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英雄の中の英雄の物語 〜アレスティア建国記〜  作者: 勘八
第2章 〜グランツ攻防戦〜
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グランツ公国

「一体どういうつもりだ?」


皇帝セフィロスが退出し、諸侯達が解散した後の大広間にて。シルビアはアレスをつかまえて問いただした。


「今回後詰めになったのは、どう考えても他の者たちの嫉妬ではないか。そなたはそれで良いのか?功を取られるぞ」


アレスはそう詰め寄るシルビアを見て


「こうなることは予想していました。確かに嫉妬されるほどの功績はあげたでしょうね」


そう言うと静かに微笑んだ。


「しかし今回はこれでいいんです。諸侯達はこれ以上私達に功をあげられないよう仕組みましたが…グランツの兵は大陸でも一、二を争うほどの精強な軍隊です。ザクセン大公とカルロス殿下をもってしても、そう簡単に落とせないでしょう。そして例えアルカディア帝国全軍をもってしても…難しいのではないかと見ています。我々の出番は近いうちに必ずきます」


シルビアはその言葉に驚く。


「馬鹿な…総兵力にして3万ほどと言うではないか。我が帝国軍は今回総勢30万。いくらなんでも…」


「向こうの総兵力は5万との情報を受けました。隠している兵がいる模様です。そして…兵の練度が違います。その兵達を優秀な将が率いたなら…恐らく手が付けられないでしょうね」





グランツ公国は地理的にも文化的にも特異の国である。

西はアルカディア帝国、自国の東は大山脈に囲まれ、北部は広大な草原。南にはレドギアを介して東方諸国に連なる。

東方諸国からコブの様にとびだした地形。


「呪いの地」


グランツはそう呼ばれていた。


北方の草原には騎遊民と呼ばれる異民族が存在し、常に略奪の恐怖にさらされていた。


東方の山脈には人との交わりを嫌う純潔のドワーフ族がおり、小競り合いが絶えない。

そしてその山脈の南方、さらに高度の高い地にアーリア人と呼ばれる異民族が存在していた。彼らは戦闘民族と呼ばれるほどの武力を誇り、それが時折現れては街や村を荒らして行く。


それだけではない。西方には『魔境の大地』と呼ばれる魔族、魔獣が棲まう地がある。ここを統べているのは妖魔貴族だ。

彼らは滅ぼされた魔王の血縁者と呼ばれるほどの絶対的強者なのだ。


グランツ、レドギア、トレブーユ、ブルターニュ…この4ヶ国を手に入れれば確かに東方諸国制圧への道が増えることとなる。しかし、アルカディアにとってグランツを手に入れることはこれらの要因も抱えることとなるため、今まで二の足を踏んでいたのだった。


そしてグランツ公国が精強な理由…それはそれら異民族達や妖魔貴族率いる魔族や魔獣達と戦い続けた事実に他ならない。

それゆえ彼の地では亜人に対する差別もない。強さこそが正義、守り抜ける力をもつものが讃えられる国にあって、それらは些細な事にすぎないのである。





「グランツの優秀な将となると…グランツ公ゲイルのことか?しかし彼はもう病で…」


「グランツ公ゲイルの勇名は天下に轟いています。しかし今は病に倒れ、戦陣に出ることは難しいでしょう。ですが…どうやら、その子息が優秀のようです。特に今まで話題に上がらず、名を聞くことはあまりなかった嫡男ダリウスの武勇は、父を超えるとのことです」


「ダリウス?聞いたことがない名前だが?」


「領内の妖魔貴族や北の蛮族達を相手にしていたと聞きます。国家間の戦は参加していなかったみたいですねぇ」


シルビアはしばらく考えた後、アレスに問いかけた。


「では、我々はどうすればよい?」


「今はとりあえず陛下とともに後詰めに参加して、様子見です。戦況が動くまで…待ちましょう」


そう言ってアレスは不敵に笑う。


シルビアもまたその笑顔を見ながらも……眉間の皺は険しいまま、これから起こるであろう戦いに思いを馳せるのであった。







一ヶ月がたちました。


皆さま、コメントありがとうございます。


メチャクチャ励みになりました。



とりあえず一ヶ月続けると宣言しましたが、キリが悪いので、この第2章が終わるまで毎日投稿させていただきます。

よろしくお願いします。

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