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陥落

「エリー、どうしたらいいだろう?」


会場中を探し回り給仕していたエリーを見つけ、開口一番リリアナは悩みを打ち明けた。


「あらあら…リリアナ様…話がよく分かりませんよ?立ち話のお話ではなさそうなので、こちらで話しましょうか」


エリーもまた手馴れたもの。リリアナがこういう性格であることを熟知している。

リリアナと二人、近くの休憩室に入り……そして鍵を閉めた。


「さて、リリアナ様、いくつか質問しますね」


「あ、あぁ……」


「まず、アレス様を見ると、言葉が出なくなると」


「うん」


「そして胸が苦しくなってモヤモヤしてどうしたら良いか分からなくなって……」


「そう、そんな感じだ」


「近くに女の人がいると落ち着かなくなって……」


「何故それを!?確かにアルカディアの皇女や他の女性と婚約したとの話を聞いたときは……こう、嫌な気持ちになったな」


そう言って俯くリリアナ。


ジオンの娘であるエリーはリリアナにとって幼き頃より姉のような存在であった。そのため何か相談事があると正直に話してしまう。


そんな俯くリリアナを見てエリーは心の中で悶絶する。


(クゥ〜〜〜〜!!恋する乙女のリリアナ様、可愛すぎ!!)


そしてエリーはリリアナが剣だけでなく、普通の女の子と同様、恋愛をした事に喜びを感じていた。


(こんなおもしろ……でなく、大切な事、私が成功させねば誰がやる!!)


エリーはジオンの娘だけあって、リリアナの事を何よりも大切に思っていた……しかし……その性格は残念な女性のそれである。


リリアナに続き……エリーもまた暴走し始める。


「よろしいですか?リリアナ様。リリアナ様は今、殿方に『恋』をしているのです」


「恋!?これがそうなのか?しかし……どうすれば良いのだ?こんなのがいつまでも続くと……私の体がもたない……」


そんなリリアナにエリーは笑顔を向けて言い放った。


「夜這いです!」


「……は?」


「夜這いをかけるのです!!」


「……それは普通殿方が女性にする事ではないのか??」


「そんなルールありません。そこに愛があればありません。」


「………エリー?」


「何です?」


「ではそれはどうやってやればいいのだ?」


心配そうな顔をしているリリアナとは対照的に……エリーはその言葉を聞き、目を輝かせながら含みのある笑顔を見せるのであった。



その後密室となっている休憩室にて。リリアナはエリーから手ほどきを受けることとなった。


「よろしいですか?リリアナ様。とにかく酒を飲ませ、酔ったところを襲うのです」


「とにかく、服を脱ぎ、抱きついてベッドに入ればよろしい」


「アレス様はお酒を飲まれない方と聞いています。そんな方には……」


「はい、こういうことを致しますと殿方は喜びます。はい、握り方が違います。もっとソフトに」


「さらに高等技能となると口を……」


リリアナはエリーから習ったことを心の中で反芻させながら、再び宴の会場に向かう。

しかし……思い返す度に頰が赤くなってしまう。


「ん…、中々難しい……果たして私にできるのだろうか……いや!やるんだ!!頑張れ、リリアナ!」


折れそうな心を奮い立たせ、リリアナが大広間の扉を開けると……しかし、すでに宴は終わりを迎えており、片付ける給仕達が忙しく働いているのみだった。


一瞬固まるリリアナ。しかし彼女はめげなかった。


「終わってしまったのか……しかし、エリーの教えを試すにはには好都合か?」


そう言ってリリアナは近くにある酒瓶に目を留めると…………迷わずそれを手に取った。そして踵を返し、階段を上がっていく。


リリアナは事前にウィリアムから聞いていたのだ。アレスの寝所を。そして迷う事なくその部屋に向かって駆け出したのだった。



「いや〜よく食べたなぁ!!」


アレスは少し出たお腹をさすりながらベッドに横になる。満腹の幸福感が全身を満たしている。


「しかしここレドギアの農作物の豊かさは想像以上だったな……トレブーユといい、レドギアといいこの農作物は今後この四ヶ国連合にとって大きな存在になるかも知れないなぁ」


そんな独り言をこぼし、満腹感を堪能しながら幸せに眠りに落ちようかとしていた時。


コンコン


とノックの音が聞こえた。


眠い目を擦りつつ、アレスが扉を開けるとそこにはリリアナが立っていた。

突然のリリアナの訪問に驚くアレス。そう、この時アレスは完全に油断していたのだ。そしてそれが……この後の悲劇?を生むこととなる。


「おや?リリアナ殿。どうしました?先ほどの宴の時も姿が見えず………んぐっ!?」


アレスの言葉はリリアナの唇で止められた。

突然の事に固まるアレス。


「んぐ?んぐぐぐ??」


慌てて離そうとした時、アレスの口に液体のようなものが流れ込む。


「ふはっ!!っ!いっ、一体何を!?」


見ると顔を真っ赤にさせたリリアナが蕩けたような目でこちらを見ている。


「ア、アレス殿!すまん!!でも、こうすればよいと教わったのだ。ど、どうか受け入れてくれ!!!」


そういうとリリアナは再び抱きついてくる。よく見るとリリアナは体のラインがはっきりわかるほどの薄い布で作った服を着ている。密着されるとその感触と温もりが直で伝わってきた。


「ちょっ、まっ……リリアナ殿、ここは落ち着いて……………ふぇっ……」


そう言うと今度はアレスが後ろに倒れる。リリアナは慌ててそれを受け止めた。


「よし、エリーの言う通りだったな。ワインにエリーから貰ったこの薬を混ぜたのだが……効果は抜群だ……抜群すぎて……アレス殿は大丈夫だろうか??」


しかしリリアナは動きを止めない。扉に鍵をかけると気を失っているアレスをベッドに運びこみ、自らは服を脱ぐ。

そこまで来てリリアナはある事に気がつく。


「………そしてこの後どうすればよいのだ?」


リリアナが首を傾げた時だった。突然声をかけられたのは。


「教えてやろうか?」


振り向くとそこには眠りに落ちていたはずのアレスが目を輝かせながらこちらを見ている。


「ひゃっ!!ア、アレス殿……目を覚ましていたのかっ!!」


「このぐらいで落ちると思ったか?」


そう言うとアレスはゆっくりと体を起こす。


「そ、そのだな、これには色々と訳があって……んんっ!?」


しどろもどろになるリリアナの口を塞いだのは今度はアレスの唇だった。


「ん、ん、んっ、んんっ!!」


先ほどとは異なる接吻。舌が絡み合い隠秘な音をたてる。


唇が離れた時、もはやリリアナの理性は遠くに遠のいていった


「リリアナ……貴公は俺に『受け入れて』と言ったな……あぁ、受け入れよう、其方の全てを。ただ……」


そう言うとアレスはリリアナの顎を撫で、再び唇を重ねる。最早リリアナは抵抗をしない。黙って受け入れている。そして唇を離し言葉を続けた。


「俺もまだ正式な婚姻を結んでない身だ。最後までは行うつもりはない……が、身も心も俺のものにしてやろう」


そう言うと再び唇と唇が重なり、部屋に隠秘な音が響き渡る。そして二人はそのままベッドに倒れこむのであった。




朝になりアレスは目を覚ます。


「す……すごい夢をみた……」


そう………またしても酒の席でやらかしてしまった……そんな夢だった。

アレスはそう思い、溜息を一つ着いた時、自分の布団が股下あたりで膨らんでいることに気がつく。


冷たい汗が背中を流れる中、そっと布団をはいでみると、そこには、あられもないすがたのリリアナが幸せそうにこちらを見ていた。その口には……


「おはようございます、旦那様」


「夢じゃねええええぇぇぇぇぇえええ!」



レドギアが誇る難攻不落の白銀の姫騎士リリアナは……こうしてアレスによっていとも簡単に、身も心も陥落したのであった。





リリアナ・レドギア・シュバルツァー


白銀の姫騎士と名高いレドギア屈指の名将にてアレスの妃の一人。

「黄金の戦乙女」シャロンとともにアレスの将、および副官としてともに戦場を駆け回ることとなる。


聖剣アルフレックスを使い、敵を倒す姿は兵を奮い立たせ、女神のように尊ばれた。


しかし、彼女がほしいものは名声ではなく。


英雄皇の「愛」だけであったという。


少しでも敵意があれば、アレスは気付いたんでしょうが……好意に関してはアレスは非常に鈍い。

まさに弱点ともいえるでしょう。

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