表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄の中の英雄の物語 〜アレスティア建国記〜  作者: 勘八
第2章 〜グランツ攻防戦〜
83/189

魔剣グラム

シグルドはアレスが『武天七剣』から新しい剣を出したことに驚いていた。


(まさか……アレス様が新しい剣を出すことに成功させるとは……)


シグルドは思い出す。アレスは武天七剣の新しい剣を出す条件で何と言っていたのかを。


〈新しい剣を取り出す条件は、強敵と戦う経験。しかも尋常じゃない敵……それこそ自分が追い込まれたと思うほどの敵が現れた時だろう。シンはそういう風に言っていたよ〉


「となると……やはりダリウス卿はそれほどの実力者ということか」


複雑な感情がシグルドを襲う。


自身が敬愛する主、アレスに匹敵する者がいる……それを認めたくない、という感情。


そしてもう一つは。


戦いたい。戦って己が全力をぶつけてみたい。


二人の戦いを見守りつつ……そんな事を考えているシグルドであった。




「なんだ?その剣は……?」


ダリウスは訝しげにアレスの新たな剣を見ている。


不思議な物を持っている、そうダリウスは武天七剣を見て思っていた。


見えない斬撃を飛ばす、青い魔力を帯びた剣。明らかに魔力や闘気、そして身体能力までも向上させた白い魔力を帯びた剣。


そして次は……


「禍々しいまでの赤い魔力を帯びた剣……か」


アレスはと言うと、己が取り出した新しい剣を黙って眺めつつ、握りを確かめている。


「さて、今度はどんな驚きを見せてくれるのか……楽しませてくれ!」


そう言うとダリウスは長槍を振り回しながら、アレスに向かい突撃をする。


その瞬間……キッとダリウスの方を睨んだアレスはおもむろにグラムを振り被る。


すると轟音と共に恐ろしいまでの暴風が巻き起こった。


「なっ!!」


思わず足を止めるダリウス。


アレスはその様子を眺めながら独り言のように呟いた。


「魔剣グラム……その特殊能力は攻撃力向上……『金剛力』とでも言えばいいのかな……?」


そして今度はグラムを両手で持ち、ダリウスに向かって構えた。


「さて、お待たせしたね、ダリウス卿。どうやらここからは本当の勝負ができそうだ。行かせてもらうよ!!」


そういうと、アレスはダリウスに向かって走っていくのだった。





すでにアレスの魔剣グラムとダリウスの黒鉄の削り出しでできた長槍が50合以上合わさっている。辺りは魔力や闘気がぶつかり合い、原型をとどめていない。

二人とも、さすがに息が乱れ始めている。言葉を交わす余裕も、もはやなくなっていた。


アレスは再びグラムの刀身に魔闘術を伝える。刀身が血のような赤い輝きを増す。

狙いはダリウスの槍を破壊すること。すでにアレスはダリウス本人の首を取ることをあきらめていた。持久戦になれば分が悪い。ならば確実に勝利をつかむためには…その武器を破壊し、戦闘不能にする他はない。

しかしダリウスの槍の素材はその硬度と重量から「鉄の王」と呼ばれる希少金属「黒鉄」を削り出した特注品であった。


だが、どんなものも必ず疲弊し、劣化する。

アレスの持つグラムの一撃は他の剣とは異なり、確実に黒鉄にダメージを与え蓄積させていた。


(次の一撃に魔力と闘気を一気につぎ込んであの槍をたたき切る!)


アレスは再び襲い掛かってきたダリウスの猛攻をよけながら隙を窺っていた。

そしてダリウスが猛然と槍を突き出した瞬間


「ここっ!!」


アレスは身をよじらせ躱した後、上から下にグラムを振り下ろした。


ガキン


鈍い音を立てる黒鉄

それと同時に黒鉄の槍は柄の部分から真っ二つになった。


「!!? 馬鹿な!!」


アレスの魔剣グラムは黒鉄の長槍を叩き折った勢いのままダリウスに襲いかかる。しかしダリウスもさるもの、槍が折れた瞬間その場を跳び下がった。


しかしそれでも、グラムの先が届いたダリウスの胸当ては叩き切られ、ダリウスの胸から鮮血が飛んだ。


飛び下がったダリウスは折れた長槍を眺めながら呆然と立ち尽くした。


「まさか……この特注の槍が折られるとは……」


「さぁ…獲物がなくなったけどどうする?」


アレスはダリウスに問いかける。


「くっ!」


ダリウスは一瞬渋い顔をした後


「く……っくははははははははははははははは」


大きな声で盛大に笑った。


「まさかこの槍が折られるとは思いもよらなかった…この勝負まずは俺の負けだな……」


そういうとダリウスは黒鉄の槍を投げ捨てる。


負けを認めるその潔さ。その笑顔から発せられた言葉にアレスもまた笑った。今までの戦いが嘘のように。






その時だった。

魔境の大地全土から地鳴りのような音が響き渡ったのは。






アレスとダリウスはその音に気づき、丘の下に視線を動かし………共に絶句した。


何十、何百、何千、何万、何億…


数えきれないほどの魔獣たちがグランツ公国首都ハインツを目指し魔境の大地全土…森や林や地中や川や沼…いたるところからあふれ出てきたのだ。

よく見ると、妖魔貴族の姿も見られる。妖魔、魔獣いずれも目はうつろであり正気ではないことが遠目からでも分かった。


「どういうことだ…?こんなことはかつてないぞ?」


ダリウスは呆然と呟く。そしてアレスもまた一人静かに呟いた。


「魔獣たちは完全に狂っている……この狂い方は……『魔王ガルガインの遺物』の影響?」


振り返ると、今まで二人の戦いを見守っていた兵たちが騒いでいる。特に……故郷をこれから踏み躙ろうとされているグランツ兵の動揺は大きい。



兵たちの動揺を見、そして魔獣たちの様子を確認しながらアレスは困惑しているダリウスに話しかけた。


「ダリウス卿。このままいくとこの魔獣たちは我々を蹴散らしハインツになだれ込むだろう…」


「だな…そして我々もハインツも魔獣の群れに飲まれて…おしまいか…」


苦い表情でダリウスが呻く。


ダリウスの呟きには答えず、アレスは別方向に向けて声を上げた。


「ゼッカ!!」


「はっ!こちらに」


アレスがゼッカの名前を呼ぶと、どこからともなく現れゼッカはアレスに傅いた。


「アルカディア正規軍はどう動いている?」


「それが………」


ゼッカはすこし言いよどむとアレスに言いにくそうに伝えた。


「アルカディア正規軍、デパイ川にて鉄砲水が起こり現在セインツに向かうことはできず……一時レドギア方面まで引いた様子です」


「………そうか……」


アレスはそう呟くと静かに考えを巡らせる。

自らの先陣、図ったような魔獣の襲来と天候不順でもないのに起こったデパイ川の氾濫による正規軍の退却。


「どう考えても仕組まれたな。サイオンめ、闇の勢力と手を結んだか……これは完全に予想を超えていた…」


そう言うと意を決したようにダリウスに話しかけた。


「ダリウス卿!汝はこの苦境を脱する方法があるか!?」


「俺一人ならなんとかなるが………ここにいる仲間とハインツ全体は到底守れん」


そういうと苦虫をかみつぶした表情で雲霞のように群がる魔獣の群れを眺めた。


「なら……俺の指示に従え」


アレスは静かに、そして威圧的に言葉を発する。


「もはやアルカディアの大軍もあてにならず。俺も見捨てられた身の上だ。だが俺ならここにいる軍勢も、そしてハインツも救うことはできる……俺に力を貸せ」


当初とは打って変わって荒々しい口調になったアレスをダリウスは眺めた。


アレスは魔獣の群れを眺めながらダリウスの方を一瞥たりともしない。ただ返答を待っている。


「…………確実に救えるか?」


「お前が手伝ってくれるなら確実に救ってやる」


「…………いいだろう。面白い」


そういうとダリウスは近くにいたディルクにむかって声を掛けた。


「今より全軍、アレス・シュバルツァーの指示を受ける。責任は俺がもつ。そう全軍に伝えろ」


「いいので?」


「それ以外方法はあるか?」


そういうとダリウスは再びアレスの方を見る。


「奴はこのセインツを救うと言った。俺には手はない。なら奴にかけてみるのも一興」


そう言うとダリウスはディルクに笑いかける。


「それに……槍を交わせば分かる。奴は嘘をつかないさ。なぁアレス・シュバルツァー殿」


アレスはその声に返事をせず…ただニヤリと笑った。






こうして今みで敵同士だったアレスとダリウスの軍勢は合流してグランツ首都ハインツに退却した。


そしてここから…英雄皇アレスと魔獣との攻防戦として歴史的に名高い「ハインツの奇跡」が始まるのである。

混乱しそうなのでまとめますと……


魔力による能力向上、および闘気による能力向上を自分の能力+1〜3としますと、


魔闘術は闘気+魔力の能力強化だと思ってください。(魔力で+2、闘気で+2なら合わせて4ほど)


尚、アルフレックスの身体強化は+2〜3、エクスカリバーでは3〜5ほど。


そしてグラムの『金剛力』では攻撃力のみ+10ほどです。


グラムによって、他の能力が下がっても攻撃力が大幅にアップしたといえます。


さらに、聖剣や魔剣の特殊能力の上がり幅は持ち主により変わります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ