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CODEFINAL:贖罪

 俺が神崎に雷撃をかますと神崎も同様に雷撃をかましてきた。俺は少々のダメージを喰らいながらも何とか立ち上がって、瞬間移動で追撃を掛ける。神崎は俺の瞬間移動を見るや否やすぐに同様の異能をやってみせ、冷酷な表情で攻撃 をしてきた。俺は自分が仕掛けた異能と神崎の仕掛けた異能が全く同一だったことに驚きの表情を隠しきれなかった。コイツ……まさか    

「その顔はようやく気付いたみたいだな。そうさ……俺は刑務所に居るアイツらから異能を奪ってぶっ殺したんだ!もうメンバーも要らないと思ってな!」   

 刑務所の事を俺は神崎の口から聞かなければ一切分からなかった。となると、やはり上層部がまた情報を隠蔽したのか…… 

「更に面倒な奴になったな、神崎」  


「うるせぇぇぇんだよ!如月!」     

 瞬間移動の蹴り合いと殴り合いを続けた俺はいよいよを持って神崎に腹這いを思いっ切り蹴られた。痛みを我慢してすぐに反撃に移行するが、神崎のすかさず放った重力の異能のおかげで俺は床に強制的に押し倒される形になってしまった。何とか脱出しようと試みるが、重力の重苦しい力が働いているせいで俺は全く動けなくなってしまった。そしてそんな俺の苦しそうな表情を心から愉快に楽しむ神崎が声を高らかに上げて叫んでいた。

「あははははっ!威勢だけに良かっただけに……はぁ~本当にがっかりだよお前には!こんなことなら夏目の時に後ろから撃っておけば良かったなぁ。まぁ、今更こんなことを言った所でどうにかなる話じゃないんだけどな!」


「あの時に……撃てば良かったのにな。神崎、お前は馬鹿だよ。どう……しようも無い程に……ぐっ!」  

 俺が口を開くと神崎は冷酷な表情で重力の異能の威力を更に強めて床に押し付けた。肉体的に限界に近付いてきた俺は右指の人差し指を使って神崎の右足を狙いを付けてからレーザーを放射した。神崎は即座に重力の異能を解いて避けようとしたが、すかさずもう一発放った俺の機転により、神崎の右足は血飛沫を上げさせダメージを喰らわすことに成功を収めた。  

「糞野郎がぁぁぁ!俺の右足に当てた所で調子に乗るなよぉぉぉ!」

 怒りに狂った表情で神崎は手のひらから白い剣を取り出して遠慮無しに振りかざしてきた。

 俺はさっきまで痛み付けられた身体を無理矢理起こして、その場でペンを取り出して槍に変えて防御の姿勢を取りつつ数回ほど神崎に向かって苦し紛れに振り回す。

 回避してから後ろに下がった神崎は白い剣を軽やかに振りこなしてから焦点を定めて意気揚々と語り始めた。  

「やっと盛り上がってきたな。そうこなくっちゃ!じゃあ、俺もそろそろ本気出すとしますか」 

 神崎の手に持っている白い剣は跡形も無く、別の物に変貌していく。それはどこかで見たことがある黒くて近寄りがたい邪悪な剣だった。

「お前なら一度は見たことあるよなぁ。この剣は本来はこういう状態だった……だが、この俺がもしコイツで戦ったら一発バレてしまう可能性があったから擬態の異能を使って錯乱させていたんだよ。便利な異能ではあるが、威力が半減する分使いにくくてしょうがなかった……だが、本性を現したこの剣はもっともっと強くなったんだよなぁぁ!」 

 神崎は一気に縦に振り下ろして斬撃を繰り出す。俺はすかさず瞬間移動で安全な場所に移動するが、その行動を睨んでいた神崎はすぐさま瞬間移動をして黒い剣で鬼の形相で降り続けていく。俺は数発ギリギリの所でかわしていきながら、手に持っている槍で神崎目掛けて振り下ろし合間にレーザーで距離を取って牽制しつつ、身体全体から放つ雷撃で神崎の身体に直撃させることに成功する……が神崎は咄嗟に空間移動で俺の後ろに回り込んできた。

 俺は一瞬の事に気を取られたために右手を切り裂かれて左手で殴り飛ばされてしまった。俺は急いで白い透明な球体を取り出して回復に勤しむが神崎はそれを逃さず手から精製した黒い鎌で俺の首に狙いをつけて横から切り裂こうとしてきた。俺は咄嗟の判断で下に潜って空間移動で後ろに避けて事なきを得たが、一歩判断を間違えていたら命が失われたかもしれなかった。

「おいおい、そんな瞬間移動ばっか使われたら当てられる攻撃も当てられないだろうがぁ……」     


「危ないからな。避けるのは当然の事だ」


「全くお前は……結構しぶといな。そろそろいい加減おねんねしている桜に見せ付ける為にも本気を出してさっさと如月が痛めつけられる姿を目に見せてやるか」 

 神崎は黒い鎌を黒い剣に変えて、俺の方に全速で駆けていき容赦なく振り下ろす。俺も槍を持っている方の右手に力を込めて神崎の方へ走っていき、同様に振り下ろす。神崎が振り下ろすと俺は防御して、それから振り下ろすと神崎が守りに入るというキリのない攻防戦を繰り広げた。終わらない戦いに無駄と感じた俺と神崎は互いに後ろに下がってレーザーの撃ち合いを試みるが神崎が咄嗟に左手を振り下ろして強烈な風の異能のせいで俺は無し崩し的に壁に押し倒される形となってしまった。

 俺は直ぐに壁から離れて体勢を整えようとしたが、その一瞬を突かれてまたしても重力の異能で床に思いっ切り押し倒された。俺は再度右手を使って神崎に狙いを定めてレーザーを撃とうとするが、神崎に左足で強く踏まれた事によりその行為は完膚なきまでに封じられる羽目になった。

 その後肉体的にボロボロになった俺は神崎に無理矢理起こされ、鉄の手錠に張り付けられている葉月の近くに吹き飛ばされた。その時、俺の身体は悲鳴に鳴り響き限界を感じていた。神崎は意気揚々と笑いながら、葉月の口についてるマスクを外して適当な床に投げつける。

「桜、起きるんだ」 

 神崎が葉月の耳元に囁いて、仰向けになっている俺の所に近づくと葉月は鉄の手錠に力を込めて神崎に叫んだ。 

「神崎!如月さんに何でそんな酷い事をするんですか!今すぐ止めて下さい!」 

 葉月の悲鳴を嬉しそうな表情で聞く神崎は聞く耳を一切持たずに仰向けになっている俺の身体の上に乗って、手や足で俺の身体のあちこちの部分を全力で殴りを繰り返した。

 その間にも葉月の悲鳴が止まらなかったが神崎は止めることなく、続けて暴行をした。俺は抗おうにもさっきの重力のせいで身体が自由に動けないせいでただただやられるしかなかった。

 そして数分間暴行をして精神的に落ち着いた神崎は手を止めて葉月の方に近づき、葉月の正面に向いて語り始めた。

「さぁ~桜。君のことを“一応”守っていた如月とか糞野郎はその場で倒れて込んでいるぞ……本当に残念だったな。最後の希望すら失って」        


「やめて……やめてぇぇ!!」  

 直後、葉月の身体から謎の光が辺りを眩しく照らした。神崎は一瞬だけ、目を閉じるがすぐさま両手で葉月の両腕を力強く掴んで無理矢理に封じ込めた。

「ようやく真の力が解放されたか……この時を待っていたんだよ俺は。桜いよいよだ。俺はこの右目を使って真の力を解放したお前の異能を取り込む!!」

 神崎は左目に込められた青眼を使って、桜の異能を無理矢理に取り込む……その時の桜はとても苦しそうな表情をしながら徹底的に抵抗を図ろうとしていた。

 俺は神崎に痛めつけられた身体を無理矢理にでも起こして前へ前へと床を這いずりながら進んでいくが取り込まれそうになる葉月を見てみると、もはや神崎に取り込まれるのは時間の問題となっていた。

 目の前の視界がぼやけてきた俺はそれでも前へ進むと試みるが遂に身体は限界に達して倒れてしまった……くそっ。

 俺は神崎を倒せず挙げ句の果てに葉月の異能を取り込まれるなんて……何て愚かな奴なんだ。真っ暗闇で自分自身を罵っていると向こうの方から微かに葉月の声が聞こえてきた。 

「何だ?この声は葉月か……あっちから声がする。行ってみるか」

 俺は暗闇の中で足を動かして声のする方向へとしばらく歩んでいると急に辺りの視界が明るくなり、そこには一人の少女である葉月が立っていた。葉月は俺の姿を確認した後、真面目な表情で語りかけた。

「如月さん、もう間もなく私の異能は神崎に取り込まれます。私自身……もうこの異能を止められそうにないんです。取り込まれてしまうと神崎はすぐにこの大宮市……いえ、日本中を好き勝手に壊します」


「そうか。だが俺にはもうどうすることも出来ない……ただこの日本が壊れていく様を遠目で見つめるしかない」 

 葉月は俺の言葉に首を横に振った。そして次の瞬間とんでもない言葉を俺に告げた。  

「如月さん、もう時間がありません……私を殺してください。それしか、もう道は残されていません!」   

 ふざけるな。俺が何でそんな事をしなければならないんだ。お前を救出する為に来たというのに……   

「悔しい気持ちは痛い程分かります。でも今やらないと取り返しの付かない事になるのです!だからお願いします!」

 葉月の何一つ曇りの無い真剣な表情に段々と負けていきそうになる俺は惨めで哀れだった……確かに葉月の言う通り、取り込まれる前に殺さなければ神崎を一生倒せない。

 それは葉月の恐ろしい異能を動画で見てしまっていたからだ……決めたもう迷わない。覚悟を決めた俺は下に俯ていた顔を上げて

「葉月、どうすれば良い?」  

 俺の表情を見て安心した葉月はゆっくりと口を開いた。

「簡単な事です。私が最後の力を使って如月さんを立たせます。その間に如月さんはバレないように後ろからトドメを差して下さい。それだけです」     


「分かった……それと最後に……葉月にはどうしても言わなければならない事がある」      


「はい」       


「こんな不甲斐無い奴で済まなかった。しかも俺はお前を守ると言いつつ、何一つ守れなかった……今も守る所かお前に救われている」

 真剣な表情から一転、ニコリと微笑む葉月は俺の顔をしっかりと見つめて 

「良いんですよ。元々如月さんは護衛する立場では無いんですから当然の事です……最後まで有り難う御座いました。短い期間でしたけど楽しかったです!それじゃあもう時間なんで行きますね……さようなら」  

 段々と姿を消していく葉月を見つめながら俺は苦い表情で別れを告げた。  

「さようなら」

 視界が一気に暗くなったと同時に俺は両目を閉じた。そして両目をゆっくりと開いていくとまたさっきと同じ光景が移っていた。

「もうすぐだ!もうすぐで俺の身体は最強となる!」

 俺は先程まで神崎に殴られまくった身体を起こして後ろに回り込み、事前に中央部の地下にある車に乗り込む際に許可を取って受け取っておいた黒い拳銃をジャケットのポケットから取り出して、巨大な青いライフルに変貌させて神崎……

 いや葉月に当たるよう狙いをつけて、引き金をゆっくりと引いた。青いライフルは凄まじい射撃音と共に神崎の身体ごと葉月を貫いた。神崎は撃たれた部分を痛そうに抑えながら俺の方へ振り返る。

 俺は構わず一・二発入れ込んで葉月の身体を撃った。神崎は今までに無い驚きの表情を浮かべてから俺に怒鳴り散らした。

「何やってんだよぉぉ!お前はぁぁ!桜に何してんだぁぁ!」


「葉月を殺した……もう葉月自身止められないと悟っていたからな。やるしか無かったんだ。だから神崎……もうこれで終わりにしよう」

 拳銃に戻して、元の場所に仕舞い込んだ俺は槍で身構えて神崎を見つめた。神崎は葉月を散々に号泣しながら見つめた後、神崎は涙を拭って今までに見せたことの無い表情で叫んだ。

「お前は絶対に生きて帰さない!俺の気分が済むまで……ぶっ殺してやるぅぅ!」     

 神崎は黒い剣を精製して容赦なく立て続けに斬り掛かってきた……が先程の俺の攻撃で大ダメージを喰らっていた神崎はその場で立ち止まって、悶えていた。

「くそ!くそ!くそ!何でこんな時に……俺は今、目の前にいるあの目障りな奴を殺したいだけなのに!」    

 身体を動かそうとする神崎。だが、先程数発も撃たれたせいで身体に不調が起きて血が溢れ出してきた……次第に顔が真っ青になってきた神崎はその場に倒れ込んで、恨み辛みを吐いていた。

「あの時に……お前を殺しておけば良かったよ。俺の粋がった馬鹿な行為のせいで桜を殺してしまった……ははっ」 

 神崎の空虚で虚しい笑い声に俺は耳を貸すことも無く、黒い拳銃で安全装置を取り払って頭に狙いを定める。 

「如月、お前は一生を償え。俺を殺したことと……桜をお前のその薄汚い手で殺したことを!」      


「償っていくさ……一生をな」  

 拳銃の引き金を思いっ切り引いて凄まじい銃撃音と共に神崎の一生をこの薄汚い手で終わらせた。そして張り付けられて今は遺体になっている葉月の横にある青のボタンを押して部屋を開けさせた。

 向こう側で急いで駆けつけてきた東條と北神は驚いた表情をした後、俺に近づいてくるのが見えたが俺は身体に限界が来てその場で倒れてしまった。その後は何がどうなったかは知る由も無かった……

※※※※   

 1ヶ月後、意識を取り戻した俺は軽いリハビリを施してしばらく経ってから退院したその日に上層部の使いに強制的に引き連れられて、紅警視総監や上層部の者達が居る部屋に閉じ込められてしまった。

 何を聞かれるのかは大体分かっていたが、やはりこの重苦しい雰囲気には一切馴れ無かった。 

「如月蓮、お前には心底ガッカリしたよ。神崎の殺害は私から命令を下していたから良いとは言え、まさか葉月を殺すとはな……どういう事情かはこの際、もう聞かないが結果的に私達は大損害だ。この大損害……お前はどうやって償うつもりだ?」  

 紅警視総監の目は答えを間違えれば今にも処罰を下しそうな顔をしていた。俺は悪魔でも冷静に口を開くことにした。

「どんな事をした所で俺はこの罪を償うことは出来ません。だから俺に言う権利はありません。処罰をお願いします」

 俺はその場に立って頭を深く下げて、これまでにしたことが無いほどの長い時間謝罪をしていた。

 その間に上層部の人達が何やら騒がしく喋っていたが紅警視総監の一声により周囲一斉に静まり返った。   

「本来ならば、私としてはお前を命令違反により無期限の禁固刑を与えるつもりだったが…………お前のその態度と言葉で真摯に受け取れた。よって如月蓮……お前にはこれからもこのゼクターの組織の中核要員として半永久的に働いて貰う。それが私がお前に対する処罰だ」


「お待ちください!いくら何でもその処罰は余りにも軽過ぎます!如月蓮は我々の重要な要である葉月桜を殺したのですよ!」


「確かに葉月桜を殺したのは重大な損害……いや最悪の事態だ。だが、如月蓮をこのままここに残らせれば私に取ってもお前達に取っても組織的にはこれまでに無い大きな戦略に繋がる。だからこそ、この処罰が適当であると判断した……他に意見のある奴は居るか?」

 紅警視総監の周りに居る上層部の連中は黙り込んで、目を塞いだ。周りを確認して何の反論も無いと判断した紅警視総監は再び視線を俺の方に戻して、口を開いた。  

「ではさっきの処罰で不満な事は無いな?不満が無ければ顔を上げて返事をしろ」   

 何一つ不満の無い俺は顔を上げて、処罰の件を承諾をした。承諾が決まると紅警視総監は席を立ち上がって上層部の連中だけを解散させた。部屋に取り残された俺は沈黙したが、紅警視総監は俺の正面に立って、口を開けた。 

「お前が入隊する日は高校を卒業した日から日になるから覚えておけ。まぁ、担当の事務官から連絡が入ることになるとは思うが……」


「分かりました」   


「それと紛いなりにもお前は我々組織の為に働いてくれた。よってお前には給料を渡す。帰り道には専用の給料が入っている鞄共に事務官が運転することになっているから安心して帰ってくれ……最後にご苦労だった。天国に居るアイツも喜んでいるだろう」

 アイツ……俺は一瞬何を言っているのか訳が分からなかったのでアイツのことを聞こうとしたらそそくさと部屋を出て行って帰ってしまった。俺は諦めて、部屋の入り口で待っている事務官の案内で専用の車に乗り込むと事務官は運転席に乗って、自宅の方へと走らせた。

 その途中に一本の連絡がスマホからマナーモードで鳴り響いていたので俺はスマホを手に取って繋いだ。 

「よぉ、春日井さんだ。久しぶりだな~1ヶ月以来か。連絡が出来なくて不安で一杯一杯だったぜ」  


「すみませんでした……それよりも連絡を入れてきたということはあの日の事について何か判明したんですか?」 

 その言葉を聞くや否や春日井は嬉しそうな声で口を開いた。

「あぁ!色々分かったよ!あんな事やこんな事がね!詳しい話は明日にこの前三人で話し合いした場所で話すからということで宜しく!」


「分かりました」 

 俺はスマホの通話ボタンを切って景色の方を眺めた。運転中に事務官から何の電話かを聞かれたが俺は適当な言葉でごまかすと、事務官はそれ以上問い詰める事は無く黙々と運転した。

 2時間後……家に到着して事務官に専用の鍵と鞄を渡された俺は、家に入ってすぐに二階の鞄を適当な場所な床の上に置いてから鍵を誰にも分からない所に仕舞い込んだ後、予めある物を入れて置いたリュックと箒と塵が一緒になっている物を持った後に自室の扉の近くにある自転車の鍵を持って行って玄関先で靴を履き替えた。その時にリビングから植木がひょっこりと顔を出してきた。

「どこに行くんだ?帰ったばっかだと言うのに……」


「あの場所に行ってくる。もう建ててるんだろう?」


「建ててるよ。代金は立て替えでやったけど……本気で払うつもりか?維持費の事もあるし別に払わなくても良いんだぞ?高校生のお前に払わされるの酷な話だと思うし」 


「大丈夫だ……今日貰ったから、今晩辺りに渡しておくよ。じゃあ、行ってくる」       


「気をつけて行って来いよ!」  

 扉を開けて再び外に出た俺は専用の自転車に跨がって、あの場所へと目指した。その場所は必死に漕げば10分で行ける死を弔う場所である……俺はせっせと漕いで自転車を迷惑では無い場所に止めて置いた後、事務所に置いてある手桶とひしゃくを借りて無数にある墓の中にある葉月の墓を見つけて手桶に水を満たした。

 その後お墓の前に行ってゆっくりと目を閉じて礼拝をしてから周りの人が居ない墓の前で  

「葉月、お前の命を奪ってしまってすまなかった……この罪を簡単に償う事は出来ないが、それでも俺は全てを持って償おう」

 後悔と無念が残る懺悔をした後にリュックから線香とマッチを取り出して、煙を焚こうとしていたら綺麗な花を置いて墓に歩み寄ってくる東條の姿が目に映った。   

「東條、この場所を知っていたんだな」   


「私があなたのお見舞いに行く最中にあなたと植木さんの話をこっそりと聞いていたのよ……何で教えてくれなかったのかしら」


「行くのは俺一人で充分だと思ったからだ」  

 東條は花束を横に置いて礼拝し始めた。妙な沈黙が漂うが礼拝が終わると東條は立ち上がって口を開いた。 

「私、来週から転勤するの……だから会える回数は少なくなるわね」 東條の転勤は予想外ではあったが有り得る話でもあった。それは元々葉月の件でこちらに転勤して来たからだ。

「そうか。一応どこに行くのか聞いて良いか?」


「一旦中央部に戻って、あっちの高校で卒業したらアメリカに転勤するわ。日本も異能関連の犯罪が多発しているけど海外でも多発しているの。だから私はそのアメリカの戦力補充として出向することになったの。とはいえ今は高校の身ではあるから卒業してからと言うことになっているのだけれど」    


「アメリカか……随分と大きな場所に行くんだな。まぁ、アメリカに行って何かあったらメールで連絡してくれよ」


「えぇ、アメリカで困った事があったら連絡するわ。さてと話はこれくらいにして葉月さんの周りを綺麗にしましょうか?線香とかのゴミを片付けないとせっかくの花束が置けないから」


「そうだな、やるか」      

※※※※   

「やっぱり帝王山の件についてはアイツらが動いていたのは紛れもない真実になったな。その真実を示すのがこの証拠にある。土塗れで汚いが洗浄すれば誰の物かは時間さえあればわかる筈だ……よし昼寝も終わったし帰るとするか!」  

 帝王山に入る駐車場の前で寝ていた春日井は鍵を電源部分に差してエンジンを始動した……が妙なカチカチ音に不安感を覚えた春日井はハンドルの手を離して思考を始めた。

(このリズムを刻むカチカチ音は今まで乗っていた時には絶対に無かった。後ろのトランクに時計を置いた覚えも無い…………まさか!?)

 春日井は急いでドアノブを手に掛けて降りたが、降りて数歩で大きな爆発に巻き込まれてゴロゴロと転がった春日井の身体はもう上半身下半身共に動けなくなっていた。  

「あぁ~俺のパソコンごと証拠を消されたか。くそ、やられたな~悔しいが完敗だよ紅玄武。青髪君に北ちゃんに東ちゃんに郷間さん……マジですまねぇ。俺はここで無念のリタ……イアだ」  

 男は春日井の死をこの目で確認すると、すぐにその場から姿を消した。   

※※※※  

「あなたはこれからどうするのかしら?」 

 別れ際に東條に質問をされた俺は迷い無く答えた。

「これからは普通に高校で生活を送って一部の者に監視されながらも卒業した後にゼクターに永久的に入隊する。それから暇な時期を見つけては定期的に葉月の墓参りに行くと言った所か……まぁ、こんな事をした所で罪の全てを償えるとは到底思えないが」


「少なくともあなたのその姿勢は私から見て素晴らしいと思うわ。だからそんなネガティブな思考で囚われないで頂戴」 

 東條の言葉はとても優しかったが俺は首を横に振って否定をした。

「そうもいかない。この前の件は任務とはいえ、この手で神崎を拳銃で殺した犯罪者だ……俺は罪に苛まれながら一生を生きていく。それが今のうのうと生きている俺の贖罪しょくざいだ」


「あなたがあくまでもそう言うなら私はこれ以上何も言わないわ。じゃあ帰り道はあっちになるからお先に帰るわね」


「あぁ、気をつけて帰れよ」 

 東條を見送って姿が見えなくなるのを確認してから俺は再び自転車に跨がって家の方へと目指していく。漕いでいる最中に俺はこの謎の異能の始まりと葉月に会った思い出を走馬灯のように振り返っていこうとしたが、強く吹き付けてくる風に俺は余計な事を考えるのは止めて夕方の空の中ゆっくりと漕いで行った。

 俺の罪は一生をかけては償えない……だけどそれでも俺は出来る事をやって償っていく。それが俺が葉月とそして首謀者であった神崎に対して出来る唯一の贖罪だから…………

この度は閲覧して頂きありがとうございます。評価の方、お待ちしております。〈本音〉     異能作品としてはあれだったのか、それ程閲覧数は無く終了(笑)。これはなろう読者が求めていない物だったか誰から見てもつまらない作品の可能性が高いですね。次からもう少し、スピード感のある感じで書いていきたいです……次回の小説はこれとは違った別ジャンルの作品に挑戦したいと思います。

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