CODE19:終戦
暗くて広い……雑談は許されない部屋に今、俺と郷間は椅子にただポツリと座っていた。ふと見上げるとそこには名誉ある上層部の者達と中心人物である紅警視総監が座っていた……俺は内心この状況に眩暈がしていたが、次々とくる質問にただただ答えることしか許されなかった。そして上層部から質問が無くなると、今度は紅警視総監が上層部の者の質問を両手で制止させて、呟いた。
「郷間警部、あなたには警護対象を守れなかった責任として半年の謹慎処分を下す」
「はい、分かりました」
郷間は椅子から立ち上がって、頭を深々と下げた。俺は郷間に申し訳ない気持ちで一杯だったので、郷間が座る前に
「郷間警部、すまない。この件は殆ど、俺の責任だ。悪いことをした……」
謝罪をすると、郷間は穏やかな表情で
「気にするなよ。それよりも葉月さんを奪還してくれ。頼むぞ!」
「余計な私語は慎め!」
一人の事務官が注意を促すと、郷間は一言謝罪をして再び着席した。そして周囲が落ち着くと、紅警視総監は顔を俺の顔に向けてから発言し始めた。
「如月蓮、郷間警部から送られた資料は拝見させて貰った。神崎零……年齢21歳、異能を略奪する異能を所持。神崎零は偽名で本名は久我誠。生前に葉月桜を執拗にストーカーを行い、帝王山にて何者かに射殺される……良く出来た文章だな」
「それが真実ですよ。紅警視総監……帝王山でスマホで録画をした神崎を撃った犯人にも俺には推測出来ます」
「スマホで録画がだと?生憎だがそういった架空の証拠は無い……口を慎め」
紅警視総監は録画の件については知らぬ存ぜぬで突き通すつもりか?紅警視総監の目は眉をぴくりとも動かさない……奴の目線に俺は目を逸らさないで見る。
「はぁ、もういい。如月蓮……お前には神崎零の殺害を命じる。明日からこちらの本部に移動してもらう。お前で無ければ、神崎零という極悪人を殺害することは出来ないからな」
殺害……こいつ、神崎零を殺させて自分が帝王山で神崎殺害の件についての証拠を消すつもりか?さすが上に君臨するだけはあって、証拠抹殺はお手の物だな……
「不服だろうな。だがお前の配属を最終的に任せたのはこの私だ……お前はその謎の異能で神崎を殺害しなければならない。殺さなければ、我々組織にとっては壊滅的な状況になりかねんからな。不安の種は早く潰さなければならない……では返事を貰おうか?」
俺は内心腹立たしさにまみれていたが、葉月を救う為にも俺は渋々と承諾することにした。
「分かりました。その件、お受け致します」
次の瞬間、紅警視総監は満足そうな顔を浮かべて椅子にもたれかかっていき
「賢明な判断だ……ただし失敗すれば、お前の命は保証は出来ないとだけは言っておく。無論殺害以外の方法でな……明日の朝にはお前の監視係に東條と北神を付けて迎えさせる……では、これで解散とする。郷間警部そして如月蓮、退出しろ」
俺と郷間は同時に席を立ち、一礼をしてから事務官の指示を仰いで外に出た。俺は駐車場に停めてあった郷間の普通自動車に乗り込み、家まで送って貰うことにした。その間僅かながらの沈黙が車内に包み込まれていたが、人通りの多い交差点の赤信号待ちの最中に郷間は口を開き始めた。
「これからどうするだい?やっぱり親に言うんだよね……今回の事」
「本部の事については植木にははっきりと言っておくつもりだ……嘘は嫌いだしな」
「紅警視総監が君を葉月桜の護衛に専属させた理由はリバースとかいう敵組織に対抗しうる実力があると判断したからだ。実際、リバースのボスと思われる人物……神崎零は異能を奪って、その異能を使う最凶の極悪人だ。その異能に対抗出来るのは君しか居ない」
面倒な事になってしまった。そもそもな話、俺がこんな意味不明な異能を持たなければここまで事態は悪化しないで済むはずだった。何でこんな異能を俺は持ってしまったんだ……
「如月君、君は今その異能を持って後悔しているような顔付きをしているね」
「何故わかるんだ?まぁ、そうなんだが……」
「どの道、君がその異能を持っていようがいまいがこの事件は必ず起きていた。そして彼、神崎零はこの日本を裏から支配するかもしれないだろう……だが今の君はその異能で神崎零に立ち向かえる素晴らしい異能を持っているんだ!だから今はネガティブにならずにどうかその異能を使って、葉月桜を救出して欲しい。それだけが部署の責任者である俺の願いだ」
「あぁ、だけど俺は人を殺さなければならない……郷間、たかだか高校生の俺にそんな事が出来るのだろうか?」
そう聞くと、郷間はハンドルを強く掴みながら唸り声を上げて黙っていた。俺は諦めて、窓から見える景色を呆然と眺めていると郷間がポツリと呟いた。
「少なくとも高校生にさせる事じゃ無い……だが君の場合はそうしなければ、人生が大きく左右する事になる。如月蓮、覚悟を決めるんだ!」
ふと、横から見ると郷間の顔は苦渋の顔に包まれていた。郷間なりに真剣な解答を出したんだろう……俺は再びに視線を窓に向けて、一言礼を告げた。
「ありがとう」
「そういう感謝の言葉は全てが終わってからにしてくれ……そうした方がすっきりする」
「分かった」
郷間と話し込んでいる内に普通自動車は俺の住んでいる家に到着した。俺はシートベルトを外してから助手席のドアを開けて車から降りようとした時、郷間が「付いていこうか?」と言ったが、俺は大丈夫だと答えて気持ちだけ受け取っておくことにした……
そしてインターフォンを押そうとした瞬間に窓から顔を出して一言呟いた。
「きっと植木さんは君が今、ここで普通に問題無く歩いている事に驚きの表情を浮かべるかもしれんが、早く事情を話して安心せてやってくれよ……じゃあな。今まで数ヶ月付き合ってくれてありがとよ。楽しかったぜ!今度は普通にどこかのお店で飲めたら良いな!」
窓を閉めて視線を前方に戻した郷間は素早く車を走らせた。郷間が走らせる車が見えなくなったのを確認した後、俺は再びインターフォンの前に立って一呼吸入れてからスイッチを押す……呼び出しから数分経つと聞き覚えのある渋い声が響いてきた。
「はい、植木です……ってお前は蓮か!?どうして何だ!?何で普通にピンピンしてやがるんだ!?」
「訳はリビングで話す。とりあえず玄関を開けてくれ……話がしたい」
すぐにインターフォンが切れて、ドタバタと慌ただしい音と共にドアを開けた。植木は俺が何事も無く普通に立っている姿に驚きの表情を浮かべるが、しばらくすると安堵したのか肩の荷が降りたような表情を浮かべていた。
リビングから飛び出た姉さんも同様の表情を浮かべた後、うるうると涙を浮かべていた。妙な雰囲気に耐えられくなった俺は笑ってごまかすことにした。
「姉さん、何で泣いてんだよ。ちょっと大袈裟過ぎだぞ」
「うるさいわね!蓮が銃で撃たれて倒れたんだから心配していたに決まっていたじゃない!もう!」
「蓮、積もる話をしよう。だが、色々お前も疲れが溜まっていると思うから夜にじっくり話そう」
「いや、今から話そう。言わなければならない事が沢山あるからな……」
「分かった」
そう言うや否や姉さんはすぐにリビングに戻ってコップにお茶を入れて、机の上に並べた。俺と植木は姉さんに礼を言ってから椅子に座って、対面の姿勢を作った。
そして俺は姉さんと植木に視線を合わせながら花火大会の後について起きた事や、それ以外にどうしてこうしたのかという理由の説明などをした。
そうしてある程度の話を終えると姉さんと植木は交互に口を開いて
「まさか、花火大会に会っていたあの人が葉月ちゃんを誘拐するなんて……思いもしなかったわ」
「しかし、よくそんな危ない橋を渡ったもんだな」
「予測していたおかげで未然に重傷になることはなんとか防いだ。だが組織の親玉である神崎を追い詰めるものの、俺は逆に返り討ちにあって見事に葉月を奪われてしまった……俺の考えた計画は最悪の結末になってしまったんだ」
「まだ一回も会った事が無いんだが葉月さんはそんな重要な存在なのか?たかが高校生に護衛とか付けられるレベルだし何か気になる……」
「詳しくは言えないが葉月はゼクターという組織にとっては重要な存在らしい。俺は葉月の事については春日井さんという人のおかげである程度は知れたが、これを教えるのは気が引けるんだ……」
植木はコップに入っているお茶をゴクゴクと口に通して、全部飲みきってから
「そうか、分かった。俺は退職した身である以上それ以上については聞かない!それよりも蓮……お前まだ何か話したいんだろう?」
「あぁ、明日には本部に移動して葉月を救出の方法を考えることなっている……まだ、神崎の居場所は判明していないが恐らく向こうの方から俺に掛けてくるだろう。その時に俺はアイツの所に行って決着をつけるつもりだ」
姉さんは不安げな顔で俺を見つめて、しきりに呟いた。
「蓮、また危ない事をするの?そんな危ない事はゼクターに任せば良いじゃない!」
「姉さん、残念だけど俺はゼクターの上層部に命令されたんだ。この命令に断ればどうなるか分からないだ……それに俺はみすみす葉月を奪われてしまった事が許せない。俺は何としてでも葉月を救い出さなければならないんだ、だから悪いけど行くよ」
「本来、俺は姉さんに任された身としてお前を守らなければならないんだがな……今のお前の顔付きを見ていたら絶対に引き止められなさそうだ」
「良いのか?」
俺が念入りにそう聞くと植木は頭をかきむしって嫌そうな表情を浮かべていた……
「仕方無しにだぞ……言っておくが絶対に死ぬなよ!お前が死んだら、両親の血の気が引くだろうし何より俺はお前を行かせてしまった事を一生後悔することになるからな」
植木が承諾してくれた。俺はその場に立って姉さんと植木に頭を下げて一言感謝を告げた。
「姉さんに植木……ありがとう。この戦いが終わったら俺はすぐに戻ってくる。だからそれまでの間は祈っておいてくれ」
「誰が祈るかよ!蓮は絶対に帰るんだから祈る必要性は無いだろうが!馬鹿野郎!」
「蓮、無茶だけはしないでね……姉さんはいつでも待機して待っているから」
俺達はその後、下らない雑談をしながら姉さんの作った晩飯を食べて、風呂に入って一通りの支度を整え、もう一度抜け目が無いかを再確認してから就寝についた……
だが、その日は妙な緊張感が漂っていたせいなのか、俺は夜遅くまで起きることになってしまった……そして朝日が眩しい翌日の朝、起きた俺は下に何時もの青い生地のジーパンと上に白いシャツを来た後に薄い黒色のジャケットを着込んでから、一階に降りて姉さんと植木と久しぶりに顔を合わせた朝食を取った。
食べ終わった後、歯磨きをして口をゆすいだ時にインターフォンの音が鳴り響いた……俺はすぐにアイツらだと気づき、急いで二階の自室から物を詰め込んだリュックサックを背負い込み、再度一階に降りて靴を履くことにした。そして両方しっかりと履けていることを確認した俺は玄関で待ち構えている姉さんと植木に簡単な別れを告げることにした。
「それじゃあ、行ってきます」
「気をつけて帰って来いよ……絶対にな!」
「いってらっしゃい……蓮」
俺は頭を下げてから前に振り返り、ドアをゆっくりと開ける。すると車の所で申し訳なさそうな顔をする東條と腕組みをして立っている北神が待っていた。
「東條、葉月は連れ戻す。だから、そんな申し訳ないような顔をするな……」
「えぇ、あなたがそう言うなら私は信じるわ。こんな情けない顔を葉月さんに見せるわけにはいかないものね」
東條が落ち着いた表情を見せた時、隣に立っていた北神は俺と東條に車に乗るよう指示を出した。俺は素直に助手席の方に座って、黙って黙々と横に流れていく街の景色を見ていた。
「如月、聞くのも馬鹿らしいが……神崎を殺害する覚悟は出来ているんだろうな?」
北神は前を見ながら俺に覚悟を問いただした。俺は景色を見ながら静かに答えた。
「出来ています……ちなみに関係ない話になりますが北神警部補は人を撃ったことがあるんですか?」
「あると言えばあるな……その時は任務だからやっていたが基本的には後から後悔するもんだ。そして今回の件でたかだか高校生のお前にそんな事を指示する上層部にははっきりと言って、おかしいがな」
「……普通は逮捕しないですか?ゼクターとはいえ元の組織の名前は警察です。人殺しを助長する組織ではないでしょう」
「ここだけの話だが、組織の名前がゼクターに変わってから怪しさが際立っている。春日井の情報によれば秘密裏に隠してある事件は帝王山のあの出来事を境にして10件以上も存在しているらしい……今回の件の殺害は秘密裏に隠しておきたい事があるんだろう…………さて目的地までは高速に乗っても、2時間は掛かるから今の内に睡眠でもしておけ」
「分かりました」
俺は窓を眺めるのを止めて睡眠を取ることにした……一時間くらいして目覚めてぼんやりと景色を眺めていると一時間後には目的地であるゼクター中央部に到着した。
北神を始め、俺と東條は車を降りて玄関で受付の者の話を聞いてから12階にある第三会議室へエレベーターに乗って向かう。到着してノックをしてから入室すると俺達を待っていたかのように大勢のゼクターのメンバーが待機していた。
そして遥か正面にこの前出会った紅警視総監が座って待ち構えていた。俺と北神と東條は紅警視総監に一礼をした後、北神が形式的な台詞を吐いた。
「北神警部補、時間通りに如月氏を送りました。この後の指示をお願いします!」
「ご苦労……北神警部補と東條刑事は適当な椅子に掛けたまえ」
北神と東條は紅警視総監に言われるがまま、その場にある近くの机の場所に移動して着席した。紅警視総監は着席した所を見てから視線を俺の方に移して口を開いた。
「さて、警護対象である葉月桜をどう奪還するかについてだがの話だが……今現在、奴の居所が分からない以上捜査が出来ない。だが如月蓮、お前は一度神崎と関わったことがあると書類に書いてあった。お前なら知っているんだろ?」
紅警視総監は俺を曇りの無い強い目線で見つめてきた。俺は素直に連絡先までは分からないと伝えると紅警視総監は心底ガッカリしたよう表情で椅子にもたれかかった。
「そうか……連絡先は不明か。こうなると葉月桜のスマホのGPSなどで特定しておきたい所ではあるが、犯人が犯人だから期待は薄そうだな」
どうするんだ?このまま時間だけが過ぎていく……俺はそんな無駄な時間を過ごすためにこんな場所に来たんじゃないんだぞと心の中で思い、黙って立っていること数十分……
突然、俺のポケットからスマホが小刻みに震え始めた。この長い振動は電話と確信して、ポケットから出してみると見たことも無い電話番号が表示されていた……
神崎に違いないと思った俺は紅警視総監に目で伝えてから許可を貰う前に電話を出た。逆探知なんて時間の無意味だと思ったからだ……何故なら
「よぉ、神崎。お前は今どこに居るんだ?」
俺の問いかけに薄笑いをした神崎はすぐに答えた。
「徠覇ビル……中央部の少し離れた所にある最新のビルだ。もっともこの場所は現在建設中だがな。如月、お前は今近くに居るんだろう?分かっているだぜ~。色々と積もる話もあると思うしここらで一対一の決着をつけようぜ!ただしさっき一対一と俺は確かに言ったからお前以外が来たらどうなるかは一切の保証出来ないぜ!分かったな?」
「良いぜ。お前のそのいけ好かない顔を全力で叩いてやる」
「あははっ!威勢だけは無駄に良いな!じゃあ俺はさっき言った所定の場所で桜と戯れながら待っているぜ。じゃあな」
電話を一方的に切られた……俺はスマホをポケットに仕舞ってから正面で座っている紅警視総監に先程の通話内容を伝えた。
「徠覇ビル……ここから車で行くと、30分になるな。そして条件は一人で来ることで条件を守らなければ葉月桜の命は保証しないと言うことか……もっとも命を奪われる可能性は低そうだが、お前以外では神崎に対抗する者は居なさそうだがな」
「紅警視総監……あなたはどうするつもりですか?このままそこで黙って椅子に座り続けるのですか?」
数分間の沈黙を続けたのち、紅警視総監は口を開いて語った。
「私の立場は普段、この椅子で報告を聞くのでは無くゼクターという組織全体の統制を均衡に図ることだが……今回は葉月桜という特殊な事案にある。如月、お前には必ず葉月桜を救出して神崎零を速やかに殺害することにある。だから私はお前が神崎零を殺害の報告を間近で聞くことにある」
「なるほどな。その為にあんたはその場で監視するのか」
「良い報告を待っているぞ。これより、今から葉月桜の救出を行う。北神警部補と東條刑事は見届け人の任と共に如月蓮を現地まで送り届けろ。以上だ」
「分かりました、行くぞ如月」
俺は北神と東條の後ろに付いていって地下に置いてある普通自動車に速やかに乗り込んで目的地である徠覇ビルへと向かった。ビルは町通りに進んだある交差点の境にあり、その目的地の建物は上を見上げるほどの立派なビルであった。
車に降りて警戒をしながら入ると、そこには誰にも居ない空虚で、コンクリートの独特な匂いが漂う場所だった。俺達は黙々と警戒を続けながら、階段で上へと上へと進んでいき、神崎が居そうな最上階まで進んでいく。
そして最上階に着いて奥に進むと目の前に気になる扉が待ち構えていた。そこに神崎が待ち構えていると踏んだ俺は北神と東條を制止させた。
「北神警部補、事が終わったらドアをぶち破って紅警視総監に連絡を入れて下さい」
「分かった。生きて帰って来いよ如月」
「はい。そして東條……お前にはすまないと思っている。アイツに殴り返したい気持ちはあると思うがその役割は俺がやる。東條は北神警部補と共に待機していてくれ」
東條は不服そう表情を浮かべていたが、俺の言葉で首を縦に振った後さっきまで無言だった口を開いた。
「分かったわ。今はあなたの言うとおり、私は北神警部補と一緒に待機しておきます。無事に帰って来てくださいね……」
「あぁ、それじゃあ行ってくる……」
俺は後ろの二人に見送れながら正面にある鉄の扉をゆっくり開けて、奥に進むと両手と両足に鉄の手錠が嵌められ壁に貼り付けられている葉月を横からじっくり右の耳朶を舐めている神崎を発見した。神崎は俺の姿を見ると、名残惜しそうな表情をしたまま俺の正面に立ちはだかった。
「はぁ~せっかく桜に調教していたのに邪魔が入ったな」
「悪かったな」
「ふん、気持ちのない言葉はいらねぇよ。それよりもどうだ!この広いステージ!最高だろ!?」
瞬間、後ろにある扉の方からガチリと閉まる音がした。どうやら途中で逃げることは出来ないらしい……元より逃げるつもりはサラサラないが。俺は一面に広がるコンクリートの壁とポツポツと置いてある障害物を見てから正面に振り返って呟いた。
「神崎、お前みたいな気持ち悪いストーカーに葉月桜をそのままにしておく訳にはいかない。今日、お前はここで死を持って償うことになる」
「死か……なるほどな。俺が逮捕されたら色々とマズい事が表面に出るからそういう指示をお前に仰いできやがったか。はははっ、良いぜ。来いよ!俺もお前のそのウザイ顔を潰して壁に貼り付けられある桜に絶望の表情をさせてから俺が中に秘めてある最強の異能を取り込んでやる!そして無事取り込んだらその後は無様に倒れ込んでいるテメェの赤眼の目玉をくり抜いて俺の余った右目に移植してやるぜ!糞がぁぁ!」
俺と神崎は一歩ずつ後ろに下がって互いに様子を見た後、神崎から声を撒き散らして先攻してきた。
「行くぜぇぇぇ、模倣の赤眼!」
「来いよ、青眼野郎」




