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帝都西地区にて

アレスが向かった先は、帝都の西地区。そこに豪奢に佇む一軒の娼館だった。


その大きな門をくぐり、大きな声で


「久しぶり!!」


と声をかけ、中に入る。と同時に奥から声がかかった。


「ちょっと、お客さん。まだ時間じゃないから入れないよ!……って、おや?あんたアランじゃないのさ。随分とご無沙汰じゃないかい??」


そう言って、奥から現れたのは多少乱れた服装の若い女性。まだ寝起きらしく、化粧はせず、髪もボサボサだ。


「やぁ、バルバラ」


そう言って親しげに笑うアレスにバルバラと呼ばれた女性は首を捻って質問する。


「あんた、門の前の用心棒はどうやって説得したのさ?」


「ん?あぁ、通してくれなかったから、ちょっと眠ってもらってる」


「……実力行使ってとこね……全く。で今日は何しにきたのよ。ってか、いつから帝都に戻ってきたのよ」


「戻ってきたのは今日だよ。どうしてもカーラに聞きたい事があってね。今いるかい?」


「ちょっと……あんた、姐さんだけなの?」


そう言うとバルバラは眉間に皺を寄せ、少し不機嫌そうに言葉を続けた。


「久しぶりなのにそれだけかい?皆、あんたがいなくなった時、どれだけ落ち込んだと思ってるのよ……マリアなんかこの世の終わりみたいな顔をしてたのにさ……ウブな顔して女泣かせなんだから……カーラもそうだけど、他の皆にも挨拶忘れないでよ!?」


「あー、バルバラ得意の小言は後で聞くからさ。とりあえずカーラを呼んでよ。急いで話をしたいことがあるんだ」


「まったく、話にならないね……ちょっとカーラ姐さん!お客さんだよ!アランが帰ってきたんだ!」


アレスの言葉を聞いたバルバラはさらに渋い顔をしたが、それでも奥に向って大きな声をあげた。

しかし、その声を合図に


「アランだって?」

「帰ってきたの??」

「もう、会えないと思ってたのに!」


次々とドアが開くと、沢山の女性が現れる。どうやら休憩中の様で、皆化粧もつけず気軽な格好で過ごしていたらしい。多くの女達が騒ぎ始め、アレスの元に駆け寄る。その場は大騒ぎとなった。


対するアレスは薄い布を纏っただけの女の姿に顔を赤くし、しどろもどろになって返答した。


「いや、その、後で話をするから今は女将さんを…」



「静かにおし!!」



と同時に娼館に大きな声が響き渡った。その場が一瞬にして静まり返ると、そこにいる全員がその声の主の方に顔を向けた。



この西地区において60〜70番代の番地は他の地とは一線を画す。

西地区は基本貧民街であり、衛生的にも良いとは言えない。しかし、この地区は街並みも整っており、豪奢な建物などが目立つ。一見すると、北地区や東地区の高級住宅かとも思ってしまうが……その地を歩いている人間を見て多くの人が気付くはずだ。


あれは堅気の人間ではないことに。


そんな西地区61番地。ここは帝都の中でも最大の『花街』として有名である。そのため、南地区や東地区、果ては北地区の人間も足を運ぶ場所となっている。


そんな中でも最大の規模をもち、この花街の顔となっている娼館がある。それが、


「黒薔薇の館」


である。

その客は下は平民から、上は豪商。そして多くの上級貴族も御用達と言われるほどだ。


そんな最大の娼館を一手に仕切っているのがこのカーラと呼ばれる女性である。

髪はウェーブがかった亜麻色。身体つきは縦にも横にも大きく、顔つきも険しい。見た所は、少し近寄りがたい感じがするだろう。

しかし、心根は非常に優しく、義理堅い。そして何より度胸があって世話好きときており、ここの娼館の女たちにとっては母と同様、西地区の住民からもとても慕われている女性だった。


「アランかい?久し振りだね。こんな所に何しに来たのさ?」


「本当はもっと後に寄るつもりだったんだけど……帝都も随分変わったみたいだし、情報が欲しくなったんだよね。だからカーラにお願いしたい事があってきたんだ。」


アレスがそう言うと、険しい顔をさらに険しくさせてカーラが言った。


「ここじゃあどうしようもないね。とりあえず私の部屋においで。どうせ厄介事なんだろう??」


頷くアレスを尻目にその言葉を聞いて周りの女達が騒ぎ出した。


「えぇ〜、アランと話がしたいよぅ」

「ねぇねぇ、まだ、童貞なんでしょ?あたしとした約束覚えてる?」

「ちょっとまって、さりげなく何抜け駆けしようとしてるのよ!」

「私とも約束したよね。忘れないんだから!!」

「私の…」


あまりの騒ぎに次第にカーラの眉間に血管が浮き出る……そして大きな声で叫んだ。


「いい加減におし!!」


その声に再びビクリとする一同。


「まずはアランの用事をすませてからだよ。アラン!今晩は泊まるんだろ!?」


「うん、そのつもりだけど…」


その声を聞いて再び女達の歓声があがり、大騒ぎになった。


「夜は空いてるってさ。だから、その時にでも話を聞きな!だから早く私の部屋にきな。要件を聞かないと何も分からないじゃないか、まったく」


「姐さん、アランいじめないでね!」

「食べちゃうのもダメだよー」


その様な歓声を背に受け、少し苦笑しながらアレスはカーラの後を着いていく。その様子を見送った後、バルバラは近くの女に声をかけた。


「ちょっと。マリアはどこにいる?」


「え?あの子なら今、外で洗濯か何かをしていると思いますけど?」


「急いで呼んでおくれ。あの娘にとっては何よりも大切な事だろうからさ」




アレスとカーラが部屋に入ると、カーラはさっきとは態度を変え、恭しく膝をおり、頭を下げた。


「お久しゅうございます。アレス様。その後お変わりはありませんか?」


「あぁ、特に変わりはないよ。で、こっちはどうだい?」


「西地区は相変わらずって感じですかねぇ。最近はまた人が増えたみたいですよ」


「地方から人が流れているのかな??」


そうやってアレスが首を捻ると、カーラは複雑な顔で言葉を続けた。


「違いますよ……どうにも南地区から逃げてくる者たちが多くて……獣人なんかは特に多いんですよ」


「どういうこと?」


「南区の人達の人種差別、身分差別が激しくなったようです……向こうによく使いに行かせるマリアの話だと、以前より役人や教会の横暴も酷いようですね……あちらに比べると西地区はそのような影響は少ないですから……」


そう言った後、カーラは話題を変えた。


「ところでアレス様。何か私に用があったみたいですが??」


「あぁ、そうなんだ。お願いがあってきたんだよ。」


そう言ってアレスは真面目な顔をカーラに向けた。


「西地区全体を仕切っている男……バルザックに繋いでもらいたいんだ」



黒薔薇の館から、少し離れた場所。西地区の中でも66番地は帝都の中でも最も欲望渦巻く地である。一見したところ、豪奢な建物が多く、北地区や東地区と見間違えそうになる場所だ。ではなぜこれほど発展しているのか?それは奴隷商や違法組織などがここを拠点としており、金を落としていくからだ。


そんな66番地の奥に立つ、最も大く、豪奢な建物。

他とは全く異なる、異様なまでの大きさと、その怪しい建築様式。

何よりそこを訪れる客。平民や貧民達だけでなく、多くの貴族や豪商が自らの馬車を乗り合わせその建物に立ち寄るので非常に目を引くのである。


一体中で何が行われているのか?それを知る者は中に入る事ができる者に限られている……



アレスとカーラが向かったのはそんな建物だった。


「相変わらず繁盛しているみたいだね……ここも。」


「……バルザックから聞いてるよ。あんたも一枚噛んでるんだろ?」


カーラは普段は「アラン」として対応してくれる。それがアレスにとって心地よかった。


「ここが立ったのはあんたが来てすぐのこと。そしてここが帝都最大の賭博場になったのはあったが去った後。バルザックに何か吹き込んだんだろう?」


アレスはそれを聞くと何も答えず静かに笑った。

そんな時。


「おい!お前ら、ここはお前みたいな女と子供がくるところじゃねぇぞ!」


と入り口に立っていた見るからにチンピラの格好をしている若い男に二人は絡まれた。


「お前らみたいな奴が何の用だ?場合によっては命がなくなるぞ?あぁ??」


凄んでくる男だが、その様子を見てアレスは思わず吹き出し、カーラは盛大に溜息をついた。


「……あんた、あたしが誰だか分からないのかい?」


「あぁ?何を言ってやがる?バカにしてんのか、コラァ…」


「これはこれはカーラ様」


そんなやり取りを続けていると、突然男の後ろから上品な、それでいて目つきの鋭い、黒髪を後ろにあげている男が遮るように声をかけてきた。

貴族に仕える執事のような格好をしているが、その身のこなしから只者でない事は察しがつく。何よりも右頬に大きな傷があり、一目で堅気ではないことが分かる。


「突然のお越しで驚きました…若いものにはまだまだ知らない者も沢山いますので……今日はたまたまこちらに顔を出して正解でした。後ろにいるのは……まさか!?」


「やぁ、ハンスさん。久しぶり」


カーラの陰に隠れていたアレスの顔をみて、明らかにハンスは動揺した表情になった。


「これはこれは……アレ…アラン殿ですな?いやいや、これは驚きました。大至急、バルザック様に取り次ぎます」


「え?え??ハ、ハンスさん、こいつらは…」


動揺しているハンスの様子を見て今度はチンピラ風の男は慌て始めた。


「お前、私が偶然ここに通りがかって命拾いしたな。あの女性はカーラ様。黒薔薇の館のオーナーだ」


「えぇぇぇぇぇええぇぇぇえ!?」


そう言うと、慌てて土下座をする男。見ればガタガタと震えている。


「あのっ……すみませ……知らなかっ……」


「もう、いいわよ。別に。なんとも思ってないし」


その様子を見て少しうんざりした顔をする。なんで、女である自分に大の男が震えて土下座をするのか……少し納得のいかない気持ちになるカーラ。そんなカーラを見て、小さく笑うアレス。


「お前は土下座をする相手を間違えてるがな」


ハンスはそう言うと、男の方を叩く。


「へっ??それ、は、ど、ど、どういうことで……?」


ハンスはアレスの方を見て耳元で呟く。


「あちらのお若い方は…どんなことよりも優先して取り次ぐべき方だよ。ボスに知られたら命はないぞ。よく覚えておけ」




アレス達がバルザックの部屋の前に近づくと、強面の大男が三人が歩くのを遮った。


「ここ、ボ、ボスの部屋。勝手に行く。許さない」


吃りながら、大男は大きな身体で扉の前に立ち塞がった。

それを見てハンスは前に出て、大男に言葉をかけた。


「ジョナサン、いいんだ、この人達は。どんな事よりも最優先でボスに取り次いでほしい」


「でも、ハンスさん。ボス、今誰も入れるなと言っていた。入れるとオ、オレ怒られる」


「いや、大丈夫だから。私が責任を取るから開けてくれ」


そう言うなりハンスは大男を無理やり押し退けた。仕方なくジョナサンと呼ばれた大男はその場を離れる。


「ボス!入りますよ??」


そう言うと、ハンスは扉を開けた。見ると数名の美女をはべらかせた男がベットの上に腰掛けて休んでいた。


「おい、どういうつもりだ。俺は今休憩中だ。誰も入るなと…」


「ボス、大切な用事です」


ハンスがバルザックの前に立ち頭を下げる。


「なんだ、お前が来たのか、ハンス。俺の休憩を妨げると言うのはそれなりのことじゃねぇとタダじゃ済まさねぇぞ」


「たった今、カーラ殿とアラン殿がいらっしゃいました。アラン殿がすぐにでもボスと話がしたいとの事です」


その言葉を聞いて、バルザックは慌て始めた。


「なっ……若が自ら来たってことか?」


「はい」


「今、若はどちらに……」


「扉の向こうです」


そう言うとバルザックは視線を扉の奥に向ける。そこには顰め面のカーラと笑顔で手を振っているアレスがいた。


思わず、手に持っていたグラスを落とすバルザック。


「ボス、グラスが……」


「おまっ!何ですぐ言わないんだよ!!もういらっしゃるじゃないか!」


「はっ。そう申し上げた筈ですが……」


「ふざけんな!!ちょっ、お前……」


ハンスを怒鳴りつけようとして視線に気付く。


さっきまで侍っていた女達の冷たい視線。

先程から眉間に指を当て、睨んでいるカーラの視線。そして何よりさっきからずっと手を振っているいたずらっ子の様なアレスの視線。


ハンスは思う。


あ、若。楽しんでますね?と。


バルザックは盛大に一呼吸つくと、一気に指示を出し始めた。


「フィーーーーっ。まぁいい。おい、女ども!お前らはとっとと出て行け。おい、外の木偶の坊!お前も絶対入るな!今度ここに入ろうとする奴は殺しても構わん!あと…ハンスはそのお方…ではなく、その男と女を隣の部屋に案内しておけ!」


「はっ!お任せください!!」


バルザックはハンスを見る。

澄ました顔で、ほくそ笑んでやがる。てめぇ、後で絶対ぶっ飛ばす、と。




女達を退けて、アレス達は別の部屋に入る。扉の前には先ほどのジョナサンという大男が立ち塞がる。


四人だけになり、アレスが椅子に腰掛けると、バルザック、ハンスの二人は土下座をして頭を下げた。


「まさか若のお越しとは思いませんでした…あのような醜態を見せてしまい申し訳ありません…」


バルザックは元々傭兵だったこともあり、身体が大きく、顔つきも非常に精悍な男だ。このスラムの王としての風格も漂っている。そんな泣く子も黙るような男が、一人の少年を目の前にして、小さく縮こまっていた。


「気にしなくていいよ。突然押しかけたのは僕の方だし。ちょっとからかったのも悪かったし。頭をあげてくれないかな…」


「はっ…ありがとうございます……」


そう言うとバルザックとハンスはゆっくりと顔をあげた。

「若……心臓に悪いのでこの様な事はやめていただけるとありがたいのですが」


「えー、面白いじゃん。ハンスとバルザックの二人のやりとりは傑作だったよー。シグルドなんかにも見せたいぐらい」


「いや、本当にやめて下さい……」


そういうと、ゴホンと後ろからハンスが咳払いをした。そして言葉を続ける。


「ところで若。何か御用があるそうですが…いかがされましたか?」


「あぁ、ごめんよ。ちょっと色々と聞きたい事があってね。そういえば、賭博場も盛況みたいだね?貴族や豪商といった連中に情報を流したのは正解だったでしょ??」


「はい。若のおっしゃる通り、貴族や豪商達が多額の賭け金を落としてくれます。まさかここまで儲かるとは……思いませんでした」


「ちょうど剣闘士の反乱で闘技場が閉まったからね。いい頃合いだったと思うよ。人間が生まれてから、賭け事は常にあったといわれてる。つまり、誰しも博打好きなのさ。特に今貴族は刺激が少ないから……まぁ、この味を知ったらもう離さないだろうね。」


そうやってアレスは笑った。


「そして僕が知りたいのはその貴族の様子なんだ。賭け事に誘い込んだのはその情報を得るための伏線さ。これから皇宮という伏魔殿でいろいろと駆け引きをする上で彼らの情報が欲しいんだ。特に…皇族と大公家、公爵家等の動きをね」


それを聞いたバルザックがガバッと顔を上げ満面の笑みを見せた。


「いよいよ若が本気で動きますか。こりゃあ面白いことになってきた。おいハンス!!情報をまとめた書面を持ってこい!!」


「はっ。」


ハンスはそう言って恭しく下がっていった。そして一枚の紙面を持ってきた。

アレスはそれを受け取ると、そこに書いてある事を眺めていく。それに合わせてバルザックは説明をしていった。


「皇族の方は相変わらずです。特に第二皇子は乱行が目立ちます。いたるところで恨みをかっているようです。第一皇子は戦上手ですが政となるとからっきしだめです。また性格も粗暴と来ています。こちらも近々何か問題が起きるでしょう。第三皇子は病弱にして気が弱く、未だ幼い。今、皇族で注目すべきは…第四皇女のコーネリア姫でしょうか?」


「第四皇女?これまたずいぶん変わったところを出してきたね」


「第一皇女は華美、贅沢、放蕩癖が治らず、これまた評判はよくありません。第二皇女は…清廉潔白ですが戦好きと言う変わった性格です。また、性格も苛烈と聞きます。第三皇女はあまり影が薄く目立ちませんが、外戚のヘリオン公爵家の影響が大きく、何処にでも流れる恐れがあります。となるとやはり第四皇女でしょう」


そういうとバルザックは一息呼吸を入れて話を続ける。


「第四皇女は母親の身分が低いためか、非常に控えめな性格だと聞き及んでいます。しかし、その美しさはあまり表に現れないにもかかわらず知られています」


「おかしな話だね?なぜ、姿を見せないのに美しいなんて分かるんだい?」


「それは……あの方はここ西地区に現れるからです」


バルザックは立ち上がって説明をする。


「不思議な皇族の方でして……私財を投じて西地区の開発をしてくださいます。特に孤児院や病院の設立に力を入れてくださっており……炊き出しなどでは自ら行うほどです。その姿を見たもの達は、あの方は「女神」である、と慕われております。かく言う私も拝見しまして……その美しさに衝撃を受けました」


熱く語るバルザックをアレスは面白そうに眺めている。


「宮廷サロンでその姿が見えない事と外戚などの『後ろ盾』がないことから、貴族からはあまり注目されておりません。もし、一度でも宴の席に現れたら、おそらく物見高い貴族達の噂に上がるでしょうが……それもありません。ですが……だからこそ、若が注目するに値する人物だと思います」


「珍しいね。バルザックが他の人を褒めるなんて」


「今の西地区開発にとってはなくてはならない人物ですし……私もあの方に心を奪われたのかもしれません。ま、そういうこともあり、どうしてもアレス様に支えていただきたいと…多少の私の私情もありますかな?まあ、後で資料をご確認ください。それと…」


「それと?」


「はい。一つ気になることがありまして」


そういうとバルザックは近くの机から、ある袋を取り出した。袋の中身は粉が入っている。アレスはそれをひと舐めすると……厳しい顔を見せた。


「これは…薬だね」


「はい。これを吸うと、痛覚、感覚などが麻痺をします。また自我も失う危険性があります」


バルザックは話を続ける。


「若が仰っていたように、帝都でのこのような薬の使用・売買を禁止しました。しかし…どうやらトルキアあたりから流れてくるようでして…」


「トルキアから…少し気になるね。調べてもらってもいいかな?」


「はっ!かしこまりました」


そういうとバルザックはアレスに再び頭を下げた。


「臣、バルザック。アレス様に忠誠を誓いし頃よりこの時を待ち望んでおりました。私の財、私の命、私のすべてはアレス様のものです。これからも存分にお使いください。」


「そうだね。そうさせてもらうよ」


そういうとアレスはにっこり笑って付け加えた。


「でもその代り、僕に命を預けたんだから大切に使うことが条件なのはわかっているよね?それができないと僕の臣下にはなれないよ?」


バルザックも笑う。


「当然でございます。私の夢はアレス様の行く末を見ることです。それまでは死ねませぬ」





一部始終を見ながらカーラは思う。裏社会の王といわれるバルザックが。誰にも従うことなく己が実力のみでこれまでの人生を生きてきた男が。まるで飼い犬のように忠誠を誓う。いったいアレスという人物の器はどれほど大きいのだろうか。


「ま、私もその器に魅了された一人だけどね。バルザックじゃないけど、わたしもこの方の行く末を見るまでは…死ねないよねぇ。」


そうつぶやくと、カーラは眩しそうにアレスのほうを眺めるのであった。


色々とお声かけいただきありがとうございました。


ここ数日考えたのですが、続けてみようか?と思うようになりました。


ただ、モチベーションが低いこともあり、しばらくはお休みをいただき11月よりまた一ヶ月ほどスタートしようと思っております。


詳しくは活動報告にて。


色々とコメントを下さった方々、本当にありがとうございました。

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