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ロザンブルグの三姉妹 三女シンシアの話

あぁ、全く。アレス兄様が絡むとどうして我が家の者たちはあぁも情けなくなるのでしょう?


あの凛々しいお父様も腑抜けた顔になり、あのしっかり者のロクサーヌお姉様は盲目に、そしてミリアお姉様は煩く……あ、ミリア姉様はいつもと同じか。


それにしてもお父様とロクサーヌお姉様がひどい。

あれでは絶対アレス兄様の迷惑になってしまいます。


アレス兄様が来て以来、お父様はよく自室でブツブツ独り言を言う様になりました。


「何がなんでもシュバルツァー大公家との縁を繋がなければ。どんな手を使ってもだ!!」


お父様。それは悪人のセリフです。

ロザンブルグ家の中で一番アレス兄様に惚れ込んでいるのは間違いなくお父様だと思います。


お姉様に至っては、いつの間にか作っていた『アレス兄様人形』をあの豊満な胸に埋めながら


「あぁ、アレス様。私の全てはあなたのものですわ……」


そんなこと呟きながら、紙面にアレス兄様の名前を書き連ねているのです……いや、怖いです!!それ呪いをかけている人です!!明らかにヤバい人のやることです!!


と言うより、もう行き遅れとか陰口を叩かれるくらいの歳なんですから。…なんで年頃の乙女みたいなことやってるんですか!!……ん?なんか背中が冷たくなってきたから、この話は無しという事で。


あぁ、どうしてこうだからアレス兄様がちょっと引いてるって分からないのでしょう?……明らかにこの前引き攣った笑顔をしていたのに。


そう考えるとやはりこのロザンブルグ家でまともなのは私ぐらいだと思います。やはり……私がロザンブルグ家の代表としてアレス兄様のお側に行かなければ。

ロザンブルグ家はただの変人揃いだ!と思われてしまうし。


ん?なんか自分の美味しいところに持ってこようとしてると?

そんなつもりはないですよ?だけど……兄様にこのブレスレットを貰って自由の身になって以来……私だって姉様達と同じくあの方への想いは強いんです。

だからこそ、しっかりとあの方を支えられる人になりたい……まだ、幼いけれどいずれはそうなりたいと思っています。




「これをつけてみてくれないかな?」


アレス兄様はそう言って私に銀色のブレスレットを手渡しました。


「三姉妹全員がそれぞれ違う属性だからねぇ。うまくいくといいんだけど」


アレス兄様が私に渡したのは魔力調節ブレスレット。銀色に輝くとても美しいブレスレットです。


ロクサーヌお姉様の属性は水、ミリア姉様は火、そして私は風とそれぞれ属性が異なります。それゆえ、アレス兄様はそれぞれに違う技術を取り入れた、と言っていました。話の内容は難しすぎてわからなかったのですけど……


「アレス殿、素晴らしい!!このような技術を見れるとは!!」


お父様が何やら感動しています……お父様、今はちょっと邪魔です。


小難しい話は抜きにして、私はこのブレスレットを貰ってとても嬉しかったのを覚えています。


理由は二つ。


一つ目はこれで私の魔力が暴発することがなくなり普通の子女のように生活できるようになったこと。


そして二つ目は……初めての殿方からのプレゼントだったこと。


あの当時、私の年齢は12歳でした。でも……ハッキリとあの瞬間、私はアレス兄様に恋をしたのです。


そして決意をしました。姉様達のように魔力をコントロールできるように修練し、アレス兄様のお力になりたいと。


あれから数年が経ち私は帝都の学院の魔導科に通っています。それだけではなく屋敷では姉様達と魔法の修練をしています。今ではだいぶコントロールができるようになりました。


学院での生活はとても楽しいです。もう、姉様達を『ロザンブルグの魔女』と呼ぶものはいません。むしろロクサーヌ姉様は古代龍(エンシェントドラゴン)を撃退した英雄として名を馳せるようになりました。私は『龍退治の英雄』の妹として、別の意味で注目されるようにもなりました。


これも全てアレス兄様のおかげだと思います。だからこそ。この力を確実にコントロールできるよう、今は毎日の修練を頑張りたいと思います。



ロザンブルグ家は魔術の名門家系として帝国内で有名である。

そのため多くの貴族が彼らを自分の派閥に取り込もうとしていたが、彼らは決してさらに靡こうとはしなかった。


しばらく後、ロザンブルグ家はシュバルツァー大公家の寄子になり、傘下に加わることとなる。それと同時に中立を保っていた多くの魔術師達もこぞってシュバルツァー大公家の傘下に加わったとされている。

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