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龍の爪痕

今年度はどんどん投稿します!とりあえず金曜更新できるよう頑張ります!

アレスがドルマディアを攻めていた一方。


シグルドとダリウスの2人はそれぞれ第二軍、三軍を率いてバイゼルド方面の攻略に向かっていた。


東大陸の東方全土に広がっていたバイゼルド公国。

その北部をシグルドが。そして南部をダリウスが侵攻するという計画。


そして全ての国を解放した後、バイゼルド公都ガリアンで合流という戦略となっていた。



元々アルカディア貴族や皇族が中央大陸から逃れ、各地で王を自称したことから始まったとされる東大陸の小国群。

彼らは無人の荒野であったこの地を開拓し、それぞれが繁栄の礎を築いてきた。



バイゼルドの軍門に降った国は8カ国ほどに上る。そのうちの北部4ヶ国の解放をシグルドが、そして残りの南部4ヶ国をダリウスが担当する形となった。


彼らは雷鳴の如き速さで進軍し、次々にその都を落とし、解放していったのだった。




東大陸北方にイストレア王国と同じ大きさの国が存在した。名をリーヴェ王国と言う。バイゼルドとは隣接しており建国以来の盟友である。この国は高潔な騎士たちその国を守る事から、リーヴェ騎士王国とも呼ばれていた。


だが、ザッカードがバイゼルド王となった際に一番最初に牙を剥いたのはこのリーヴェ王国であった。


彼が王に即位した際に、その正統性を認めず弾劾し続けた。その事への怨恨である。


リーヴェ王国はバイゼルドと比べると国力が僅かに劣るとはいえ、この東大陸では彼の国と双璧を成すほどの尚武の国である。いくらバイゼルドが強国とはいえ、自慢の騎士団がそう簡単に敗れるはずがない……リーヴェ王国の人間は皆同じ事を思っていた。


騎士王サイモンは非常に優秀でありその精強な騎士団がザッカードの狂行を止めてくれるであろう……リーヴェ国民も、そしてザッカードが王位を簒奪したバイゼルド国民も……さらには近隣諸国の者たちも……全ての人々がそう認識し、そして願っていた。


だが、結果は予想と反し、人びたの願いを打ち砕くものとなる。


侵攻したバイゼルド公国の力は圧倒的であった。


彼らの攻め方はただ一つ。


ありとあらゆる攻撃を真正面から受け止め、そしてそれを食い破る……現バイゼルドの戦方法とも言える……


そう、それは戦術とは程遠い



『力押し』



だが、ザッカードに率いられた軍勢は最早、人ではなく魔獣の様な獰猛さであった。


バイゼルド軍は相対したリーヴェ王国の騎士団をわずか一戦で壊滅状態にしていく。


当初は騎士王サイモンの指揮の元、善戦していたリーヴェ王国。


「奴らを人と思うなっ!獣と思え!!」


そう伝令し、野獣を狩るように次々と戦術を変えていった。


当初はその戦術に嵌り、劣勢になったバイゼルド。リーヴェ王国の軍勢はその勝利を確信していた。


しかしザッカード自らが突撃した事で戦況は大きく変わる。


蟻を踏み潰すように騎士たちを殺していくザッカード。彼の登場に勢い付き、そして狂乱していくバイゼルド兵。


まるで野獣のように襲いかかってきたバイゼルドにリーヴェ軍が対応できる戦術などなかった。




「あいつは……化け物か?」




その場にいた全てのリーヴェ王国の騎士が……いや、バイゼルド兵も含めて全ての人間が。その人知を超えた力に恐れ慄く。


まるで無人の野を走るが如くリーヴェ兵を蹴散らすと、あっという間にザッカードは騎士王サイモンの元に到達した。


「奴が簒奪王か!我こそは騎士王国国王サイモン!いざ尋常に……」


だが、リーヴェ国王サイモンはその口上を全て言う事ができなかった。

僅か一合も合わせることもなくあっという間にザッカードは己が自慢の獲物であるハルバードにて、サイモンを斬り伏せたのである。


騎士王サイモンがザッカードに討たれたことにより、リーヴェ騎士団は崩壊状態なる。それに勢いづいたバイゼルド軍によってわずか数日でリーヴェ王国は落ちたのであった。


バイゼルド公国の属国となったリーヴェ王国。そこに待っていたのは想像を絶する圧政であった。


まず手始めとばかりに、リーヴェ国王の血族は全て虐殺された。


そして民衆においては破壊、拷問、略奪、虐殺、強姦……何でもありの世界が待っていた。

タガの外れたバイゼルド兵はリーヴェ王国内で暴れに暴れまわったのである。

あれほど高潔で平和な国が僅か数日をもって地獄と化したのであった。



そんなリーヴェ王国を任されていたのが、バイゼルドにてザッカードの直属の騎士として活躍したガストン・グリーバスである。


元は山賊の頭目としてバイゼルドを荒らし回っていた男であった。しかし偶然にも戦場でまだ公子の一人であったザッカードの武勇と残虐性を目にし、彼はその虜となった。


自分もあの様な武勇を持ちたい。そして好きなように暴れてみたい……


そんな彼がザッカードの元に走ったのは当然の成り行きだったのかもしれない。


ザッカードの元で頭角を表したガストンは数多の武功を挙げる。

彼もまた山賊の頭目になるほどの武勇を持ち、そしてザッカードに比肩するほどの残虐性を持ち合わせていた。


ザッカードもそんなガストンを気に入り重要な役目を与えていく。


そんな経緯もあり、彼は一介の山賊から、ザッカード軍の将軍の一人、そして占領地リーヴェの太守にまで上り詰めたのであった。


ザッカードが去った後も、彼の方針を引き継ぎ、リーヴェ王国の民に対し、さらなる圧政を敷いてきたのであった。




「来たか……」


敵が侵攻してくるとの情報が入り、ガストンはリーヴェ王都アルキアにて籠城を選んだ。


アルキアは城塞都市としても名高い。特に鉄壁と言われる城壁は前回のバイゼルドの侵攻でも敵の勢いを防いだ経緯をもつ。

あの時は西側の城門が猛攻を耐えきれず、そこから敵の侵入を許し落ちたが、あれから城門も改修し前回以上に頑強な要塞と化していた。


さらに……


「おい、『肉の壁』は用意できたか?」


「はっ!住民を縛り城壁の上に立たせています!」


そう、彼は『肉の壁』と称し、住民たちを縛り城壁の上に並ばせていたのである。


「我が軍は城壁前に布陣しております。例え、それが破られたとしても、この『肉の壁』が奴らの進行。遮るでしょう。その間に……」


「うむ。我らは援軍を待ち、奴らを挟めばよい……か」


そう言うとガストンはニヤリと笑う。


そんな事を腹心と話していると……


「将軍!戦況が動きました!」


と声がかかる。見れば、敵軍が動き始め自軍に襲いかかってきたのが見えた。


「強い……我が軍が相手にならん」


ガストンはそれを遠目で見ながらそう呟く。


バイゼルド軍と辺境伯軍では練度も士気も違う。その結果は歴然としていた。


「だが、あれほどの兵であってもこの城壁は崩れぬわ」


そう彼が呟いたその時だった。


空から何かが迫ってくるのが見えたのは……


「なんだ?あれは??」


ガストンは目を凝らし……そして言葉を失った。


「伝令!!西方の空より……ドラゴンが……!」


そう、それは。サラマンダーやワイバーンと言った空を飛ぶドラゴン達。


「なぜドラゴンが群れをなしてここに……?」


ドラゴンの群れは統一した動きでこのアルキアの城塞に迫る。


それは城壁の遥か上空から。弓矢で攻撃したくともできない高さから。


ガストンは己が肉眼でそのドラゴンの群れを確認する。するとドラゴン達の背中にそれぞれ兵士が跨っているのが見て取れた。


「あれも……敵軍か?」


ドラゴンは城壁の上に立たされた『肉の壁』を越え。そしてアルキアの街並みを越え……真っ直ぐにアルキアの城に迫ってきた。


「バカな……そんなバカな話があってたまるか……あれではどの様な城壁も役に立たないではないか!」


城のバルコニーにて戦況を伺っていたガストンは慌てて城の中に逃げ込んだ。その瞬間。





ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ





爆音が城内に轟き、ガストンはその爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされた。


「な……何が……?」


ガストンがその方向を見ると、サラマンダーやワイバーンとは異なるドラゴンがそこにいた。


そしてその背に跨った黒衣の騎士が一人。


「……貴様が指揮官か?」


その男はそう尋ねるとドラゴンからひらりと降りる。


ガストンは口をパクパクさせながら、声を出さずにいる。


「沈黙は肯定と受け取ろう」


そう言うとその黒衣の男は腰に佩いている剣を抜き放つ。


『龍剣ドラゴニア』


真のドワーフ、その中でも最高の腕を持つガルドールが制作した聖剣や魔剣にも劣らぬ武器。


彼はそれを手にガストンに近づいていく。


「ぬぅ…………うがあぁぁぁぁぁぁあああ!!」


その姿に半狂乱状態になり襲いかかるガストン。そんなガストンに冷酷な視線を向けつつ、黒衣の男は袈裟懸けに剣を振り下ろした。





ただ空を切る音のみが僅かに聞こえる。


それ以外は何の音も聞こえなかった。だが……







その瞬間ガストンの動きが止まった。






そして……


「グップ……な……何が……?」


ガストンの口から血が流れる。それと同時にガストンの胴はその鎧ごと袈裟懸けに斜めにずれ始める。


「ふぇっ?俺の身体……切れてる?」


そう呟くと半分に分かれたガストンは盛大な音を立ててその場から崩れ落ちた。


そんな様子に再び冷たい視線を向けながら……



その黒衣の男……辺境伯軍第二軍の軍団長であるシグルドは


「この剣で斬られた事を光栄に思え、下衆」



と呟くのであった。





ガストンが討たれた事でリーヴェはあっけなく陥落する。


シグルドは残りの敗残兵を捕虜にすると、牢に繋がれていた旧リーヴェ王国の家臣たちを救出、体調が戻り次第政務に取り掛かれるよう手筈をうった。


そして自身は第二軍と共にバイゼルド本国を目指す。


「急がないとダリウスのやつが先についてしまう。そうなると何を言われるか分からないからな」


そう嘯きながらシグルドは再び進撃を開始するのであった。




定期的に更新していきます!


合わせて宣伝です。


新作である『魔王様の作り方』

https://ncode.syosetu.com/n0931hf/



こちらも更新しました。こちらの方はなんとか2日に一度更新しています!

現在結構苦戦していますので、どうぞよろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
2025年である今年から更新再開されると聞き、楽しみにしております。更新待ってます!!!!
[良い点] 久しぶりに読み直したけどやっぱりいい作品。 主人公が力で人を従えるのではなくその有り余るカリスマ性で従えるのいいよね [一言] 作者さん、生きてますか…
[一言] もう更新ないのでしょうか?
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