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CODE15:村上総理大臣救出作戦

 緊急会議の内容は書類に書いてある通りに進んでいった。村上総理が誘拐されたのは午前7時の国会の入り口付近でSPと共に車に乗車する時に何者かに突然襲われ、拉致して車を奪って逃走したらしい…

…このままではマズいと特捜隊に派遣要請して秘密裏に処理しようとしていたが、見事にロストしてしまったらしい。そして現在に至る…

…本部の眼鏡を掛けている人はひとしきりに文面を読み上げた後、俺の顔を見て読むのを中止した。何か俺に言いたいことでもあるのか?

「奥の右側の席に座っている君は如月蓮か?間違いないなら起立しろ」     

 眼鏡を掛けた男がそう聞いてきたので俺は素直に起立した。

「はい、如月蓮です」         

 俺の名前を確認した後、眼鏡を掛けた男はもう一人の本部の男と目配せして、俺に向かって退場しろと促してきた。当然、納得がいかないので俺は本部の人に楯突くことにした。

「何故俺は退場しなければならないんですか?理解が出来ません。説明を求めます」        

 眼鏡を掛けた男は眼鏡をくいっと上げて苛つきながら端的に説明をした。  

「説明も何も君は、組織にすら属さないイレギュラーな存在だ。個人的にはさっさと組織から追い出したい所だが、上層部が君を置いている以上逆らうわけにはいかない……だが今回の件は別だ。今回の件は我々が暮らしている日本の政治の中核を担っている者だ。そんな大事な作戦に組織に属さない者が参加する資格ははっきり言って無い……誰が君をこの会議に入れさせたかは大方検討はつくがな。とにかくお引き取り願おう。出口はあちらだ……早く退場しろ」

 ここまで言われるとはな。諦めるしかないのか……俺は仕方なく立ち上がり、前方の郷間の座っている席にさっき乗車したタクシーの領収書を置いて、本部の人を睨み付けながら立ち去ってやった。

 せっかくの収集源が消滅してしまった。どうしようも無くなった俺はとりあえずこの場には居たくなかった為、一階に降りて支部を立ち去った。今日は曇り空で冷たい風邪がやたらと吹き付けてる……嫌な気分だ。

 俺はタクシーを使わず地面を見ながらトボトボと歩いているとビル付近の辺りで誰かに俺の名前を呼ばれた気がしたので振り返ると、そこにはこの前本屋の場所を聞いてきた神崎零が立っていた。服装は夏らしくちょっと渋めな紺色のTシャツを纏い、下に青色のジーパンを履いている。「お前か……まさかまた会うことになるとはな」

              

「如月君にまた会えるとは思わなかったから、正直嬉しいよ……でもあんまり元気が無いみたいだね。何かあったの?」 

 神崎は俺の顔を見て、心配している表情をした。俺はアイツらの腹いせに正直に話そうと思ったがやっぱり組織のことがあるから止めることにした。    

「いや、何でも――」         


「大宮支部で何かあったんだね。もしかしてだけど、君は村上総理誘拐の件で何か悩みがあるんじゃないかな?」 

 ……!こいつ、俺がゼクター大宮支部から出てくるのを見ていたのか?一体何のつもりなんだ?   

「あぁ、誤解しないでくれ。別に見張っていたとかそういうことでは無いんだ……ただ今日はたまたま暇でのんびり散歩していたら君が出てくるのを見かけたんだ。ただ、それだけのことだよ……それに高校生でゼクターに属している人はよく居るし、今日の午後に総理が誘拐されたと全てのニュースチャンネルで言っていたからね」   

 こいつに言い訳は不可能だな……第一俺が支部から出ているのを見られているんだ。重要な部分は隠して話した方が良さそうだな……

「言い訳は無理そうだな。正直に話してやるよ……端的に言うと俺は救出作戦から外された。正式に組織でない人間は不要らしい」

 それを聞いた神崎は眉をひそめ、真剣な眼差しになった。その後、神崎は何か思いつめた表情をして口を動かした。 

「ふ~ん。捜査から外されたんだね。なら良いことを思いついたよ……」    

 何を思いついたんだ?俺が神崎に聞き返すと……    

「僕達二人で手を組んで、村上総理を救出しよう!それが良い!」

 何を言い出すかと思えば、案外顔に似合わず馬鹿な意見を出してきたな……いや、待てよ。コイツがもし、それなりの実力を持っているなら結構好都合かもしれない。

 問題は誘拐犯の居場所が未だに分からないことと神崎の実力がどれほどなのかが分からないことと神崎を信用できるかどうかだ。 

「どうだい、この提案は?」             


「その前に一つだけ質問する……お前は何の目的の為に俺に協力するんだ?確かにお前が手を組んだらこっちは大変ありがたいが、神崎自身の目的が分からない以上、提案を呑む気にはなれない」   

 俺の言葉に神崎は苦笑して笑顔で答え始めた。

「あはは、目的かぁ?うーん、あるとすればちょっとした調査かな?僕は君とは違うけど、別の目的で探っているんだ……だからその為にと言うのはどうだろうか?」

 別の目的……神崎の目的はゼクターについてなのか?だがここで聞いてしまえば、俺もまた答えなければならなくなる。葉月の為にもそれだけは外部に漏らしてはいけない。一応、神崎にも曲がりなりの理由はあるみたいだし、協力することにするか……まだ信用は出来ないが

「わかった、短い間だが宜しく頼む」         


「あぁ!こちらこそ宜しく!」     

 俺と神崎は互いに手を握りあい、今ここに一時的ではあるが協力関係になった。        

「さて、そうと決まったらまずは作戦会議だ……どこか人に知られない場所が良いんだけど」 

 俺は迷わず神崎の自宅が良いんじゃないかと進言するが、神崎は両親が家に居るからと首を横に振り申し訳なさそうに断った。となるとやはり俺の住んでいる自宅か……仕方ない。

 俺は神崎についてくるように促し、一緒に徒歩で自宅まで連れてきた。ゆっくりと鍵のノブを回し玄関へと入っていく……周りも確認。大丈夫みたいだ。  

「お邪魔します……あれっ?誰もいないみたいだね」   

 お前が居たら居たらで姉さんや植木が気を使わせることになるから逆に好都合なんだけどな…… 

「今日は幸いにも俺とお前以外、誰も居ないようだな。とりあえず、リビングはマズいから……二階の左に進んだらすぐにある俺の部屋で待っていろ。お前の分を含めたお茶を持ってくる」

              

「すまない、気を使わせてしまって。では君のお言葉通り、先に行かせてもらうよ」        

 神崎が二階に行くと同時に俺は手洗いに行って、手を消毒してからリビングの棚からガラスのコップを取り出して氷を投入し、冷たいお茶をキリの良いところまで入れた。俺は二つのお茶をあらかじめテーブルに置いてある御盆に乗せて二階に上がり、自室へと入った。神崎は相変わらず優等生らしく、行儀の良い正座で待機していた。 

「神崎、待たせたな……足痛くないか?」

                 

「大丈夫だよ!これくらい!それよりも早く始めようよ!時計の針は刻々と動くからさ!」     

 俺は自室にある二人ギリギリの小さなテーブルに冷たいお茶を二つ置き、作戦会議を始めることにした…………だが、当然まだ犯人の名前や居場所が分からない為、何も手に着くことが無く無駄に時間が進んでいこうとしていた。そんな時、座っていた神崎は何か思いついたみたいで俺にある提案をしてきた。    

「良い提案があるよ。それはバレない服装に変装して会議室忍び込み密かに盗聴器を仕掛けて、場所を特定することだけど――」

              

「それは犯罪に手を染めているから却下だ……他に良い方法は無いのか?」           


「じゃあ、もう一つの提案を提供しよう。これは君に知り合いが居たらの話になるけど、まずは君の電話で知り合いに繋げてスピーカーモードにして欲しいとお願いする。そうすればある程度は周りの部屋の声が聞こえる筈だよ」

 なるほど……確かにこの作戦なら安易に出来るかもしれない。それにこれは相手の同意を求めた上で行う行為だから、犯罪一歩手前で済むはずだ……この提案を受け入れるか。 

「わかった、後者の方でいこう。今からアイツに繋げて許可を取る」

 俺はスマホを手に取って会議をしているであろう郷間に繋げる……頼む、出てくれ。必死に願うこと15コール目で遂にコール音が途切れた。         

「おいおい!そんなに鳴らさないでくれよ!会議中だからブザー鳴りっぱなしで本部の人が睨み付けられて怖かったんだから!」

              

「それはすまないことをしたな……今回電話を掛けたのは頼みがあったんでこうして掛けたんだ」 


「ふ~ん、何かあるんだね。一応聞いておこうか?」

 俺は郷間にスピーカーモードにしてこちらに響かせて欲しいというお願いをした。その言葉を伝えた時、郷間にとってはやはりヤバかったみたいで……   

「俺個人なら賛成だが、ここは組織だからなぁ。バレたら首ごと跳ねられかねんし、そんなことを到底許可は出来ない」

         

「なら、どうすれば良いんだ?俺は本部のせいで動きたくても動けやしないんだ……一応あんた達の責任でもあるんだぞ?何とか出来ないのか?」  


「…………はぁ~わかったよ。俺は立場上絶対無理だが、春日井なら頼み込めばいけるかもしれない。それできっと盗聴が出来るだろう……それでも良いか?」         


「別に構わない。それで頼む」


「じゃあ、これで決まりだな。ちょっとの間待っていてくれ」

 俺はスマホの通話終了ボタンを押して神崎と共にしばらくの間、黙って待つことにした。すると10分後にスマホの着信音が鳴ったので画面を見ると、春日井の文字が見えたので通話ボタンを押してからスピーカーにすると電話先から会議室の声が聞こえ始めた。一番前の席だから、本部の人の声がよく聞こえる……

 これなら場所の特定が出来そうだ。やがて電話先の方から電話の着信音が聞こえてきた。これは恐らく誘拐犯からの電話だろう……支部の会議室は突然の電話に冷静と準備している。時間は15時、いよいよ取引交渉が始まろうとしている……

「では、返答を聞こうか?」 


「その前に色々と話がしたい……まずは何故こんなことを――」

                

「そうやって時間を逸らした所で逆探知が出来るはずが無い。お前らの無駄な時間稼ぎに私は通用しない……さっさと返答に答えろ」

 長い沈黙。何をやっているのかは分からないが紙の音がする……コイツら、まさか       

「わかった。二時間だけ猶予をくれ……頼む。その間に身柄を確実に準備しておく」 


「良いだろう。では、今から五時までには身柄を難我市1――13の今は売り物件となっている島ビル内の一階にて明け渡しだ……その時に君達の大事にしている総理を渡してやろう。ではな……  


「…………よし!居場所はバッチリだな!春日井!」

            

「あぁ、okだぜ!誘拐犯の居場所は難我市から東に離れた宮本市北上町1―5の古びれた格納庫に居る。間違いない!総理の隠しポケットから電波を確認出来たからな!」

 確証は取れた。あとは春日井の言うとおりの場所をしっかりとリサーチして潜入するだけた。俺はスマホの通話終了ボタンを押し、作戦会議に入ることにした。

「居場所は決まりだね。この宮本市の場所は誘拐犯が居るところで、難我市の方は総理の身柄がある場所だろう……きっと両方共に精鋭の部隊を配置しているはずだ」

 敵の狙いは葉月桜の捕獲のみだ。ただ総理という人物を攫えばそれなりの反応があると思って実行したんだろう。だが、結局の所……誘拐犯は今のままでは確実に失敗するのは目に見えてあり得るだろう。ゼクターに捕まるのはもはや時間の問題だ……一体何を考えているんだかよく分からないな。        

「如月君、考えても仕方ないよ。今は僕達が先に誘拐犯を見つけて君のやりたいことをすることが先決だ……総理はゼクターに任せればいい」        

 俺達は急いで、玄関を出て車の出入りが激しい道路に行き、タクシーに手を挙げて乗車した。  

「お客様、どちらに行かれますか?」 


「宮本市北上――」 

 町と言おうした時、突然神崎は俺を右手で制して場所を変更しますと言った。何のつもりだ?  

「今思えばその町に行けば結構な代金が掛かるからね。どうせならと思って君を制止したんだ。すいません、運転手さん!今から大宮市1―5―21の道なりの交差点に行ってください」

               

「わかりました」         


「まさか、神崎。お前は免許を持っているのか?」

             

「勿論、持っているよ。持っていた方が何かと都合が良いからね」

 俺と神崎を乗せたタクシーは右の方向指示器を出して、道路線上を走った。

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