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セラ・シュバルツァー

「……到着早々アレスは行方知れず……ということなのね?」


現在の屋敷の主たるエドガー・シュバルツァーの正妻、セラ・シュバルツァーはそう、小さな声で問いかける。


「はっ!申し訳ございません」


シグルドと女中頭のマーサ、そして家令(執事長)のバートンが同時に頭を下げる。


「申し訳ありません。ただ……アレス様はどうやらやらねばならぬ事があるらしく……」


そう口ごもるシグルド。そして隣にいたバートンもまた口を開く。


「本来ならセラ様に一番最初に挨拶をしなければならないのですが……私が戻ってきた時にはもう、若はおりませんで……」


その言葉を聞き、セラはクスクスと笑った。

「いいのです。だれもあの子を縛ることはできません。自由にさせてあげてください…おそらくは西地区にでもいったのでしょう」


そして言葉を続けた。


「それにあの子のことです。どうしても最初にやらなければならないことがあったのでしょう。そのうち帰ってきますよ」


そういうとセラは窓の方を見て、そして思い出したように問いかけた。


「そういえば、ユリウスはどうしたのかしら?どこにも見当たらないのだけど」


「はい。外門でアルベルト殿とともに、アレス様を今か今かと待っています。」


「そうね。あの子にとってアレスは神様みたいなものだから」


そして優しく微笑むととバートンに指示を出す。


「ごめんなさい、ユリウスを戻してきてもらってもよろしいかしら。私の勘ですけど…アレスは今日は帰ってこないわ」


そしてもう一つ付け加える。


「後、黒薔薇の館のマリアちゃんに連絡を取ってくれるかしら?アレスが来たらユリウスが待ってるから早く帰ってからように伝えてくれって……」



神聖アルカディア帝国では爵位を持つものは皆帝都に屋敷を構えることが義務付けられている。そして本人が領地に帰った場合は必ずその屋敷に妻と子を残して行かなければならない。いわば反乱を防ぐための人質である。

シュバルツァー家もその例外ではなく、エドガーの正妻セラと次男のユリウスが帝都に残り、暮らしていた。


セラはロードマン侯爵家の長女として生まれた。

元々は皇室に嫁ぐよう、ロードマン家で育てられたが、エドガーがとある宴にて一目ぼれをし、熱烈に口説いた末に夫婦となったらしい。

夫同様穏やかな性格として知られていた。その反面、困難にあたっても毅然とした態度をとり、対応することができロードマン侯爵からは、彼女が男だったらと何度も嘆かれたと言われる。エドガーが出征し不在の時も、アレスが高熱を出した時も、そして先人の記憶を継いだと聞かされた時も動じることなくそれを受け入れていた。


今は夫に代わり帝都でのシュバルツァー家の屋敷の主として名が知られている。

それは、屋敷の華としているのではなく、常日頃から召使たちとともに様々な身分の人たちを助ける奉仕活動を積極的に行ったり、また孤児院を設立し身寄りのない子供たちを救ったりしているためであろう。


さらに持ち前の度胸と、歳をとらないその美貌、さらにその政治的手腕で皇宮のサロンでも彼女は一目置かれており、陰ながらシュバルツァー大公家を支えていた。

噂が好きな貴婦人方を手玉に取り、渡り歩く様はまさに大公夫人としてふさわしい態度であった。


そして何より……アレスが逆らう事のできない数少ない人物の一人なのである。



「まったく、アレスときたら…母と弟をヤキモキさせるなんて相変わらず変わってないわね。どうお仕置きしようかしら」


そういって悪戯っ子のように笑うセラだった。

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