

 東條はあまり興味が無い感じで聞いている為、俺は適当な言葉で切り上げ、本題に入ることにした。

「東條、昨日の夜にお前の上司である郷田から護衛の件を任せられた……詳細を教えろ」

 東條は口を固く閉ざしていたが、俺がしつこく問うことでようやく口を開いてくれた。内容はその名の通り護衛……護衛対象である葉月桜は俺達の通う高校一年生の後輩で、何気ない日常を送っている。だがこの高校では常日頃、葉月桜の周辺を密かに警護・監視等を行っているらしい。護衛をしている者は一部の先生や一部の生徒そして通行人が存在している。俺の知らない間でこんなことが起きていたとはな……だが、やはり一つだけわからないことがある。それは彼女の正体……ここまで護衛するということはかなり重要だということだ。なんとか調べなければ……

「はぁ、何で監視対象であるあなたがこの護衛任務参加するのかしら?郷田警部の考えに全く賛同出来ないわ」

 俺だって本当はやりたくない。だが逆らえば、研究所送りにされる危険性が高まる。だから仕方なく付き合っているんだ。逆に礼を言われたいくらいだ。

「俺を護衛に任せた理由は上層部にしっかりと聞くことだな。俺はやる事が出来たから先に行かせてもらう」

 俺は東條の愚痴を無視して、先に進むことにしたが肩を強く掴まれたため、振り返る。すると東條は手袋を見せびらかした。

「持っていきなさい。これがあれば私の異能を自由に使いこなせると思うわ」


「……貰っておこう」

 俺は手袋を東條から渡された後、自分の鞄に入れ再び高校に向かっていった。

「俺がすべき事は……」

 警護、だが俺はそんな詳細不明な子を警護するほどお人好しでは無い。だから俺はまず下調べをする。二日前にあの子に出会っていたから接点は出来ている筈だ。後はうまくその子の身内を探れば……答えが見つかる筈だ。 全く面倒事ばかり増えるな……これも全てこの左目のせいだ。くそっ、これさえなければ……俺は心の中で愚痴りながら、校門の玄関先で傘をゆっくりと閉じ靴を履き替え、自分の教室へと向かっていく。雨の音はさっき高校へ向かっていた時間帯よりもさらに強くなった。俺はそんなうざったい音を聞きながら教室へと入っていった。

「誰も居ないか……まぁこんな早い時間に来るはず無いよな」

 今日1日は葉月桜の下調べに費やすことになりそうだ……そうなると今日は休む暇が無いな。

「寝ておくか……身体を早急に休ませて下調べに全力を注ぐ」

 自分の鞄を机の横のフックに吊り、前倒れで余った30分を有効活用するため深い眠りについた。

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