東征 その10 天剣ジェミニ
またしても突然のゲリラ投稿!!笑
レグルスは鋭い視線でアレスを睨みつけていた。
先ほどから次々と姿を変える武具……そしてその武器の形状によって、彼の力は変わっていくらしい。
遠距離攻撃を飛ばすもの、速さや力といった能力を全体的に上げていくもの。力に特化したもの、さらに何やら不吉な予感がする形状のもの……そして……
「今度は……二刀とな?」
そんなレグルスの独り言に反応せず、アレスはその二振りの剣をマジマジと見つめる。
「ジェミニ……これを出せる様になるとはね……だいぶ以前の力が戻ってきた……という事か?それとも……」
アレスはそう呟きながら、今度はレグルスに視線を移す。
「彼がそれだけ強い……という事か……まぁ、使ってみれば分かるか」
そう言うとアレスは二振りの長剣を構えた。
「さて、どれだけこの剣の力を出せるか分からないが……やってみようかっ!!」
彼がそう言った……その瞬間だった。
レグルスの視界から。いや、その場にいたシュウの視界からもアレスは
消えた
そして、その瞬間
ゾクリ
レグルスの背筋に冷たいものが走る。
咄嗟に彼は本能に従い、身体を捻った。しかし……
「っっっつぅ!!」
レグルスの声が響く。
見れば、彼の左腕からは赤い血飛沫が舞い上がっている。
(馬鹿なっ、俺の魔眼でも追いつかないだと?)
アレスの姿は未だ見えない。しかし再び
ゾクリ
レグルスに悪寒が走る。
「くぅ!!!」
避けられない。そう悟るとレグルスは己が闘気を全て防御を力に回す。しかし……
「くぅ!!」
次
は右肩から、血飛沫が舞い上がる。
(どうなっているのだ!?なぜ、我が傷を受ける??)
アレスは未だ姿を見せない。
そして三度
ゾクリ
先程の悪寒がレグルスを襲う。その瞬間
「がぁぁぁぁぁぁあああ!!」
レグルスの咆哮の後、今度はレグルスの左の腿裏から血が吹き出した。
思わず怒声とともに膝をつくレグルス。彼の白き体毛は今や赤に染まっていた。
しかし前を見ると……
「ハァ、ハァ、ハァ」
そこには同じように膝をつき、そして荒い息を吐くアレスの姿があった。
「ジェミニを使ったけど……やはり肉体的な負担は苦しいものがあるね……」
そんな独り言を聞き流しながら、レグルスは己が疑問を問わざるを得なかった。
「……貴様……何をした…?」
「この二振りの剣……名は天剣『ジェミニ』その能力は『神速』。しかし、そのスピードから身体にかかる負担は大きくてね……なかなか辛いものがあるものだ」
そう言いながら、アレスは不敵に笑う。
「さて……どうだろう?降参してもらえると……」
「吐かせっ!!」
そう言いながらレグルスは朱に染まった身体事、アレスにぶつかっていく。
(奴の攻撃は全く見えない……だが、動けぬと言うのなら今こそ好機!)
「我が君っ!」
思わずシュウは叫び、飛び出そうとする……がアレスの表情を見て、その動きを止めた。
そう、レグルスを迎え撃つ彼の表情に……疲労はあるものの焦りの色は何もない。
そこから伺えるのはただ一つ。
余裕
レグルスの大剣がアレスを襲う。しかしアレスは膝をついたまま動かない。そして、彼は双剣を交差させ、その刃を受け止める。
「そんな細い剣で受け止められるかっ!!」
ガキン!!
金属がぶつかる音が響き渡る……そして……
「ば…馬鹿なっ!!」
驚く事に弾き飛ばされたのはレグルスの方であった。
近距離からの大剣の一撃だったはず。しかし弾き飛ばされたのは自分。
荒い息のまま、アレスは口を開く。
「そして……もう一つの能力。それがこの『鉄壁』。ありとあらゆる攻撃を跳ね返す、防御の剣だ」
そう言うアレスは不敵な笑みを見せている。しかし、ジェミニを使用した疲労からその顔色は悪い。
「やはりジェミニを使うと体力と共に必要以上に魔力を取られる……『ポルックス』を使えばいくらでも攻撃を防げるが……魔力が減ってジリ貧だ。『そろそろ』だと思うし勝負を決めるか」
そう言うと再びアレスはレグルスの視界から……
消えた
その瞬間。
レグルスの右足から血が吹き出す。
「ぐぅぅぅぅう!!!」
たまらずレグルスは両膝をついた。
「ぐぁっ!!はぁ、はぁ、はぁ」
それと同時にアレスもまた両膝をつき、荒い息をあげる。
「やはり『カストール』の負担は大きい……。だが…勝負あり、かな?」
そう言うとアレスはレグルスの方ではなく、遠くの方を眺める。
「そして……君にとっては『待望』の援軍が来たようだよ」
両手両足に深傷を負い、動けなくなっているレグルスはそれでも首を後ろに向け、アレスの視線の先に目を向ける。そして、そこには……
「なぜお前達がここにいる?」
彼の大きく見開かれた眼に映ったのは……かつての同胞であり、彼の麾下の真獣人達が、向かってくる姿であった。
年末の仕事の激務……
小説どころではありませんでした。更新が遅れて申し訳ありません。
とりあえず……東征の中でも、この『豚王』の話は終わらせたい……と思っております。
それにしても……『東征』の話、どうしても長くなってしまう……まだ、半分きてないくらいですからねぇ……
皆さんが飽きてしまわないか、ちょっと心配……




