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東征12 ドルマーダ

活動報告には書きましたが……仕事が……大変でした。

後はあとがきに書いています。

「こうやって見ると意外と呆気なかったな」


「親方様の魔法が大きい。あれだけ混乱していたんだ。後はつつけば崩れるものさ」


「……確かにあんな魔法、見た事がない」


血の匂いの残る殺伐とした荒野に2人の男が立っていた。


1人は異国風の姿をした男。


もう1人は白い獅子の姿をもつ、亜人の戦士。


アルカディア軍軍団長のシュウと真獣人の長、レグルスである。


アレスの魔法を受けて大混乱に陥った魔獣達に対して、シュウとレグルスはそれぞれ軍を率いて突っ込んでいったのである。


混乱している事もあり、一方的な虐殺と化した戦場。


2人に率いられた軍勢は、徹底的に魔獣の群れを殲滅していったのだった。


しかし……


とレグルスちらりとシュウの方を横目でながめ、1人思う。


彼……いやその主人であるアレスの軍勢の強さは異常すぎる……


あの黒い重戦車のような騎馬隊。赤い軽騎兵。青いローブを纏った魔法兵。そして何より……


(あの腕に白いブレスレットをつけていた歩兵の強さは何なんだ?)


彼らにはすでに主人が魔法を使いすぎて倒れたことは知れ渡っている。


その瞬間。彼らの周りの空気の温度が下がったような感覚になった。


敬愛する主人が倒れた。例えそれが疲労であってもである。


アレス直属の軍勢、『破軍』。彼らが共通して認識したこと。


それは



主人の『信頼』


そして


敵に対しての『憎悪』



アレスは例え自分がいなくても彼らが何とかしてくれると思って、限界まで魔法を使ったのであろう。


あぁ、その信頼に応えずしてなぜ『破軍』と言えようか。



そしてもう一つは……主人にここまでさせた事に対しての憎しみ。


1匹たりとも逃さない。


その気概が『破軍』に属する全ての者にに伝染していた。


彼らを代理で指揮していたシュウもしかり。


全てを任せられた信頼。そして、破軍と同様……いや、それ以上の憎しみが彼にはあった。


遠く離れた地から旅立ち、祖の代からずっと敬愛し、そしてこの異国の地で見つけた主人。その主人がボロボロになって倒れた姿を目の当たりにし、彼の心は燃えたぎっていたのである。


将であるシュウと、そして辺境伯軍最強と名高い『破軍』のその姿は当然末端の兵士まで感染る。いや、全ての兵においてもアレスを敬愛する心は彼らに劣らない。


天にも届きそうな士気をもち、辺境伯軍は徹底的に魔獣の群を壊滅させたのであった。


(この兵たちは強い……彼らをここまでさせるあのアレスという男は一体……)


レグルスは目の前に広がる屍山血河の大地を眺めながら……同志を助けてくれた恩人に想いを馳せるのであった。





戦が終わり、数刻経った後。アレスは目を覚ます。


目を覚ますや否や、休息するよう懇願する部下たちの意見を退け、今は時が惜しいとすぐに軍議を開いた。


シュウやゼッカといった部下たちをはじめ、客将扱いとなっているレグルスも同様に参列している。


アレスの指示は単純明快である。


「今回の戦でドルマディアの兵力はほぼ壊滅状態だ。この機会を逃すわけにはいかない。すぐさま、奴がいるドルマディア本国へ向かう。狙うはドルマディアの首都、ドルマーダ。あの豚が逃げないよう急いで囲む」


そしてアレスは少し疲れを浮かべながらも笑いながら言った。


「この戦がドルマディアとの最後の戦にしたいと思っている。ドルマーダを囲み、あの豚を逃さないようにしなければならない。だからこそ……」


そう言って一呼吸おくとアレスは全体を見渡し口を開いた。


「全軍出撃。奴らを殲滅し、東大陸の西側に平和と安定を」





ドルマディア首都、ドルマーダ。


かつては東大陸西北部にあったサマンサ王国の首都であった。


小国が乱立する東大陸においてサマンサ王国はバイゼルドに匹敵するほどの大きさを誇っていたが……


突如現れた魔獣の群れになす術なく、一夜にして滅んだ経緯がある。


そんなサマンサ王国の首都を自らの名を冠したドルマーダと変更したドルマゲスは、ここを中心と定め、南に東にとその東大陸西部を荒らし回っていたのである。


そんな魔獣に支配された街、ドルマーダを電撃的に急襲したアレス。


だが、街に攻め込むのではなく、『破軍』中心の第一軍と第四軍で囲むようにその都を牽制している。


そしてアレス達はその後方でどのようにこの都に攻め込むのか……軍議を開いていた。


アレス以下、第四軍団長のシュウ、副軍団長であるロランや客将として招かれているレグルス、白軍の主だった者達、そして千人隊長までが集められている。


「ゼッカ殿の話では街には魔獣は少ないと言う。総攻撃をかけるべきです!」


「……しかし街には以前の住人が奴隷となっている。総攻撃をすればその巻き添えとなる可能性も……」


紛糾する議論。結論が中々定まらない。


アレスはその意見を一つ一つ聞きながら、何も喋らず沈黙を通している。


そんな時。




オォォォォォォォォォォォオオオオ



遠くの方から雄叫びのような声が聞こえた。


「なんだ?」


「何が起きた??」


騒めく諸将達。だが、アレス、シュウ、ゼッカ、そしてレグルスはその雄叫びが誰のものであるか理解していた。


アレスは近くにいたゼッカ、そしてシュウに苦笑いを見せた。


「あの豚がそろそろ限界を迎えたようだ……では屠殺しにいくか」


それはのんびりと。そして強い意志を持った一言。


アレスは諸将を見回し、最終決断を下す。


「皆の意見、ありがたく思う」


そう言うと、シュウ以下、その場にいる全てのものが口を閉ざした。


「場内にいる魔人や魔獣は少ないらしい。だが、奴隷として囚われている民は多い。そのため今回は少数精鋭で一気に勝負をつけようと思う」


そう言うとアレスは全員を見渡す。


「白軍全員で、場内にいる魔獣を掃討する。今回は『全力で』殲滅する事。そう、1匹残らずだ」


アレスは白軍の代表達を見据えてそう伝える。彼らは目を輝かせ、頷いた。


「第一軍……『破軍』のうち、赤軍、黒軍は外を回りながら遊軍として動き続けること。青軍はこの丘で全体を見渡し手薄なところがあれば魔法で援護せよ。

残りの第一軍、及び第四軍は街を囲み、逃げてきた魔獣、及び魔人を討つ。何度も言うが……1匹たりとも逃すな」


そう言うと、その場にいた全員が真剣な表情で一様に頷いた。


「豚王のところには、僕とシュウ、そしてレグルス。君にも来てもらう」


シュウは小さく笑い、レグルスもまた当然とばかりに力強く頷いた。


「さぁ、皆。この東大陸西部の動乱を終わらそう。歴史に名を残すんだ」


アレスの一言にその場にいた者たち全員が大声をあげて立ち上がる。


あたかも自分が物語の登場人物になったような錯覚を覚え、皆興奮を抑えられないのである。


イストレアを出て、2ヶ月ほど。


ドルマディアとの争乱はついに最終局面を迎えることとなる。

活動報告にもありましたが、仕事が忙しく大変な目に遭ってました。


さて、新作魔王様の作り方ですが、とりあえず29話まで書いてあります


https://ncode.syosetu.com/n0931hf/1/





多くの方にたくさん読んでもらうと、作者もやる気がでます。


ぜひお読みいただきたいと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] お疲れ様です。更新ありがとうございます。
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