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開戦前

「ふぅ……」


アレスは部屋に戻ると自室のソファに倒れこむ。側にはシグルドしかいない。


ユリウスもシータも、そして他の何人も入らないように屋敷には伝えている。


「お疲れ様でした。いかがでしたか?」


シグルドはそんなアレスの姿を見ながら苦笑した。


「貴族の相手をするのも疲れるもんだ。皆、好き勝手な事を言うんだもん。自制するのが精一杯だったね」


そう言うとアレスはうんざりした顔をする。


「まぁ……収穫も多少あったけどね」


そう付け加えてアレスはコーネリアの顔を思い出した。

バルザックの話を聞いていた時では興味の対象でしかなかったが、今は全く違う。彼女に出会い。そして彼女と話をするうちに……コーネリアの魅力に引き込まれる自分がいた事に気付く。その美しさは確かに万人を魅力するだろう。たくさんの美人を見て、そして囲まれているアレスをしてもびっくりするぐらい美しい。しかし、そこではない。アレスが引き込まれたのは彼女の『志』の高さだ。


「私はこの帝都にいる人々の生活を変えたいと考えています。もし、よろしければお力を貸していただけませんか?」


彼女はそう言い切った。言い切った時のその態度……あれこそまさに『王者の威風』……


その場にいた者達……百戦錬磨の名将シルビアもそしてアレスですら彼女のその威に飲まれたほどだ。


彼女を旗頭に帝国を変える……そのプランをアレスは帰り道に頭の中で描き始めていた。


「いずれにしてもまず初めに目の前の事を片付けてからだ。シグルド、3日後に軍を出す。準備は」


「整っております」


「よし。この後陛下から数枚の書状明日には受け取る予定だ。それを貰ったら、出立する。後は……ゼッカ!!」


アレスが大声をあげると何処からともなく、アレスの横に人影が現れた。


「はっ!お呼びで」


「調べて欲しい事はもうやってくれたかな?」


「ブルターニュ諸連合は現在傭兵を雇い応戦する様子。その数1万ほど。トレブーユ王国には大きな動きはありません……というよりも、貴族が足を引っ張りあうために動けないでしょう。レドギアはすでに情報を仕入れた様子で彼らの誇るラッセ要塞、ソラン砦に兵を置き、彼らの誇る『金虎将ジオン』『銀熊将ガーン』『白銀の姫騎士リリアナ』のレドギア三将が王都を立った模様」


「レドギアの王都に兵は?」


「守護兵として1000いるかいないか、かと」


「ブルターニュの傭兵の質は?」


「下劣です。悪名高い者たちばかりのようです」


アレスは他にもいくつかゼッカに質問し、ゼッカもまた流れるようにスラスラとそれに答えた。

シグルドはその様子を黙って見ながら聞いている。


「よし、大体の事は分かったかな」


そう言うとアレスはシグルドの方に向き直った。


「シュバルツァー家としての今後の方針もそしてこの戦のことも。大体定まったよ。後は……足を引っ張られないようにしていかないとね」


そう言いながら目の前に積まれた資料を徐に手に取る。そしてパラパラと中身をめくる。


「やはり恐るべきは身内かな?カルロス殿下あたりは露骨に何か仕掛けてくるだろうけど……まぁ、そこは心配する必要はないか。ジョセフ殿下は何もできないし、ブレーンもそれほど優秀ではない。ロンバルディア家はさしたる動きはしないだろうし、ザクセンも……大公がプライド高い男だから何もしてこないか。危ないのは……ローゼンハイムのサイオンか。あいつだけは気をつけないと」


そう言うとシグルドの方に目を向けた。


シグルドも思わず姿勢を正す。


「シグルド……今回の戦の目標、それは『誰も何も言えないほどの功績を残す』事だ。それを成す事で僕が陛下の家臣の中でも一目置かれる存在に躍り出る。それが狙いさ。そのために……」


一呼吸ついて、そしてアレスは言った。


「陛下の親征だけど、僕はこの4カ国、全てを僕一人で落としてみせようと思う」


「珍しい事を申します。いつもなら9割はアレス様が行い、最後の1割を総大将……今回なら陛下に譲るのに」


「確かに無用な怒りを買いたくないから、仕上げを譲る場合が多かった。でもね……」


そう言ってアレスはニヤリと笑う


「今回の戦は僕にとってとても大きな一歩になると思う。その土台づくりをする上でも、絶対にやり遂げたいと思っているよ」



シグルドは思う。


今回アレスは並々ならぬ決意を胸に秘めている。この戦でどのように世が変わるかは分からない。ただ……自分はこの人のためにその剣となるべく努めるのみだと。


アレスの元に出陣命令が下るのは次の日の事。

第一陣としてアレスがブルターニュ方面へ、そして第二陣としてカルロス第一皇子、そしてザクセン大公がレドギア本国へ。さらに第三陣としてシルビアがアレスの後詰に。


レドギアが落ちた後、セフィロス率いる本陣がその地に拠点を置く事が発表される。



命令を受け、アレスはすぐに動く。


まだ、太陽が登らない夜明け前。信頼する股肱の臣、そして漆黒の軍団と共にアレスは帝都を出立した。


月明かりで照らされら道を走り、先頭をひた走る主人の背中を見ながらながら……シグルドはこれから変わっていくであろう己の生き方に思いを馳せるのであった。

とりあえず長かった第一章はお終いです。


次回より第二章に入ります。とうとう戦闘シーンに移ります。お待ちくださった方々ありがとうございました笑


とりあえず、まずは一月、毎日投稿したいと思ってます!

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