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英雄の中の英雄の物語 〜アレスティア建国記〜  作者: 勘八
序章 〜アレス・シュバルツァーという男〜
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エラン 昔語り

私がアレス様に会ったのは今から数年前の話だ。


私はロマリアの西、カラム村の孤児だった。


カラム村には教会があり、そこで、私を含めて5人の孤児と養育者の神父様の6人で暮らしていた。

神父さまは優しく、そのおかげでつつましいながらも安全で平穏な暮らしをすることができた。


しかし、ある日神父様がなくなってから、その暮らしは一変する。

村の人たちは、教会の財を奪い、僕らを追放したのだ。

僕らは生き残るためにシャーオッドの森に逃げ込み、そこから自給自足の生活が始まった。


誰も助けてはくれなかった。

義弟や義妹たちは幼く、そのため私がなんとかするしかなかった。獣を取り、植物を集め、水をくみ…毎日必死になって生活した。


そのうち義妹のリザや義弟のトールが手伝ってくれるようになった。

多少余裕が出た私は、採った獲物や薬草などを村や町に出て売るようになった。


ちょうど領都ロマリアでは、青空市場が開かれるようになり、誰でも商いが簡単に行えるようになった。私はこれをチャンスとみたのだ。


皆が欲しがるようなもの、薬草や美容にいい食物、毛皮などを選んで販売し、それなりの稼ぎを出すことに成功する。

そして私はその金銭を使って、商人ギルドに登録し、さらに商売がしやすいように様々な人たちと面識を増やすようにした。


商人ギルドを通すと、青空市場だけでなく通常の店舗を持つ事が可能である。また、商人ギルドの許可状は個人及び店舗に付属され、村などのしがらみから抜け出せる事ができる。

またここで得た商人達との人脈は、販路を拡大する上でも必ず必要になるだろう。


いずれも自立するには必要不可欠と思われるものだ。ゆくゆくは自分達の店を持ち、安定した生活を送るため……そのために必要なものをしっかりと集めていった。


初めの頃はまだ子供の私を見て、多くの人が馬鹿にしていた。しかし幼いころから私たちは神父様に沢山の知識を与えてもらっていたこともあり、読むこと、書くこと、計算することができた私を見て、徐々に周りの大人も認めてくれるようになった。


その後も順調に売り上げを伸ばし、私達の店はロマリアでもそれなりに名の知れた店舗になった。

青空市場だけでなく、よい物件があるなら購入し、店を持つ……その余裕がもてるようになった。


しかし私たちが順調に商いをすることに面白くない顔をするのもたちもいた。カラム村の村長たちだ。


彼らは私たちがカラム村の人間であることを主張し、私たちの店を奪おうと色々と画策していた。

ありとあらゆる嫌がらせをして、私達が店舗を手離すように仕向けてきた。


特に村長の息子が酷かった。彼は義妹のリザに懸想しており、事あるごとにちょっかいをかけていた。村の荒くれ者を雇って、襲い掛かってきたこともある。

ロマリアに店を出した日も、わざわざ追いかけてきて荒らしたり、因縁をつけたりするので困っていた。


しかし、この彼らの嫌がらせが、私にとって大きな出会いを引き合わせてくれることになる。



青空市場で店をだしていたある日。


「この、ポルックの薬草はいくらだい?」


一人の少年が声を掛けてきた。


「銅貨2枚になります」


「安いね。どのお店よりも明らかに安い設定だよ。そして状態もいい。繁盛するわけだ。」


そういうと彼はいくつかの薬草を選んで私に渡した。


「これだけ欲しいんだけどいいかな?」


「全部合わせて銀貨3枚と銅貨2枚になります」


「ありがとう」


そういって彼は私に金銭を渡した。その時だった。


「兄さん、またボルボの連中が来たわ!!」


義妹(いもうと)のリザが駆け込んできたのだ。


「今、こっちに戻って来る途中、見かけて……また悪そうな人達を引き連れてるわ……」


「また来たか…本当に嫌がらせが好きな連中だ」


私は思わず眉間に皺を寄せた。そしてたった今、購入してくださったお客様に声をかける。


「お客様……申し訳有りませんが急いでお店を出ていただけませんか?これから不快な事が起きますので……」


そうこうしてるうちに、ボルボが大声を出しながらやってきた。


「おい、エラン!!いい加減この店をよこせ!これは次期村長の俺のものだ!」


そういうなり、村長の息子ボルボが乗り込んできた。


「あと、今日の利益もよこせ。お前はカラム村の人間なんだから、お前のものはこの次期村長の俺のものだ!!」


どんな理屈だ。反吐がでそうだ。

神父様がいなくなり、途方に暮れた私たちを村はどうした?財を奪い、村から追い出したではないか。


しかしここで予想もしていなかった出来事が起こる。

私がそれに対して反論を言いかけた時、隣に立っていたお客様が突然間に入ってきたのだ。


「あー…よくわからないけど取りあえず大きな声で怒鳴るのはやめようか。周りのお客もびっくりしてるよ」


そう言って彼はボルボに話しかける。


「いいかい?事情はよくわからないけど、青空市場ではどんな人間でも商売をする事ができる。それはここの明確なルールだ。それにこの店の前に貼ってある印を見たかい?これは商人ギルドの印だ。ってことは、村ではなく個人が認められて商いをしているはずなんだ。君の言い分は間違っているよ」


「あぁ?お前は関係ないだろ、ひっこんでろ!」


正統な説明に苛ついたのか、隣の荒くれ者が彼の手をつかんだその瞬間。


「いてぇぇぇえ」


悲鳴をあげだした。彼は一瞬にして荒くれ者の手首をひねり上げたのだ。


「五月蠅いから黙りなよ」


そういって膝をついてもがいている男の頭を蹴り飛ばす。男はピクリともしなくなった。

その後、彼は何事もなかったようにボルボの方に顔を向ける。

ボルボがビクッとしたのが遠目からでもわかった。


「それにね、この青空広場でこんなに大きな声で騒がれるのも迷惑なんだ。静かにしてもらえないかな?」


顔は笑顔だけど、その姿には凄みがあった。


私はこの商いをするようになって多くの人を目にしてきたつもりだが…まさか自分と同い年ぐらいの人間にこれほど戦慄するとは思わなかった。


当然、ボルボは青い顔をして逃げ出していった。倒れていた仲間は他のもの達が担いでいった。


立ち去ろうとするお客様に私は慌てて声をかけた。


「どうもありがとうございました……」


「あ〜、いやお礼なんて言わなくていいよ。迷惑だったし。こっちの責任でもあるから。」


「こっちの責任?」


「あー、こちらのこと。じゃあお礼の代わりにお願いがあるんだけど…」


そういうと少し照れながら彼は言った。


「これからもこの店に来たいと思うんだけど、いろいろ教えてもらっていいかな?薬草のこととか、商売のこととか……見たこともない物がたくさんあるんだよね、このお店」


「勿論。全然かまいません。こちらこそよろしくお願い致します」




お客様との出会いの後、様々なことがたくさん起こった。


まず、カラム村が監査の対象になり、今までの悪事が公になったこと。村長以下、ボルボ、村の幹部すべてが捕まったそうだ。カラム村はおそらく村として機能しなくなることだろう。我々を虐げていた者達は一同に離散していった。


また商人ギルドからロマリアにある学府について話を聞かされた。どうやら、ロマリアでは無料で学問を教えている場所があるらしく、さらなる学がよい商売につながるはずだと説得を受けたのだ。どうやら皇立学院でも教鞭を振るった教師が来るらしい。そのため私は定期的に通うこととなった。

また、リザやトールを始め、義弟や義妹達もそこに通う事となった。


最後に。

その少年…アレス様はその後も2日か3日に1回顔を出していた。そして長く私と話し込んで帰って行く。

あの時は私は、同年代の友人ができたと喜んでいたものだ。私にとっても彼の話すことは新鮮であり、時間を忘れて話し込んでしまう。私にとって初めての同世代の友人。どうやら彼にとってもそうだったらしい。大人の中でしか生きてこれなかった者同士。分かりあうことができたのだと思う。

そして私が彼の正体、つまりシュバルツァー家の公子であると気づくまでには多少の時間がかかったのであった。



エラン・シャーオッド卿


英雄皇アレスの懐刀として名高い彼は元は孤児だったと言われる。


彼の作った店はその後も繁盛をつづけ、後に「シャーオッド商会」として大陸における財界の一大勢力を築く。


エラン本人はその後、義弟トールに店を任せた後、内政官として出仕し、シオンやジョルジュの補佐として活躍した。

彼の一番の功績として挙げられるのは、アレスティアにおける工業発展の礎を築き、さらなる繁栄をもたらせたことであろう。ポンプ式の井戸や織物機などは彼の発案で作られ普及していった。生活を劇的に向上させ、国力を上げた功績は非常に評価されており、彼もまた


「アレスティアの七賢臣」


の一人に数えられている。


彼の凄いところは内政面だけだはなく、軍事においても才能を発揮したところである。シオンより、見出されたその才覚は後々花開き、『六天将』に次ぐ、「アレスティア十二勇将』の一人に数えられるようになる。



しかし、ここからは本人の言。


「私は多くの仕事を確かにしてきた。私のことを色々と言ってくれていることも知っている。でも私が誇りとしているのはアレス様の友人であり、いつまでもその関係を続けたということだ」


そう彼にとって、功名を立てることよりも。内政官として歴史に名を残すことよりも。


『アレスの友人』


この事実が一番の誇りであったと言われる。

いつか、エランの話を別で書こうと思っております

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