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CODE16:村上総理救出作戦の結末

「神崎の奴、いつになったら来るんだよ……」 

 タクシーは目的地通りに到着して、神崎の財布から代金を頂きそのまま帰ってしまった。俺は神崎に待っているようにと言われて素直に従ってはいるが、あれから10分が経った今……未だに神崎の姿が見えない。俺は急いでいるのにな……そんな焦りの気持ちで一杯一杯になると、道路上では中々見かけないような赤のスポーツカーが左の方向指示器を出して俺の所にピッタリと停止した。

 えっ?何で停止したんだ?まさか……俺は確信を持ちたい為に運転席を覗き込んだ。

 案の定、運転席に座っているのは神崎だということが分かった。俺はこんな高級車に乗るのは生まれて初めてになるので、ゆっくりと扉を開いて、ゆっくりと閉めた。 

「恐ろしいな、お前は。裕福なのがうらやましいよ……こんなスポーツカーに乗って」   


「大したことではないよ。それよりもシートベルトをしっかりと締めといてね……これから法定速度の範囲内で飛ばすから」

 神崎に言われ、俺はすぐさま肩にシートベルトを掛けた。それを横目で確認した神崎はスポーツカーを発進させた。道行く人が神崎の乗っている車を見ている。こんな高そうな車はあまり公道で走ってはいないからな……当然の反応か。 

「如月君、今から僕はこの先にある高速道路に乗って、誘拐犯の場所まで全速力で走らせるから気分が悪くなるかもしれないけど、何とかこらえてね」             

「それは別に良いが、高速で行ったら何時間で到着するんだ?早く着かないとゼクターに先を越されてしまう」            

「1時間30分以上は見ていた方が良いね。なるべくは短縮する方向で行くけど」         

 赤のスポーツカーはあっという間に高速道路に入り、神崎はIC専用のゲートを通過してから速度を大幅に上げて本車線に突入した。横目で確認すると、速度100km以上は軽く越えていた。正直言ってかなり怖い……事故ったら一発で死にそうだな。  

「しかし、今回の事件は本当に驚いたよ。まさか総理大臣を誘拐するなんてね……恐ろしい人物だよ」

                 

「……あぁ、確かにそうだな。だからこそ俺は知らなければならないんだ。真実を」  


「真実か……今回の件で何かわかると良いね。僕も出来る限りのサポートをするよ」        

 神崎はその言葉を皮切りに目の前の高速の運転に集中した。俺は何もすることが無かったので目を閉じることにした……駄目だ。眠気がする……まずい。  

※※※※     

「如月君、起きて!目的の場所に着いたよ!」

               

「いつの間に眠っていたんだ俺は……」 

 目をぱっちりと開けてゆっくりとベルトを外し外に出ると、目の前に広がるのはかなり古びれていた大きな工場だった。看板の名前はもう読めない……恐らくこの工場は何かしらの大きなトラブルがあり、今も壊せず仕方なく置いてあるのだろう。

 時間は夕方に差し当たる……暗くなる前に急いで終わらせなければならない。      

「この工場に誘拐犯が居るんだね。あの組織に合流される前に片を付けよう!」         


「あぁ、急ぐぞ」  

 俺達はゆっくりと工場の出入り口に近づき様子を見て偵察をする。門の奥にには二人の男が重武装した状態で見張っている……タダで行かせる気は毛頭無いようだ。

 ここからは戦闘になるのは避けられないな。俺は異能を使う前に神崎に確認することにした。

「神崎、ここからは戦闘になりそうだ。準備は出来てるか?」

                 

「大丈夫だよ。こう見えても僕は異能者なんだ……足手まといにはならない」 

 神崎はそう言うと、手のひらから白く輝く美しい片手剣を精製した……    

「さぁ、行こう。まず最初の先導は僕が努めるよ。君には僕の実力を知って欲しいからね」     

 神崎は俺に片目のウインクをすると、爽快に前に出て行き重武装の男二人に立ち向かった。男二人は咄嗟の行動に驚いていたが、すぐに戦闘体勢に入って大きめのバルカンを構え神崎に向かって乱射した。だが、神崎はその弾が読めるかのように軽やかに片手剣で次々と撃ち落として、近づいたところで跳躍して二人の背後を取って白く美しい片手剣で軽やかに斬り伏せた。

 俺に取っては2分も満たない鮮やかな戦闘だった……コイツだけは敵に回したくないな。尊敬の意とちょっとした恐怖を感じていたら突然警報が鳴り出した。どうやらさっきのバルカンの乱射音で異常を感知したみたいだ。急いで探さないと大量の敵と戦わなければならないな……何としてでもそれだけは回避したい。

「如月君、急ごう!早くしないとマズい状況に陥ってしまう!」

                

「分かっている……ゼクターが来る前にサッサと終わらせる」

 俺と神崎は男二人をそのままにして、誘拐犯の元に急いで向かった。だが辺りには戦闘場慣れした兵士が大勢うろついてそう簡単には動けそうに無かった。このまま建物の陰に隠れていてもどうにもならない……早く進まないといけないんだがな。

「如月君、ここは僕が奴らを誘導するから君は奴らが気を取られている間に一斉に倒してくれ」   

 俺は神崎の提案に賛成して、時を待つことに決めた。神崎は敵の動きを見て、機を見た隙に突撃して相手を誘導した。その誘導捌きは素人とは思えないほどのプロの動きだった……

 下手したらゼクターレベルに匹敵しそうだ。奴らが神崎に手を取られてる隙に俺は物陰から抜け出し、背後から強烈な稲妻を敵全員に向かって直撃させた。敵は稲妻の強烈な攻撃に身体が痺れたためにその場で倒れた。神崎は物陰から出て拍手をしていた。

「お見事!君は相当な異能使いだね。僕も見習いたいよ」

          

「それは誉めているのか?言っておくがお前も充分に強かったぞ。最悪、ゼクターで中心的な存在になれるほどの実力だと俺は思ってる」

 神崎はその言葉を聞いた時、右手で首元を抑え恥ずかしそうに照れ始めた。 

「いや~、それほどでもないよ。こんな力はあんまり現実では使わないことにしているし。今回はたまたま僕にちょっとした実力があっただけさ……おっと!こんな所で長居している場合じゃないね。如月君、首謀者の下に向かおう。早くしないと逃げられてしまう」

 俺は神崎の言葉に頷き、首謀者の下に向かおうと思ったがこのまま闇雲に歩いてもこの広い工場では中々見つからないと思ったので神崎を制止して、ポケットにとめているペンを槍に変えてその場に倒れている男を叩き起こすことにした。

 男は目覚めた瞬間、飛び上がり反撃しようと試みたが俺が男の顔面に槍を突きつけていたため、男は反撃を中止した……俺は一言聞きたかったことがあったので男に向かって言い放った。      

「ここに居るボスを探している。場所を聞きたいんだ。どこに居る?」     

 男はその質問に口を堅く閉ざして答えようとはしなかった。俺は槍で顔面にもうちょっとで当たるくらいの距離に詰めるが、男はピクリとも動かさず堅く口を閉ざしてしまった。

 弱ったな……こんな感じでは首謀者もとい誘拐犯の居場所が突き止められない。闇雲に歩くしかないのか?俺は軽く頭を悩ませていたが

、横で見ていた神崎が男に向かって優しい口調で喋り始めた。 

「君達が僕達を襲う理由は、少なくともここにボスが居るということだ。そうでなければ襲う必要性が無い……このことについては間違いないことだよね?」  


「あぁ」      

 男はさっきまで堅く閉ざしていた口を開き一言ぶっきらぼうに呟いた。神崎はその一言を聞き手応えがあると思ったのか口を開き、喋り始めた。      

「君達の動きは軍にいる兵士のような動きをしていた。雇われた可能性は大いにあるね……つまり君達は誘拐犯いや依頼人とはお金関係の仲だということだ。給料については前払いかな?それとも仕事が終わった後の後払いかな」  


「前払いだが……それを聞いて何になる?」

                

「そうか前払いか……ということは、ここで君達が捕まえればお金は失うということになるね。僕達は、君達を捕まえることは出来ないけど後で通報さえしておけば君達は簡単に捕まってしまうだろう……だから、その為にも良い方法があるんだ」 

 男は神崎の言葉に反応し、神崎に問いただした。すると神崎はニコリと笑い 

「僕達が誘拐犯を始末しよう……誘拐犯さえ捕まえてしまえば君達は逃げられる。逃亡が成功すれば、君達は前払いのお金が良いビジネスが歩めると思うんだ。という訳でどうかな?良い話だと思うんだけど?」 


「なるほどな……つまりお前らが依頼人を確保するから、俺達はその間に撤収しろということだな?」

                 

「理解が早くて助かるよ。じゃあ答えを聞かせて貰おうかな?」

 俺はその考えに納得いかなかったので神崎にその考えをやめるように言ったが、神崎は首を横に振り断った。 

「よく考えてくれ、如月君。今日ここに来たのは誘拐犯を捕まえる為だ。もっとも君は誘拐犯を捕まえる為だけに来ているとは考えづらいけど……まぁ、それは置いておいて目的は誘拐犯だけだ。彼等傭兵のような人達と戦えば、体力的にも保たない……だから今この提案にそこに倒れている傭兵が飲み込んでくれたら僕達も助かるし彼等も彼等で助かる。だからこれ以上の手は無いんだ。色々と文句はあるかもしれないけど今は黙って、僕の意見を聞いてほしい」

                

「……わかった」          


「ふん!最初は口を堅くしようと思ったが、そこの横に立っているお前が実におもしろい提案をしてくれたし、乗っておいてやる!本当に依頼人やってくれるんだろうな?」  

「もちろん。お約束するよ」  


「…………依頼人は工場の奥にあるエレベーターから地下二階に降りた廊下の先に居る……というわけでもう充分だろ。相手の居場所は教えた。約束通り、離して貰おうか?」

 俺は神崎を横目で見た。神崎は首を縦に振ったために俺は槍を解除して男の身柄を自由にさせた。男は俺を睨みつけて服装を正し、胸ポケットにあるトランスシーバーで撤退だということを伝えてた後、倒れている兵士を次々と叩き起こして撤収する準備を始めた。

「言っておくが、こういうのは今回限りだからな……それを肝に銘じておけよ。じゃあな」  

 男達が撤収するのを見届けた後、俺達はボスの場所に向かった。走っていると一目でわかる大きなエレベーターがそびえ立っていた。俺はエレベーターの下の矢印のボタンを押して、神崎と一緒に乗り込んだ。場所は地下二階だからB2……今居る階は一階みたいだ。すぐに着くだろう。エレベーターの閉のボタンを押すと、エレベーターは降下を開始した。そんな時に神崎は横から俺に喋り掛けてきた。

「さっきまで君の異能を見てきたけど、君は随分と他の人とは違った異能を持っているんだね?」          

「そうだな。正直こんな異能に俺は困惑している……だが現実では事実としてあるんだから認めるしかない」     

「ふっ、そうだね。まぁ君の異能は特殊な上にきっと色々な人から狙われるかもしれないから気をつけておいた方が良いと思うよ」

 俺は神崎の忠告に無愛想な返事をして、会話を終わらせる。瞬間、エレベーターがB2に到達して目の前の扉が開かれた。一歩踏み出して、エレベーターから出ると独特なコンクリートの匂いが辺りに充満していて、床にはガラスの破片らしきものが散りばめられていた。ここで何が開発されているのか……

 とても気になってしまったが、神崎の急ごうの一言 に俺は思索を止めて先へ先へと急いだ。周りは電気が無いため殆ど真っ暗な状態ではあったが、いつも携行しているスマホがポケットにあったため、それをライト代わりにして先を歩いた……

 そして、歩き始めて数分が経過して俺達は行き止まりの広場に辿り着く。そこには何もなかったが一部の照明が点灯し、一人の男が待ち構えていた為、俺と神崎を目配せをして男の元に向かった。男は俺達を見かけた途端、こちらに近づき拍手で出迎えてきた。    

「ようこそ、どうやら無事に辿り着いたようですね……まぁ、鼻からあの傭兵共には期待していませんでしたが。でも、あの組織では無くまさか赤眼のアナタが先に来るのは意外でしたよ。」 

 頭が禿げている40代らしき男は俺の顔をじっくりと眺めている。正直、気味が悪いと思ったので俺は男を睨み付けながら喋ることにした。        

「目的はTGだということは知っている……だが俺を見たとき、今さっきお前は赤眼と言ったな。あれはどういう意味だ?」

                

「やれやれ、あなたは随分と余裕ですね……赤眼は今、マスターが読んでいる呼称です。正確には模倣の赤眼……あなたは我々が最優先で落とすべき敵です。私、夏目がこうしたのはTGの確保と如月蓮……あなたを始末することです!勿論、あなたの横に立っている君もね!」  

 夏目はサバイナルナイフを両手に素早く構え、こちら側に近づいてきた。もはや、会話の余地は無い。こうなるとこちらは迎撃をする必要がある。     

「如月君、あと残り15分であの人達が来る!その間に決着を着けるんだ!」          


「わかった」    

 俺は夏目に電撃を放ち、すぐに戦いを終わらせるように持ち出した。だがその瞬間、夏目の姿は視界から消え失せた。

「……消えたか。異能はテレポートと言ったところか」

           

「まさか、視界から消えるとはね。随分と厄介な相手だ」

 視界から夏目が消えて一分……まだ奴は姿を現さない。このまま時間稼ぎをするつもり――   

「背後がスッカスッカですぞ!」 

 夏目の言葉に気づき後ろに距離を取ろうと試みるが、サバイナルナイフで勢い良く振り回されたために俺は右肩に出血を負ってしまう。そして夏目はその傷を見て再び畳み掛けるが神崎の白い剣の支援により、追撃はなんとか免れることが出来た。

 追撃は困難だと確認した夏目は再び姿を消した。俺と神崎は互いに背中合わせをして、作戦を練ることにした。

「どうする?このままだと一方的にやられるぞ」

              

「その打開策は今、考えたよ……けど君は大丈夫なのかい?見たところ肩の辺がかなり出血しているみたいだけど」

           

「大丈夫だ。その傷は今からでも異能で治せる」

 左手から透明の白い球体を取り出し、出血元に当てた。すると大量に流れていた血が一気に収まり、回復していった。それを横目で見ていた神崎は酷く驚いていた。  

「…………っ!凄い異能だね。まさか回復の異能を持っているなんて、君はちょっとした化け物だね」


「人を化け物呼ばわりするなよ。それにこの異能は出血関係しか治せないから重傷の傷には治せないデメリットがある。まぁ、ある分には良いんだが……それよりも打開策を早く教えてくれ。いつ襲われるか分からないからな」   

 俺がそう言うと神崎はいつもの表情に戻り、冷静に語り始めた。

「僕が奴に斬り込みを掛けるから、君はその隙に打撃なり何なり追撃を掛けてくれ。話は以上だ」    

「わかった。神崎、頼むぞ」   

 俺は左のポケットの奥に忍ばせて置いたグローブを取り出し、両手に填めていつでも叩き込む体勢を整えた。妙な静寂が辺りを包み込む……神崎は意識を集中して前へ、一歩ずつ歩き出した。そして次の瞬間、神崎は右斜めの方向に思いっ切り斬りつけると夏目は立ち止まって、怯んだ。

 その隙に俺は神崎の後ろから横に飛び出して、夏目の身体を壁側に叩き込んだ。夏目は更なる追撃が来るとは予想出来ず、大ダメージを喰らう羽目になってしまった。  

「ぐぁぁ、おのれ!そこのガキと赤眼!貴様らのような奴に私が負けるなどあってはならない!ならないのだ!」

 俺は追撃を掛けるため、夏目の近くに近づき気づかれる間に異能を取り込んで置いてから何発か連続で身体に殴り込んだ。さっきまでの威勢は嘘のように弱まり段々と弱々しくなっていた。

 だがそれでも、夏目は立ち上がり両手に持っているサバイナルナイフに力を込めて、視界から消え去った。そして数秒経った後に再び夏目が勢いの良い威勢と共に飛びかかってきたが俺はすかさず夏目の視界から消え去った。夏目はかなり焦っている。

「あの赤眼!私の異能をいつの間にか取り込んでいたか!おのれ……」             


「あなたはここで終わらせます!僕と!」 

 神崎は白く輝く美しい拳銃を夏目の両腕を狙って命中させ

「君でね!」            


「吹き飛びな」   

 俺は夏目の目の前に飛び出して頬を思いっ切り殴り込んだ。夏目は不意の攻撃に対処が出来ずにその場に倒れ込んだ。戦いは俺達、二人の勝利で終了した。 

「ぐっ、まさか赤眼がこれほどまでの実力を持っていたとは……油断し過ぎたか」                 

「残念だったな。これからは刑務所暮らしだ……だがその前に色々と聞きたいことがある」             

「横入りで失礼だけど、僕は少し用事を思い出したからお先に失礼するよ。20分後に僕の車の所で待っていてくれ。それまでには来るから」         

 神崎に対して縦に振ると神崎は後ろに振り返ってどこかに去ってしまった。まぁ、アイツが居ると聞きづらいことがはっきりと聞けるからこれはこれで良かったのだが……俺は神崎を軽く見送った後、夏目に視線を戻して聞きたかった質問を聞くことにした。

「TG……いや葉月桜の異能は何だ?俺はそれが知りたい」

 夏目はフッと鼻で笑い、俺の目をじっくりと見てきた。俺は負けじと夏目をじっと見る。すると夏目は大きな溜め息をついて語り始めた。

「葉月桜は異能の神……即ちこの日本、いや世界を束ねる最強の攻防を兼ね備えている」      

 異能の神?何を言っているんだコイツは?俺を馬鹿にするのも大概にしろ。 

「その顔は信じていないみたいですね。まぁ、確かに有り得ない話ではありますが……マスターから送られた動画を見たら、その疑問は一瞬で吹き飛びましたよ。先に言ったとおりにはなりますがまさに全能の神に相応しい異能ですね」   

 そう言うと夏目は懐から黒を基調としたスマホを取り出して俺にこの動画ファイルを押せと指示してきた。俺はその指示に黙って従い、指定された動画ファイルを開くと到底信じられない画像が次々と俺の目に映りこんだ……

 葉月の背中に生えている神々しい煌びやかな羽のような物、そして周囲をアチコチに蔓延るオーロラが舞っていた……そして、動画からは青年の男らしき人物が僅かに何か言葉を吐いていたので音量を上げてみると

「俺が追い求めていた理想が目の前に!前々から可愛い可愛いと付け狙っていたがまさかこんなにも麗しい女性だったとは!今は俺以外誰も居ない!その間に俺がこの女を頂く!」 

 カメラが段々と葉月の方に近づいく……だが後ろの金属音と共にカメラはピタリと止まった。  

「な……くそっ!」 

 カメラは急にゴロゴロと転がっていき、場面が土の方になった。まさかこれは、奴がカメラを森の方に投げたのか?俺がそんなことを思っている内に耳がキーンとなるような一発の銃声が鳴り響いた。動画は沈黙して、ここで終わりとなっている。その後夏目は持っているスマホを地面に投げつけて砕くとちょっとした爆発音と共に木っ端みじんに砕かれてた。どうやら証拠は完全に消すつもりらしい……あの時にスマホ共々取り押されば良かったな。  

「ふ~む、いかがでしたか?これがあなた達が護衛している始まりの異能者……葉月桜の正体です」 


「始まりだと?益々分からない……どういうことだ?」

           

「言葉通りの意味ですよ。彼女は我々異能者が異能を持つきっかけとなった始まりの人です。つまりは異能の祖先ということですね」    

 異能の祖先だと!?じゃあ葉月桜を保護している理由はこの絶大なる異能の力を渡さない為にあるのか……

「ですが、この動画を我々に提示したマスターはこの日本のどこかで生きておられます。今もその機会を狙っていることでしょう……話は以上です。もう間もなく村上総理の最後のタイムリミットが近づいて来ました。最後の最後はデカい花火を吹き散らして皆さんの目に感動を与えましょう!」  

 村上総理……まずい、葉月のことで疎かにし過ぎた。コイツから村上総理の場所を聞かなければ……俺は夏目の胸ぐらを掴んで迫真の表情で迫り込んだ。  

「村上総理はどこにいる?まさか約束の場所では無いよな?」               

「ほう、鋭いですな。アナタの言うとおり、大臣は指定の場所に配置してはいません。場所はここから離れた大宮市の外れにある物件募集中の玉田ビルの頂上にて、私に協力してくれた篠山が横で銃を突きながら大臣の顔を狙っていることでしょう。まぁ、とはいえ場所を教えても30分しかないので無駄だとは思いますがね……ということはやはりここは一つの提案としてTGの――」               

「身柄は渡さない。絶対にな……よし、もう話さなくて結構だ。お前は大人しく寝ていろ」  

 俺は夏目の身体全体に大量の稲妻を浴びさせ気絶させてから非常出口の階段を降りていき、右のポケットに仕舞い込んであるスマホを取り出し郷間に連絡を入れた。 

「何かあったか?自分は今そっちに来たから駆けつける所だ」

 どうやらつい先ほどこの現場に到着したみたいだな。とりあえずの合流は阻止できたという訳だ。俺はホッと胸をなで下ろして、夏目が言っていた言葉を郷間に一言一句噛まずにはっきりと伝えた。すると郷間はかなり焦っているのか妙にテンション高い声で再度聞いてきた。 

「おいおい!そりゃ本当なのか!だとしたらかなり不味いぞ!どちらの方もその場所から離れているし、突撃部隊を送り込むにも申請時間やら時間を喰っちまう!たくっ!どうすりゃあ良いんだよ!」 

 郷間がここまで慌てふためくとは……まぁ、人質が国をまかなう総理大臣だからな。

 余程の奴じゃ無い限り冷静になっていられないだろう。俺はそんなことを思いながら郷間を諭すことにした。 

「郷間、このままでは間違いなく村上総理の死体が出来上がってしまう。何か良い案は無いのか?」 

 俺がそう聞くと郷間は電話内で深く唸り、ぶつぶつと考え始めた。     

「うーん、こればかりはどうしようも……いや、アイツならもしかしたら出来るかもしれない」   

 俺は誰のことか気になったので誰なのかを郷間に聞いた。すると郷間は躊躇うこと無く俺が前に知り合っていた人物の名前を出した。北神修一……以前、九条との戦いの時に応戦してくれた人物だ。

「まさかその人の名前が出るとはな」


「アイツは異能を得る以前に二年前、全国狙撃大会にて優勝を取っている手練れだ。だからこそ、俺はこの作戦で起用しようと思っている。無論、その前に本部の許可と北神の許可がいるがな」

 北神刑事なら何の迷いも無く、郷間警部の指示に従うだろう。問題は本部の方だ……果たしてそんな作戦を本部が了承してくれるだろうか?        

「……事態が君の言うとおりに最悪の状況になった。さっきから部屋の方で身見澄まして聞いているが間違いなく、あと30分でTGの身柄が貰えない場合、総理を射殺するらしい……俺は今から本部のお堅い人と相談しに言ってくる。君はそこの現場から早く離れて、家で待機していてくれ」 俺は分かったと一言だけ呟き電話の終了ボタンを軽く押して、ポケットに仕舞った。残念ながら俺が出来ることはここまでだから、後は郷間警部に事を委ねるしかない。俺は軽く溜め息をついたあと、急ぎ足で下に降りた。  

※※※※     

「事態が悪い方向に行き始めたな……」 

 会議室で頭を悩ます眼鏡の男はポツリと呟いた。そしてその痛ましい姿に横目でボンヤリと眺めていた春日井は眼鏡の男にニヤリ顔で喋り始めた。     

「俺達は見事まんまと罠に引っ掛かりましたね。本隊がそちらに赴いている内に総理を別の場所に移動。GPSは予め複製していたんでしょうね。それのせいで俺達はまんまと引っ掛かってしまった」         


「春日井……貴様は今、平然とその場に居座っているが、お前は以前俺達ゼクターの組織情報を不正にアクセスした前科持ちだ」           


「だから何?」           


「偉そうに言葉を述べるな。私と話す時は言葉を選べ……支部風情が」     

 春日井は本部の人間に若干苛立ちを感じ、内心目の前で殴ってやりたいという気持ちが沸々と煮えたぐっていたが、郷間が会議室に入室したことでその気持ちは自然に抑えられた。眼鏡を掛けた本部の男は郷間を見掛けた時、目の前で告げた。

「郷間警部、今さっき別の犯人と思われる者から脅迫電話が入ってきた。あと30分以内に葉月の身柄を渡さなければ、全国のテレビで射殺をするらしい」    


「別の犯人?」         


「先ほどの人物は廃棄工場にて逮捕したが、どうやらこの人物はフェイクでもう一人の犯人が総理に銃で突き付けている。現在、本隊を向かわせているが50分以上の移動時間が必要だ。だからと言って別の部隊を向かわせれば犯人に余計な刺激を与えかねない……」          


「そこで一つ提案があります。狙撃を北神修一に一任させて欲しいのです」  

 郷間は眼鏡を掛けた男に目線を合わせて、北神修一の詳細なデータを机に提出した。男はそれを手に取りじっくりと眺めた後、再び郷間に目線を戻して告げた。

「なるほどな……ここに書いてあるデータが本当ならば、今すぐにでも実行したいな。だが……狙撃に失敗すれば、総理の命は無い。そうなればこの北神刑事は責任を負わなければならないだろう」             


「北神刑事なら、やってくれますよ。許可をお願いします。私から北神刑事に指示します」          


「…………分かった。上層部に連絡を入れる。許可が出たら、いや許可が出る前に支部で待機している北神刑事を現場に急行させろ。現場の場所は現在、住人不在の玉田ビルだ」          

「了解」      

 郷間は眼鏡を掛けた男にお辞儀をして、会議室を出て支部の警護課で待機している北神の元に向かった。北神は余り落ち着かない様子で椅子に座っていたが、郷間を見掛けた瞬間に席を立って一礼をした。      

「お疲れ様です」          


「あぁ、お疲れ様。今からで悪いがお前に重要な概要を伝える」

 郷間は狙撃の概要を北神に簡潔に告げた。北神は少々苦々しい顔をして考え込んでいたが、顔を上げて 

「やります。やらせて下さい」 


「本当に良いんだな?」     


「はい。郷間警部や組織の命令に従うのがゼクターに所属する私の使命です。必ず成功させて参ります。では」

 北神は郷間に深々と頭を下げた後、急ぎ足で駐車場の方へと向かって行った。郷間は北神を見届けた後、会議室の方に戻って春日の横に着席して、何の変哲もない天井をじっと眺めた。

「お疲れさん、この作戦で無事に終わると良いな」 


「そうだな……あとは北神次第だが、確実に成功させてくれるだろう。人任せだが」 


「大丈夫だ。北ちゃんはここぞと言うとき真の性能を見せてくれる筈だ。だから俺達は、その光景を願っていようぜ!」


「あぁ」     

※※※※      

 20分掛けて、玉田ビルの向かい側のビルに到着した北神は地下に止めた車を降りてエレベーターで一階に上がった後、受付の者にライセンスを見せて屋上に上がることを旨に伝えて受付の者から専用の鍵を貰い、急ぎ足で階段を駆け上がって一般人禁止の屋上の扉を開けた後、肩に背負ってある長細い包装袋に収められた立派なスナイパーライフル取り出してから、予め最初に持ってきたリュックサックに入ってある二脚を平行な位置に置きスナイパーライフルを上から乗せてる。その後、北神は一呼吸してから左腕に巻いているデジタル時計を見て確認をする。 

「残り5分……ぎりぎりになったが、これで終わりにしてやる」

 姿勢を伏せ撃ちの状態に、右手で安全装置を解除してから引き金の一歩手前の所で右手を置いて、スコープの照準を総理に銃を横に突きつけている男性に捉える。今日は幸いにも風等の悪条件は一切無い為、落ち着いてやれば成功するが道路でたむろしている若者の声が少々うるさい……

 だがそんな事に惑わされては任務に支障を起こす。そんな思いを胸に北神はPSG1のスナイパーライフルを構えた。そして、無線から連絡音が入り電源をONにする。 

「こちらは服部管理官だ。上層部の許可は頂いた。犯人の射殺を最優先……射殺終了後、速やかに総理を救出しろ」           

「了解しました」  

 北神は連絡を切った後、スコープで銃を所持してウロウロしている男性の動向に注視した。無風の中、緊迫感の余りふと右手が震えそうになっていたが、気持ちを切り替えて両目をしっかりと見開いて向かい側のビルに居る相手に発砲の準備を始める。

(向かい側のビルから推測するとおおよそ500m……PSG1の射程圏内ではあるが、確実に当たるという保証は無い。しかし失敗すれば組織の評判は地の底になりかねない。だから俺は必ず成功させる!この一発の弾丸で!)

 向かい側の玉田ビルで辺りをキョロキョロしていた男は突然立ち止まり、ポケットからスマホを取り出して電話をし始めた。時間は予告していた通り……このチャンスを見過ごせば、総理の命は無い。

 覚悟を決めた北神は狙いを正確に定めて、男が拳銃の安全装置を手で外した所で引き金を思いっ切り引いて、大きな発砲音と共に一発の鋭い弾丸が乱れる事無く一直線上に飛んでいき、男の顔面を跡形無く吹き飛ばした。男は後方に吹き飛ぶと同時に右手に持っていた拳銃を地面に落として、倒れた。

 狙いを正確に決めた北神はすぐに手に持っていたPSG1や二脚を包装袋とリュックサックに戻して全速力で走りながら支部に連絡を入れた。       

「射殺完了!これより総理の救助に向かいます!」             

「良くやった!間もなく本隊も到着する!本隊が合流するまでは総理の側で待機してくれ!以上だ!」                 

「了解!!」 

 北神は大きな声でハッキリと返事した後、車に乗って人混みの中走って行き、向かい側の方にあった玉田ビルの側に車を止めて頂上に駆け上がり総理の身柄を保護した。こうしてゼクターという組織全体を巻き込んだ大きな事件は北神の一発の引き金で見事成功に収めた……

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