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CODE18:神となる男

 8月19日……新聞の欄には大きく貼られた大宮花火大会の銃撃事件について掲載されている。概要はPM8:10の時に後ろから何者かに発砲されたという内容が載っていた。被害者は如月蓮……119番通報によりすぐに病院に搬送されるも現在意識不明とされている。ゼクターは計画的な殺人に視野を入れて全力で調査を行っているらしい……

 また一般人に聞き込みによると、犯人は真っ暗で見えづらかったとのこと。銃を発砲したと思われる犯人は依然逃走中……男は新聞の文字を復唱し終わった後、高級そうなガラスのテーブルに投げつけた。 

「犯人は依然逃走中だってよ」     

 グラスに入っている赤色のワインを飲み干した男はそれを洗面台に置いた後、ソファーに座っている男にガラスのテーブルの上に黒い拳銃をゆっくりと置いた。男はその拳銃を手に取り服の中にあるポケットに突っ込んだ。   

「これで第一段階は終わりだなマスター。まぁ、撃っちゃったから俺の逮捕も時間の問題かも……」    


「安心しろ。この計画が無事に終われば俺は神となって誕生する…

…そうなれば真っ先にゼクターは俺の手で崩壊するだろう。だからこそ最後にお前の力が必要なんだよ……安藤」  

 安藤は男の座るソファーの向かい側に座って天井を見上げて

「そこまで言われたら俺も本気を出さないといけないね~さて、マスターさん。次はどうするんだい?」   


「次は刑務所の独房で閉じこもっているあいつらと対面してやる……決行日は明日の深夜。準備等は頼むぞ、安藤」 

 安藤がコクリと頷き、ソファーから離れようとするとインターフォンからベルが鳴った。  

「こんな夜の遅い時間帯にお客さんかよ。マスターは座っていろ。俺が出る」 

 安藤はモニターを見た後、どうぞと言ってマンション入り口の解除ボタンを押した。その後しばらくして、またベルが鳴ったので安藤が扉を開くと白髪が混じり込んでいる渋い男性がリビングに入って来た。

 男は男性の姿を見るとすぐソファーから離れて、茶色の棚からグラスを取り出して専用のワイン入れから高級ワインをグラスに注ぎ込んでガラスのテーブルの上に置いた。

「まさか、あなたが来るとは思いませんでしたよ……葛城さん。今日は一体何のご用で?」    


「私が来た理由は……察しの良いお前ならすぐに分かると思うがな?」   


「……ふっ、分かりました。ちょっと待っていて下さい」

 男はリビングから離れて自室に戻り、ベッドの下にある大きな四角形のアタッシュケースを手に取って、葛城に差し出した。葛城はそれを見るとすぐに中身を開けてじっくりと眺めた後、中身を閉じた。

「ご苦労だった。これで君は晴れて自由の身だ。おめでとう」

 葛城が見上げると、男は一礼をして感謝を述べ始めた。

「とんでも御座いません……今まで、こうして組織が大きくなったのは全てあなたのおかげです。それに私自身が血まみれで歩いている時にあなたは手を差し伸べ、私の命を救ってくれました。ただそのアタッシュケースは場合によっては使う意味が無いとは思いますが……」


「そうだな……だがこれを作製して欲しいと依頼したのは私だ。余計な詮索はするな」      


「分かっていますよ。葛城さん」 

 葛城はグラスに入っているワインを飲み干し、テーブルの上に置いてあるアタッシュケースを手に取って早々に帰っていった。男は葛城が居なくなるとすぐにグラスを洗面台に置いて、洗い始め  

「安藤、明日はちょっとした戦になるかもしれねぇからさっさと寝ろ!食器類は俺がやっておく」   


「分かった。マスターのご厚意、有り難く頂戴するよ。じゃあ、お休み」 

 安藤は欠伸をしながらリビングを後にした。男は洗い終わった食器を元の場所に戻して、その場にあるソファーに寝っころがった。

「ははっ、明日が楽しみだぜ。これが終われば無事に桜の元に行ける。待っていろよ姫……如月なんかすぐにこの俺が忘れさせてやるよ」

※※※※   

 赤い高級スポーツカーを走らせる男はある場所の検問所で止まった。久留須刑務所……大宮市から大きく離れた海岸側にある刑務所はコンクリートの高い塀に覆われていて、とてもでは無いが脱走は厳しい。

 検問所には二名の男が簡易な建物で待機している。男は検問所の外に居た男に呼び止められるや否やすぐに車を止めて、窓を開けた。

「夜9時に一体何の用ですか?面会なら後日にして頂けますか?」


「申し訳ない……今日はどうしても会って話さないといけない方が居るのです。何とか入所させては頂けないでしょうか?」

 男は車を降りて、その場で頭を下げた。その行為に男は困り果てていたが、建物の中に居る若い男は入り口の窓を開けて

「良いんじゃないですか?こんなに必死なんですから持ち物をしてからアポ取りましょうよ」   


「うーん……そうだな。よし、分かりました!今回は特別に通します!まずは手荷物検査からしますので手を広げてじっとしていて下さい」 

 検問の男は男に手を広げるように指示を促した。男はバレないようにズボンの後ろポケットから鋭利な物を掴み、それを男の首の根っこに貫いた。そして次の瞬間、男の苦しそうな声と共に首から一気に血しぶきが飛び、コンクリートの上に倒れた。

 建物の中に居る若い男はその光景を見るや否やすぐさま、右手で受話器を取ろうとするが目の前に飛んできたナイフが右腕に当たった為、阻止されてしまった。

 若い男は身悶え苦しそうな顔で右腕を庇っている……男はニヤリと表情を緩ませ、若い男の元へと近付きサプレッサーが着いた拳銃で何発か身体に撃ち込んだ。

「悪いな。俺はこれから重要な事をしないといけないんだ……俺と年齢が同じの奴を殺すのは癪だが、仕方ないよなぁ」


「貴……様」 

 若い男は男の顔を睨みつけた後、その場に倒れ込み首を下げた。男は死亡を確認して安藤に通信を入れた。 

「検問の男共は無事に殺した……刑務所の中のカメラは無事にジャミング出来るよな?」    


「それくらい朝飯前さ。それよりもさっさと終わらせて戻ってこいよ……ジャミング出来るとは言え、システムが厳しいからいつ警報が鳴っても分からないからさぁ」  


「はいはい、分かったよ。じゃあな」 

 男は通信を切った後、すぐに刑務所の中に入り込んで玄関の状況を確認した……眠りに入りそうな男が鉄の柵の前で座っている。状況を確認した後、男は拳銃の弾数を見る。

「聞こえる?つい、さっきジャミングに成功した。今から10分しか嘘の動画が流せないから、早く終わらせてくれよ」 

 安藤の通信を無言で聞いて後、建物の死角から飛び出して男の額に拳銃の弾を華麗に撃ち込んだ。

「あばよ、公務員……お前の糞みたいな人生を呪うんだな」

 男は死んだ男から鍵を奪って、柵を開ける為の鍵を差し込んで開けた。 

「まずは夏目だな……あの野郎は元気にしているのだろうか?楽しみで仕方がないぜ!」   

 男はニヤリと笑い、無線からの安藤の情報を頼りに夏目の居場所へと急ぎ足で向かった。居場所は刑務所の奥に潜んでいる。

 そしてしばらく無言で歩いていると目的の場所に到着した。じっと座り込んでいる夏目は男の姿を見るとすぐに目を開くて、柵にしがみついてきた。

「貴様はあの時の!?何をしに来たんだ!?」


「そう吠えるなよ、夏目。お前の眉間が更に酷くなるぜ」


「馴れ馴れしい奴だなお前は……何者だ!?」


「やれやれ、俺はお前のボスなんだけどなぁ。やっぱりこの顔で分かるわけが無いか……じゃあ、ネタバラシといくか」 

 男は自分の顔を右手で押さえつけて右手を広げた後、別の顔が姿を現した。その瞬間、夏目の顔は驚愕の表情に浮かべていた。

「あ……なたはま……さかマスターなのですか?」


「やっと気付いたのか……まぁ、気付いた所で意味は無くなるんだけどな!」 

 男は右手で自分の左眼のコンタクトレンズを取ると、黒い瞳が一瞬で青い瞳へと変わっていった。夏目はその瞳の変わりように動揺を隠しきれないでいた。

「青い眼!?マスター、何故その事を隠していたのですか!?」


「お前らに伝えたら、面倒事しか起きねぇからな。この事は安藤とあの人にしか教えてないんだよ……じゃあ、お喋りは終わりだ。貰うぜ……お前の異能を」 

 男の青い眼は夏目の目先に注視して異能を取り込んだ。取り込まれた夏目は苦しそうにもがいたが何とか正気を取り戻した。

「ぐぉぉ……私に何をなさったのですか!?」


「お前の持つ異能を奪っただけだ。お前は俺にとって用済みになったと言う訳だ……今まで短かったがご苦労様だ。天に登れ」

 右手に持っている拳銃を夏目の身体に何発か発砲して射殺した。夏目は最後まで足掻こうと試みたが男が振り向きざまにもう一発撃ち込んだことで完全にその意識を途絶えさせた。

 男はその後順調に組織に居たメンバーから異能を奪って射殺していき、いくつかの違法に取り扱った異能者の異能を奪っていって、速やかにその場から離脱した。   

「残り二分……ギリギリで終わらせたな」


「すぐにここを離れる。早くしないとカメラの機能が回復して俺様の正体が特定されてしまうからな。まぁ、別にバレてもあまり問題は無いんだがな」  

 男は通信を切って赤いスポーツカーに乗り込み、刑務所から離脱した後、運転席側の窓を開けて夜風に吹かれながら 

「さぁて、ようやく仕上げだ!楽しみに待っていてくれよ……桜」

 優越感に浮かれながら自宅の方へと戻っていった。一方、刑務所では緊急警報が鳴り響いて、対応に追われることとなった……

※※※※  

「如月さん、今日も来ましたよ。お花、変えて置きますね」 

 葉月は棚に置かれているすたびれた花を新しく花屋さんで買った花に置き換えて、椅子に座った。あの事件から一週間……彼、如月蓮はまだ目を覚ましてはいない。葉月は如月をずっと一点に見つめていた。その姿を東條は腕組みの態勢で見ていた。

「葉月さん、あなたはもう来なくても良いのよ……今回の件は必ず私達で突き止めてみせる。だからあなたは支部で休んでいなさい」


「私だけのこのこと守られる訳にはいきませんよ。今回の件で如月さんが撃たれたのは私のせいなんです。だから私は如月さんが目覚めるまで、ここに居たいと思います」  

 葉月の強い眼差しに東條は諦めを悟り、縦に頷いて葉月と一緒に見守ることにした…………見守ること、数時間。ドアの音が聞こえたので東條が開けてみるとそこには神崎が待ち構えていた。

「やぁ、如月君の容態はどうかな?」   


「まだ、意識不明みたいです……」 


「そうか。早く目覚めて欲しいね……こんな時になんだけど、お茶でも飲んで落ち着かない?さっき駅前で最高級の茶葉を買ったから。どうかな?」  


「じゃあ、すいません。頂きます……」  


「あぁ、そこの隅っこに湯沸かし器があるからすぐに入れてくるよ。東條さんも飲む?」     


「えぇ、頂くわ」 

 神崎は二人分のコップを棚から取り出してそれぞれに茶葉を投入して、お湯を入れてから葉月と東條に丁寧に手渡しで渡した。葉月はお茶を貰うも不思議そうな顔を浮かべていた。 

「あれ?神崎さんは飲まないんですか?」


「ここに来る途中に、喉が渇いたから先にドリンクを飲んでしまってね……まぁ、気にしないで」  


「そうですか。じゃあ、有り難く頂きます」   

 葉月は手元に掴んでいるお茶を口で少々吹いてから慎重に飲み出した。東條は葉月が飲んだのを確認した後、一口だけ飲んで適当な棚に置いた。  

「神崎さん、このお茶美味しいですね」  


「ふっ、喜んで貰えて何よりだよ。もし良かったらお代わりもあるから遠慮無く言ってくれ」 

 神崎はそう言ってから東條の隣の方に立ち、ベッドで今も意識不明になっている如月を見ていた。東條は突然、神崎が隣に来た行動に違和感を拭えきれないでいた。  

「何で隣に立つのかしら?」    

 東條がそう言うと、神崎は笑い始めた。 

「あははっ、別に良いだろ?そんなことで気になるなんて……もしかして僕の事が気になるのかい?」


「そんな訳無いでしょう…………それにしても、さっきから頭が何だかクラクラするわ。今日、体調は良かった筈なのに」

 先程、クリアにはっきりと見えていた視界が突然ぐらつき始めた。東條は立つことも難しくなったので左手で頭を抑えながら、無理矢理バランスを取った。

 横に居た神崎は心配する事無く、目線を葉月の方に合わせて喋り始めた。 

「あれれ?葉月さん、眠ってしまったようだね。仕方無い……僕が彼女をお家まで届けに行くとするか」


「ぐっ!あなた、はぁはぁ……まさ……か私達にお茶に睡眠薬を入れて飲ませたのね!」  

 東條の怒号の言葉にニコニコして話していた神崎は表情を真顔に切り替えた。

「お前はそこで眠っていろ。俺には桜が必要なんだ」


「神崎……あなたが葉月を狙うボスだったのね」  

 神崎はポケットに忍ばせておいた拳銃を取り出して東條の後ろの首にぶつけてゆっくりと自分の手で持たせながらその場に倒した。

 神崎は葉月が眠っているのを確認すると、すぐに窓を開けて葉月の身体をお姫様抱っこで抱きかかえながら、助走をつけて飛び越えた。その後、神崎は一般人に見つからないように葉月を車まで運び込み、ある場所まで走らせる。「桜の寝顔……中々良いな。あの場所に着いたら後でこっそり一枚撮っておくか」 

 葉月を横でニヤニヤ神崎は車を走らせ高速に乗ること、六時間……目的地である帝王山の頂上付近に着いた神崎は今も寝ている葉月にスマホで撮影して、肩を叩いてゆっくりと起こした。

「葉月さん、起きて」    


「うーん、あ……れ?ここは一体?私は確か如月さんの居る病室で寝ていたような……」    


「まぁまぁ、そんな事はどうでも良いから早く降りて一緒に絶好の景色を見よう」  

 葉月は今の現状にとても困惑していたが、神崎に降りて欲しいとせがまれたのでやむなしに降りた。降りて見ると目の前に移る景色は地面の土が綺麗な夕日に照らされている。

 そして遠くには幾つかの山が立っており、見下ろすだけでも無数のビルが並び立っている……その時、葉月はこの景色に見覚えがあるかのようなフラッシュバックが視界によぎってきた。 

「この景色……見覚えがある。初めて来たのにどうして……」

 葉月が見たことも無い景色に戸惑いを感じていると後ろの背後に立っている神崎が声を掛けてきた。 

「ここは夕焼けの景色が綺麗だと噂になっている場所だよ。夜になるとビルが沢山光って、素晴らしい夜景になる……実は君と僕はここで会ったことがあるんだけど、覚えていないかい?」


「神崎さんにですか?……いえ、全然覚えていないです。むしろ神崎さんに初めて出会ったのは本屋の場所を聞かれた時だと思いますが」

 ありのままを話す葉月に後ろに立っている神崎はフッと笑みをこぼした。そしてその瞬間、神崎の口調は初めて会った時よりも酷く変わっていた。まるで化けの皮が剥がれたように…… 

「なるほど……やってくれたな。桜、君は記憶を消されたんだよ。だから今までそうやって平然と人ゴミの中に紛れ込めたんだ。それは何故だと思う?」 

 神崎の変わりすぎた口調に恐怖が募る葉月であったが、答えた方が身のためだと考えた葉月は口を開いて、分からないと答えた。すると神崎は手で顔を隠して高らかに笑い始めた。 

「あはははっ!完全に記憶を消されたんだな!こうなるとこの俺の持つ証拠を見せないと思い出せないかもな!」

 神崎はそう言うと、ズボンのポケットからスマホを取り出し一つの動画を葉月に見せた。拝見した、葉月は自分の変わりようにこれまでに無いほどの驚きを発した。 

「この動画の君はある種、大きな覚醒をしたんだ。この時から何故かは分からないが今まで何の力を持たなかった人の幾つかは異能という訳の分からない……だがとても重宝する能力を授かった。まぁ、桜が覚醒したキッカケを作ったのは紛れもなく俺なんだけどなぁ!」

 その時、葉月の脳内から失っていた記憶が今度ははっきりと思い起こされた……葉月は記憶を思い出したと同時に酷い眩暈と頭痛を伴った。神崎は葉月の苦しんでいる姿を見て喜び、続けて口を開いた。

「記憶を消去した奴の検討はもう付いているが、今はそんなことどうでも良い!今日、桜がここでもう一度……桜の持つ禁忌の異能を呼び覚まし、俺がその異能を取り込む!そうなれば晴れて、俺が絶対的に神となり、桜は俺の姫となる!まさに完璧な計画!……そういう訳だから桜。早く覚醒してくれよ。あの姿にさ!」 

 神崎がジリジリと葉月に近づく。葉月は後ろに一歩ずつ手で頭を抱えながら下がるが、神崎に両手で地面に押し倒されたので逃げることは叶わなかった…… 

「桜、君は俺の目を見つめていれば良い。すぐに終わるからさ……」

 葉月は目を閉じて神崎を見ないように抵抗を図るが、神崎が葉月に口を付けて来た為に目を開いてしまった。神崎はニヤリと微笑み

「桜……愛しているぜ」   

 こんな状況の中、葉月にはある言葉が脳裏に戦慄していた。それは花火大会で話し掛けてくれた如月……ある一つの如月の言葉を思い出した。

「花火が終われば葉月にとって、良くないことが訪れるかもしれない……だが、そうはさせない。絶対に……だから葉月は絶望的な状況になったとしても、俺を忘れないでくれ」

 ……この言葉が脳裏によぎらせてくれた。葉月は今の如月の状態どうなっていたかは分かってはいたが最後の抵抗として両手を握りしめ、大声で叫んだ。

「いやぁぁぁ!助けて如月さぁぁん!」  


「はっ!如月は今も意識不明だ!もう如月もお馬鹿な間抜けな組織も来ねえよ!諦めて観念し――」 

 直後、どこからか一つの閃光が軌道上放たれて来た。神崎は驚いて後ろに下がり距離を取るが奥からもう一つの閃光に気づくことが出来なかった神崎は見事、左足に直撃した。

「ぐあっ!糞が!どこから来やがった!俺の身体に傷を付けた糞野郎!出てきやがれ!ぶっ殺してやる!」  

 神崎が大きな声で怒鳴ると、奥の茂みの方から姿を現した。その人物は青いライフルを構えていて左目に赤い目を帯びていた葉月が良く知る人物だった。 

「如月さん!?どうして!?」  


「葉月、すまない。来るのが少し遅れてしまった……今からコイツを倒して、葉月を助ける」 


「如月……どういうことだ?あの夜、確かにお前の身体に銃撃されたのを確認した筈なのに……何故だ!」      

※※※※  

「何故?それは、花火大会以前のお前の行動に不信感を感じたからだよ。特にあの総理の事件の時にな……」


「総理の時だと?あの時、俺はお前に怪しまれないように従順なフリをしながら協力した筈だが?」 

 気付いてないようだな……今回重傷を防げたのはお前のある台詞のおかげなんだがな……俺は神崎の馬鹿さ加減に少々クスリと笑ってしまう。その表情を見た神崎はこれまでに見せたことの無い表情でキレていた。 

「てめぇ、何笑ってんだよ!今からその腐った顔面、叩き割ってやる!」    


「凄い変貌を遂げたな……神崎。お前の本来の性格はそんな感じなんだな。怪しんでおいて良かったな」   

 余裕綽々な表情を見せると、神崎はポケットから拳銃を取り出して俺の額に狙いを付けてきた。奴の目は本気だ……下手に動けば、間違い無く撃たれる。神崎は拳銃を俺の額に狙い済ませながら喋り始めた。 

「余計なお喋りをやめろ、如月。さっさと俺の質問に答えろ!何故お前は今、平然とそこに立っている!?」


「花火大会の事前に防弾チョッキを着込んでいたからだ。着込まなければお前の計画に嵌まっていたかもな……だが計画を阻止出来たのはお前の余計な言葉だ。あれのおかげで俺達は帝王山のいや葉月の身の回りに関する事を調べていたら答えが出たということだ。そしてそのきっかけは花火が開催される一週間前のちょっとした話し合いで起きた」 ※※※※   

 後はこの前気になった、あの事について聞いておくことにするか………… 

「なら、これで最後にする。1ヶ月前に夏目が逮捕された場所はどんな工場なんだ?」      


「それがどうかしたのかい?」  


「答え次第では重要なことになるから、真面目に答えて欲しいんだ。春日井さん」 

 春日井は俺の真剣な表情に心が折れたのか、机の上に置いたメモ帳をペラペラと捲って喋り始めた。  

「夏目が逮捕された場所は……調べた結果、二年前の廃棄された薬品の製造現場ということが判明してるけど、これがどうかしたのかい?」 


「薬品か……アイツ、何か調べ物があったから俺を放置して先に行ったんだよな……」  

 妙な違和感に浸っていると、見かねていた郷間が声を掛けてきた。

「アイツって、誰なんだい?如月君。もし良かったら俺達に教えてくれないかい?アイツのことを」 

 心の中で溜め込むのはマズいと思った俺は春日井・北神・郷間に今持っている神崎零の情報を伝えた。伝え終わると北神が俺に疑問を投げかけてきた。 

「神崎が協力した理由は何だったんだ?そこだけが俺の気になる所だ」   


「協力してくれる理由を聞いたらある調査だと答え……いや、待てよ。何かが引っ掛かる……」   


「どうかしたか?」 

 あの時、神崎は調査ちょっとした調査だと言っていた。別の目的とか言っていたような気もするが……いや、それよりおかしい。

 何故、神崎はあの場所で用事があるからと俺を置いて、調べに行っていた……何だか妙な感じだ。俺は胸のもやつきを解決する為、春日井に薬品製造の詳しい詳細を調べて欲しいと懇願した。懇願された春日井は何の不満も無く、詳細を調べ始めた。

 俺の隣に立っている北神と郷間は不思議そうな目でパソコンを見ていた。そして春日井が驚きの声を上げと同時に後ろに振り向き、俺に向かって喋り始めた。 

「一年前に突然工場を廃棄した理由は、俺っちの推測によるが……もしかしたら異能関係で薬が暴走したせいかもな。何で俺がこんな事を言うのかはこのスレッドを見てくれ」

 ネットの住民が扱う闇のスレッドを見てみると、そこには一年前薬品製造工場が唐突に潰れた理由が何故なのかがびっしりと書かれている……どうやら書いた奴は工場を辞めさせられた腹いせの為に書いているようだ。

「間違いないな……神崎はすでに場所を聞く前に誘拐犯である夏目から場所を聞いていたんだ。そして、その場所が偶々かは分からないが偶然にも自分が調査に行かなければならない目的地と合致した。だからアイツは俺に協力する時、言ってはいけない情報を吐いた。本人は気付いてない感じだったがな」 

 事態は大きく変わった。これで終わりにしようぜ神崎。

「春日井さん……すみませんが帝王山の件、早めに調べて貰えますか?特に葉月の身の回りに起きた事を」


「せっかくの休暇だというのに~まぁ、青髪君がそこまで必死なんだし今日から調査に行くとしますかね~旅費代諸々頼んだ、郷間さん!」 

 郷間はやれやれと遠い目をしながら渋々と承諾した。

「分かったよ、但し無駄な金は使うなよ。それとなるべく隠密に動いてくれよ。お前は前科の事があるし」


「分かってるさ!んじゃあなお前ら!分かり次第、すぐに連絡してやるから楽しみに待っていろよ!」   

 春日井は机に置いてあるパソコンを鞄の中に仕舞い込み、早足で部屋を後にした。残された俺は先帰ろうと思ったが、北神に一言礼を言うことにした。 

「北神刑事、さっきの質問ありがとう御座いました。おかげでアイツの正体に気が付きました」  


「何の事かと思えば、そういうことか。気にするな……それより俺の階級は刑事では無く、警部補だ。今度から間違えるな」

 北神は無愛想な面で話し終えると部屋の扉を開けて後にした。

「北神刑事が警部補に……あの件で昇進したのか」


「そういう所だな。まぁ、成果は春日井に任せて俺達は葉月さんを慎重に守るとしよう」    

※※※※  

「っ!そうなると俺はあの日、まんまと乗せられたと言う事だな。射的屋に行った時から、てめぇの作戦が始まったという訳だ」


「北神警部補のおかげでな……まぁ、あの日は花火で打ち上がる時以外は暗いから撃つのに最適だったのは何となく想像がついていた。だから俺は行く前にチョッキを最初に着て、上を着込んで置いたという訳だ。まぁ、何より確信したのはお前が葉月の浴衣を褒める時だったけどな。普通の人はそんなにべた褒めしない」

 俺がそう言うと、神崎は空に向かって大声で笑い出した。まるで人を馬鹿にするような笑い方だ。

「あははははっ!お前ごときにやられるとは……俺も相当な馬鹿だったな。だが、ここで桜を死守すれば俺の勝ちは決まったも同然だ!」

 神崎は手に持っている銃を俺に向けて発砲しようとしたが、その直後向こうから発砲されて銃は地面に転がり込んでいった。

「北神警部補、ありがとう御座います」

 向こうから銃を構えた北神が姿を現した。そして後から合流してきた警護課の皆が集まって来た。後ろ以外は四面楚歌状態になっていたが、神崎はそれでも余裕の表情で構えていた。そして神崎はニヤリと笑うと右手で葉月の後頭部を平手で気絶させた。 

「神崎、お前……」   


「桜にこれ以上、余計な景色を見させる訳にはいかねぇからな……来いよ、雑魚共!この俺様が直々に相手をしてやる!」 神崎が一同を睨み付けると、青く長細いライフルにして構えた北神がその場で罪状を言い放った。

「神崎零、いや久賀誠……お前を銃刀法違反並びに誘拐罪並びに殺人罪並びその他の罪により現行犯逮捕として執行する!全員かかれ!」

 一同が飛びかかると神崎はその場で立って右手で大きく振り払う。すると強烈な突風が押し寄せて俺達は前に進むことすら出来なくなってしまった。

 手頃な木にしがみついた俺はレーザーを放つが、神崎がレーザーが当たる直後に手で振り払って空の方に投げた……俺の異能は全く持って無意味となった。  

「レーザーの軌道を曲げただと……」

 神崎は跳ね返した手を軽くスナップして、嘲りながら答えた。

「あぁ、そういえば言ってなかったな!実は俺様、お前と同じ異能を持っているだよ!ただ唯一違うのは奪うという点だがな!」

 そう言うと神崎は右手で右目にあるコンタクトレンズらしき物を地面に投げ捨て、本当の眼を見せ付けつきた。眼の色は青色だった……

「お前の異能が奪って取り込むのなら、奪われた人間は」


「もう二度と異能は使えなくなるな!はははっ!さすがは俺だ!これこそ最強の異能!あとは桜の異能を取り込めば!」

 そうはさせない……俺は落ちている木の棒を槍に変換させて、近づこうと試みが目の前の神崎が消えて後方から強烈な足蹴りを喰らって地面に転がり込んだ。

 神崎は更に追い討ちを掛けようと追撃をかけるが、他の連中の攻撃が降りかかって来たので葉月の方に戻って、右手から透明のシールドを発動して守りを固めた。

 そして戦闘中に、一人のメンバーが埒があかないと大声で言い放ち、後ろの鞘に仕込んで置いた刀を手に取り突進を開始した……が向かう途中に神崎が右手を垂直に出して、地面に叩き伏せた為にそれは叶わなかった。

「あ~あ、残念だったな。重力異能の虜になっちまったお前には極上のクオリティーをお届けするぜ……そらよ!」

 叩き伏せられていたメンバーは神崎に追撃を掛けられ、息をする暇も無いほどの重力攻撃に酷く苦しんでいた。

 俺は何とかその隙に雷撃で神崎を攻撃して中断させるが、苦しんでいたメンバーは動かなくなってしまった。

 更に神崎を追い詰める事が出来ない俺達に、遠くから一台のヘリがこちらに向かって機関銃を掃射してくるのが見えた。俺は空間移動の異能を駆使しながら北神を連れて急いで回避するも、神崎が空間から鎖を出して拘束されたメンバーは蜂の巣になって撃たれてしまい、逃げようとしたメンバーは神崎の銃により頭ごと撃たれてしまった。生き残れたのは俺と北神という最悪の結果になってしまった。機関銃の掃射を中断したヘリは神崎の近くに近付き待機し始めた。

「やっと来たか……遅いんだよ」  

 俺は逃すまいとプロペラの風力に抗いながら神崎の前に出た。俺の姿を見た神崎はニコッと笑って、葉月をヘリに乗って構えている男に明け渡して手に持っている銃を俺の額に狙いをすませながら 

「残念ながら、今日はここで終わりだ!奥に潜んでいるお前!少しでも撃つフリをしてみろ!撃てばお前の命は無いと思え!」


「神崎、葉月をどうするつもりだ!?」 


「ここから先は俺と桜の聖域になる……お前如きが知る必要は無い!じゃあな、馬鹿共!」 

 ヘリは威嚇射撃を行いながら、一気に空を舞って消え去った。北神は俺の隣に並んで一言冷静に呟いた。 

「……郷間警部に連絡を入れる。これから、俺達に最悪な事態が起きるだろう。覚悟しておけ」   


「はい」   

 俺はこれまでに無い大きな虚無感に取り残された…………

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