ゴブリン討伐
暖かいコメントありがとうございました。
とりあえず、今週まではこのまま続けさせていただきます。
あとは……ちょっと考えさせてください。
アレスはセインの背に跨り、暗闇を駆け抜けていた。向かうはゴブリンの巣。供はゼッカ一人。
「まぁ、今回は大した数でもないし、僕一人で充分だよ。皆も疲れているしねー」
「あの数のゴブリンを大した事ないと言えるのは……まぁ、数少ないでしょうね」
「……嫌味を言うぐらいなら、別にゼッカも来なくても良いんだけどね……」
「別に主の心配をしてるわけではありませぬ。ただ、側にあるのが我らの務めなので」
「……少しは心配をしてくれても良いけどねー」
「龍を討てる方がゴブリンほどでなんの心配をするのですか?」
「……まぁ、そうかもねー」
そんな軽口を言い合いながら風の如く、ゴブリンの巣に到着する。
「こりゃまぁ、随分と数がいそうだなぁ」
「それだけこの地は魔物を放置していると言う事でしょう」
「さっきの村もそうやって増えた魔物に潰されたんだろうな……」
そう言いながら、アレスは眉間にしわを寄せた。しかしのんびりとした口調でアレスは言葉を続けた。
「さて、ではとっとと潰してこようかね?」
アレスのその言葉にセインはクツクツと笑った。
「これから戦をするに、全く緊張感のない男だの」
「戦ってほどの戦ではないしね〜。緊張してもしょうがない」
そう言うと、アレスはひらりとセインの背から降り立った。
「さて、じゃあ行ってくる。セインは悪いけど、逃げた連中を潰しておいてくれるかな?頼んだよ」
「まぁ構わんが……主ぐらいだの、麒麟の我をたかだか小鬼潰しに使う者などは」
「それだけ信頼してるってことさ。じゃあ行ってくるね」
そう言うと、胸にかけてある「武天七剣」から「神剣オルディオス」を取り出し、ゴブリンの巣に駆け出すのであった。
◆
ーーー小鬼
人型の魔物の中でも最も弱く、そして知能も低い魔物である。
しかし侮る事はできない。彼らは群れをなし、人を襲う。殺した相手や冒険者の死体から剥ぎ取った武器を手にし、武装して村々を略奪するのだ。
彼らが村を襲うにはいくつかの理由がある。一つは食料や武器などを奪うこと。二つ目は魔物としての快楽的殺人。そして三つ目は女性を攫う事。彼らは人の女性を攫い、子袋とする。即ち、犯して子を産ませることだ。
もちろん彼らだけでの生殖も可能である。しかし、人や亜人と交わる事でより強いゴブリンが生まれるのである。
ゴブリンの襲来は、それほど珍しいほどのものではない。群れといっても10〜20ほどの群れが多く、その程度ならば村人だけでも対処はできる。問題なのはここに彼らの上位種がおり、それ以上のゴブリンを従えている場合である。
小鬼騎士、小鬼隊長といった上位種が群れを統率している際は、注意が必要だ。彼らは50程度の群れを従えている。そして小鬼君主に至っては100以上の数を従えており、その領地の軍が動かないと対処がつかない。最も最悪と言われるのが記録は少ないが、小鬼王だ。彼らは数百単位の群れを統率し、知能も優れている。そのため熟練の騎士団が向かわないといけないと言われる。
単体では大した事がない魔物。しかし、数がいればかなりの脅威となる。それがゴブリンなのだ。
◆
ゴブリンは巣を作り、そこを拠点として近隣の村々を襲う。完全に討伐するには巣を破壊し、その中央部にいるリーダーを殺さなければならない。
「しかし……ここは随分数があるなぁ…」
アレスが向かったのは、ゴブリンの巣が一望できる岩の頂上であった。そこから巣を覗くと、そこにはゴブリンが数百匹はいる様子が見える。
「こりゃ、ゴブリンロード……下手したらゴブリンキングが生まれた可能性が高いね……」
「ここまで多いとは思いませんでした。シグルド殿達を呼びますか?」
「いや、彼らも疲れているし、僕一人で充分でしょ。魔法で一気に潰しにかかるよ。巻き込むと困るような人もいないしね」
そう言うとアレスは静かに魔法の詠唱を初めた。それを見てゼッカも言葉を発する事はなく黙って見守る。
魔術師が魔法を放つ際、多くの者が『詠唱』を行う。これはより魔法をコントロールしたいがためだ。しかし、その際、相手に隙を見せる事となり、それが戦場では命取りになる場合もある。そのためアレスは普段魔法を使う際は無詠唱で行う。アレスの魔力は想像がつかないまでに高いため、それを可能にしている。そんな彼が詠唱を行うと言うことは、とてつもない威力の魔法を行うということだ。
詠唱を終えるとアレスはキッとゴブリンの巣の方を睨む。そして、最後の言葉を告げた。
「滅ぼしつくせ!『メテオストライク』!!」
そう言うや否や、空から大人ほどの岩が雨霰の如く降り注ぎ、無数にいるゴブリンに降り注ぐ。
突然の岩の襲来にゴブリンの巣は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していった。しかし、容赦無く岩はゴブリンの頭上に降り注いでいった。
岩に頭を潰される者。逃げ惑う仲間に踏み潰されるもの……その場にいたほとんどのゴブリンがそこで命を散らしていった。
岩が降り止んだのを見て、アレスはゆっくりと息を吐いた。
「久々に大きな魔法を行ったよ……だいぶコントロールもできるようになったみたいだ」
「恐ろしい魔法ですね……これがあれば戦でも兵は必要ないのでは?」
「いや、細かいコントロールはできないし、周りを全て破壊し尽くしてしまうし……仮に戦の場合、周りにも被害を及ぼすから……この魔法は使えないね」
そう言うと、アレスは岩で埋め尽くされているゴブリンの巣の一部に目を向ける。見ると1匹のゴブリンが岩の隙間から這い出しているところだった。
「どうやら生きてる奴がいるみたいだね。おそらく仲間を盾に生き延びたんだろう。奴がこの巣のリーダーかな?」
そう言うと、ゆっくりとした足取りでアレスはその方向へ向かうのであった。
◆
「キシャァァァ」
息も絶え絶えに這い出してきたゴブリンの前に立ち、アレスは呟く。
「驚いた。ゴブリンロードがゴブリンキングに変化しようとしているじゃないか」
這い出してきたゴブリンの様子を見ると、他のゴブリンに比べ身体が大きい。それだけでなく、魔力がゴブリンロード以上であった。
「キサマ!イッタイナニヲ!!」
ゴブリンキングは息も絶え絶えにアレスに叫んだ。ゴブリンロード以上は知能も発達するため、言葉を使う事が可能なのだ。
「悪いけど、これ以上大きくなると村から街を襲うようになるからね〜。そうなる前にここで潰させてもらうよ」
文献を紐解くと、ゴブリンキングやオークキングといった魔獣が魔物を率いて、村から街、街から都市を襲う事で『国』を作った例もあるらしい。
アレスはそう言うと這いつくばっているゴブリンキングの頭に剣を突き立てた。
「ハギャッ!?」
そう言うとゴブリンキングはビクリと痙攣した後、動かなくなり絶命する。
「ゴブリンキングが生まれるほど、世が乱れ初めている、と言うことか……これから魔族の動きも活発になるかもしれないな……」
ゴブリンキングの亡骸を眺めながら、アレスはそう呟くのであった。




